熊のキャラクター グル~ミ~などで知られるイラストレーター 森チャック氏。彼はどのようにして人気キャラクターを創造したのだろうか。ワコムの液晶ペンタブレットを駆使した創作風景の紹介に続き、グル~ミ~誕生秘話から、クリエイターとしての心得まで、森チャック氏が全てを語り尽くした。

デビュー宣言から、1年で漫画家デビュー

森チャック
1973年生まれ。大阪府出身。漫画家、商業イラストレーターとして活動後、『チャッX(チャックス)』シリーズとして、多数のキャラクターをクリエイト。自作ポストカードの路上販売から活動を開始して、大きな話題を集める。主な作品に、『いたずらぐまのグル~ミ~』、『クマキカイ』など多数。デザインしたキャラクターは、フィギュア、ぬいぐるみ、ステイショナリーなど、様々な分野に広がり、人気を集めている

――森さんはどのようにして、イラストレーターとなったのでしょうか。

森チャック「17年くらい前、ガソリンスタンドで働いていた時期に、『漫画家はこんなに儲かる!』的な特集が組まれている雑誌が職場の休憩室に置いてあって、それをたまたま読んだんです。その記事で、漫画家の古谷実さんが当時『行け! 稲中卓球部』の連載開始から約1年で数千万の収入を得ていると知りました。僕は小さいころから絵を描くことだけは得意だったので、ほぼ同年代の古谷実さんに勝手にライバル心を燃やして、その日のうちに"オレは1年以内に漫画家になる!"と周囲に公言したんです、正社員のくせに(笑)。会議や資格の勉強会も"漫画を描く"という理由で参加しないで帰ってましたね。それで数カ月後に、古谷実さんが連載していた漫画雑誌で入賞してデビューしたんです。負けず嫌いな性格なので、同じ誌面じゃないと意味なかったんですよね」

――有言実行で、順調にデビューされたのですね。

森チャック「でも、その後が大変でした。ガソリンスタンドを辞めて漫画を描いていたのですが、入賞後4作品程度が掲載されただけで、どれも読み切り。結局、そのまま連載には繋がりませんでした。その後もバイトをしながら執筆は続けていました」

『チャッX(チャックス)』シリーズ誕生の秘密を語る森チャック

――当時は、どのような仕事をなさっていたのでしょうか。

森チャック「車が好きなのでレンタカーでバイトしつつ、漫画を描いてましたね。1年やって飽きて、接客も好きだったので時計店で働きつつ執筆してました。並行して知り合いのつてでファンシーグッズのデザインなども、たまに受けていました。そうしているうちに漫画家への情熱がやや衰えはじめ、今度はイラストの仕事に興味が出てきたんです。それで、『絵を仕事に出来るなら、漫画家じゃなくてもいいや』という気持ちが強くなっていきました。時計店に務めていてもイラストは上達しないということで、その時計店が入っているショッピングモールの本屋さんで、たまたま求人情報誌を立ち読みしたんです。そしたら、その求人情報誌がイラストレーターを募集していたので、その情報誌に応募して、採用されました」

――失敗したり、流されたりしつつも、順調に絵に関連したお仕事を続けられていますね。その求人情報誌では、どのようなお仕事をしていたのでしょうか。

森チャック「そこでは、ディレクターのオーダー通りのイラストを毎日5~10カット描いていればいいという環境で、慣れてくると完全にぬるま湯でしたね。それと並行して、外注でパンフの挿絵や簡単な4コマ漫画なども描いていました」

イラストの隅のラクガキが人気キャラクターに

――その時期、森さんは現在の絵のタッチを確立されていたのでしょうか。

森チャック「この時期は、パソコンも使わないオール手描きで、オーダーに応じて色々なタッチの絵が器用に描けるようになっていました。そこで、仕上げたイラストの隅に、その時思ったことや感じたことを元にラクガキを描いていたんです。それがのちのグル~ミ~を含む僕の作品群『チャッX(チャックス)』たちです」

――そのラクガキが、どのようにして人気キャラクターになったのでしょうか。

森チャック「たまたま昼休みに友人のWebデザイナーと食事をしている時、『専門学校時代に描いた作品を、オリジナルポストカードにして路上で売ろうと思うんだけど』って言われたんです。それで、『おもしろそう、オレもやる!』ってなって、それがきっかけで週末は大阪の心斎橋商店街でストリート活動をする事になったんです。でも、僕には描きためた作品もなかったので、『いつも描いていたラクガキを、パソコンに取り込んで着色すればなんとかなるかも』と思って試しに刷ってみたら、なんとなく良い感じに出来ました。『1年やって売れなかったら辞めよう』と遊び感覚でスタートしたのですが、2~3回目ぐらいから1枚100円のポストカードが飛ぶように売れはじめ、回を重ねるごとにお客さんの数も増えていって、用意したポストカードや手作りのシールが全て売り切れるようになりました。僕の新作ポストカードを買うために、遠くから心斎橋に来てくれるお客さんも出てきてたりして、クチコミで広がり、雑誌やニュースなどでも取り上げられるようになりました」

――ストリートでの活動は、商業的には、どうだったのでしょうか。

森チャック「当初『1年で』と言っていたのに、スタートして半年後には週1回2時間だけのその活動だけで、当時の月給を超えてしまったので、務めていた求人情報誌のイラストレーターを辞めました(笑)。ストリートは本当に1年で辞めるつもりだったのですが、毎週たくさんのお客さんが僕の作品を楽しみに来てくれてたし、僕自身も凄く楽しかったので辞めることができずに、1年半やっていました。もう11年も前の話で、今でも凄く良い思い出です。それと同時に、どんどんイラストの仕事やキャラクターの商品化の話が来たり、プロダクションから契約の話(※現在は個人事務所経営)が来たりして今に至る感じです。2000年に遊びでストリート活動を始めて、2001年にはもう『BE@RBRICK』になってたから不思議ですね」

森チャックが語る「クリエイターに必要な事」とは?