Microsoftは6月2日、台湾で開催中のCOMPUTEX TAIPEI 2011の会場で、次期OS「Windows 8」のデモンストレーションを行った。デモでは、Windows 8で採用される新しいユーザーインタフェース(UI)が披露されるとともに、x86に加えてARMベースのプロセッサでも動作するプロトタイプが紹介された。

Windows 8のデモンストレーションを行う米MicrosoftのMike Angiulo氏(corporate vice president of Windows Planning, Hardware and PC Ecosystem)

Windows 8は、現行の最新OSであるWindows 7の後継として開発されているOSで、現時点ではコードネームという扱いになっており、今後順調に開発が進めば、来年にも登場することが見込まれている。

今回COMPUTEX会場で披露された新UIは、従来のUIを大幅に刷新。特にタブレット端末を含むタッチ操作が可能な端末に最適化されたUIとなっているのが特徴だ。デモでは、画面に触れて指を上に滑らすと敷き詰められたタイルのようにアプリケーションアイコンが並ぶ「タイルベースのスタート画面」が滑らかに現れた。これは、従来のWindowsにあったスタートメニューを置き換え、全画面でアプリケーションを選択する形で、ユーザーごとにカスタマイズが可能なスタート画面になるそうだ。

Windows 8で採用されるタイルベースのスタート画面

これは、同社の携帯電話用OSである「Windows Phone 7」にも採用されているUIで、指で触れて選択するのが容易な形のメニューとなっており、左右に指を滑らすと滑らかにタイルが流れる。もちろん、キーボードやマウスでも同様に操作できるようになっている。このタイルは「ライブタイル」と呼ばれ、新着メールの到着時やRSSの更新時などのように、アプリケーション側の通知が表示されるようになっており、起動しなくても情報を確認することができる。デモを行ったWindows Planning, Hardware, and PC EcosystemのCorporate Vice PresidentであるMike Angiulo氏は、PCのようなデバイスに求められる「トレンドが変わってきている」と指摘。そのため、タッチ操作に最適化されたUIを開発したと話す。

従来のWindowsアプリケーションに加え、アプリケーションプラットフォームとしてWeb技術のHTML5、JavaScript、CSSを使ったWebアプリ「Windows Apps」も利用可能になっており、Webブラウザとしては現在プレビュー版が公開されているInternet Explorer 10を搭載する。IE10も、画面上端にタッチして指をしたにスライドさせるとタブの切り替えができるなど、タッチ操作に最適化されている。ブラウザ上でのソフトウェアキーボード入力のデモも行われたが、通常のQWERTYキーボードの形に加え、タブレット利用時に親指だけでも入力しやすいように2分割して左右に配置する、というスタイルも利用可能のようだ。ハードウェアアクセラレーター機能も採用されており、高速な動作も実現している。

従来のWindows画面も1タッチで表示され、従来のWindowsのスタートボタンを押すとタイル画面に切り替わる。

現在Windows 7で動作するソフトウェアや周辺機器に対する互換性は確保され、これまでの資産はそのまま活用できるが、タッチ操作に適した新しいUIを採用したことで、マウスやキーボードでの操作性も向上したという。Microsoftでは、さらに開発者向けに積極的な支援を行うことで、Windows 8で動作するHTML5/JavaScriptによるWindows 8アプリの開発を推進したい考え。Windows 8アプリでは、フルスクリーンのタッチ操作に最適化した、新しいWindows 8のUIに簡単に統合できるという。

全画面のアプリを起動した状態では、画面の右端にタッチして左にスライドさせるとWindowsコントローラーが表示され、スタート画面に1タッチで戻れるので、そこから新たにアプリを起動するという動作を紹介。逆に画面左端にタッチして右にスライドさせると、起動中のアプリが次々と画面に現れ、より素早くアプリを切り替えられるようになっていた。

画面下にタッチして上にスライドさせるとアプリのコントローラーが表示されるようになっており、全画面状態でも快適に操作できるようなUIの工夫が盛り込まれていた。Angiulo氏によれば、画面の左右の端はWindowsが、上下の端はアプリが使うことになる、という。

また、「スナップ」と呼ばれる機能では、画面左からアプリを切り替える際に、半分だけ表示して指を離すと、画面の左端にアプリが固定され、「サイドバイサイド」の表示になる。それに合わせて、それまで使っていたアプリは自動的にサイズが変更され、最適なウィンドウサイズに自動でリサイズされる。

今回のデモでは、タブレットを含むタッチ操作可能な端末への最適化したUIを中心に紹介されたが、Angiulo氏はタッチ機能のない、通常のPCでもWindows 8はそのまま適用できると話す。どんな画面サイズであっても使えるように設計されているそうだ。マウス、キーボードでもタッチ操作と同じ操作ができるので、既存のWindows 7マシンのアップデートでも問題ないという。

Angiulo氏は、既存のPCやタブレットで実際にWindows 8を動作させ、従来のエコシステムを維持してアップデートできることを強調。しかも、タッチパネル搭載・非搭載を問わず、タッチ用UIと非タッチ用UIを区別しないで「Windowsは1つのバージョンで提供される」という。

今年1月に米国で開催された家電ショー「International CES 2011」で、新たにARMに対応したWindowsを提供することを明らかにしていたが、Angiulo氏は今回、各社のレファレンスシステムのタブレット端末によるデモも行った。

例えばQualcommはSnapdragon 1.2GHzのプロセッサを使ってWindows 8を動作させており、H.264のHDビデオの再生、720pカメラを紹介。Snapdragonに搭載されている各種センサーも利用できると紹介した。TIのOMAP 1GHzデュアルコアプロセッサ搭載タブレットではUSBメモリからのファイルのドラッグ&ドロップをデモ。

NVIDIAは、通常のノートPCデザインの端末で、タッチパネルも非搭載のマシンをデモ。クアッドコアの次世代TegraのKal-Elで動作しており、ARMがさまざまなデバイスに適用できる点を示すというデモだった。Microsoft Wordが動作しており、プリンタによる印刷のデモが行われた。また、x86版WindowsとARM版Windows上で同じアプリが動作していることを示し、クロスプラットフォームであることを強調する。

Windows 8では、従来以上にOEMベンダーなどと密接に協力して開発を進めていく考えで、一定の品質を確保し、ユーザーエクスペリエンスを向上することを狙う。BIOSの代わりにUEFIを採用し、各種センサーも統合、16:9ディスプレイをターゲットにする。

Microsoftでは、さまざまな変更が加えられるWindows 8の情報を開発者にいち早く提供するために、新たなカンファレンス「BUILD」を9月13日から16日にかけて米国カリフォルニア州アナハイムで実施することを表明。2日からサイトを開設して登録を開始した。BUILDでは、Windows 8に関する「ソフトウェア、ハードウェアなどすべての情報」が提供されることになっており、9月にはWindows 8の全容が明らかになりそうだ。