HANA、今後の展望(2) - クラウド

次にクラウドへの拡大についても紹介した。

「クラウドとインメモリの相性はばっちり」というSikka氏、すでにこの分野に取り組んでおり、この日HANA向けのクラウドプラットフォーム「HANA AppCloud」のプリベータを発表した。提携各社はこの上にアプリケーションを構築できる。

HANA AppCloudの第1号の提携企業となった医薬業界向けのSaaS事業社Medidata Solutionは、ライフサイエンス企業の全システムを接続し、医師や看護婦が情報を得られる単一のプラットフォームを提供する。テラバイト級のデータがあり、膨大なプロセスを処理するが、「ここにリアルタイムの分析を加えることは大きなメリットになる」と同社。そこでHANAを利用、以前は50分かかっていたのが数秒で終わるという。

「クラウドで得られる効率性やコスト削減だけでは十分ではないと思っている」と同社。Sikka氏は、「クラウドをさらに進めるにあたって、HANAはゲームチェンジャー」と述べたうえで、「クラウドの将来はインメモリクラウド」と言い切った。

インメモリ技術のメリット

HANAは「この10年で最大の投資」とPlattner氏。ビックデータの問題に対するSAPの回答と位置づける

次に登場したのは、共同創業者で現在もSAPの方向性に強い影響力を持つPlattner氏だ。インメモリ技術はPlattner氏が数年前からSAPPHIREなどで口にしてきた技術であり、現実のものとなった今年は、いつも以上に笑顔とジョークが絶えないスピーチとなった。

Plattner氏は「HANAのFAQ」としてSAPPHIRE来場者の13の質問に答える形で、HANAとインメモリ技術とそのメリットを説明した。

HANAの拡張性については、「非常に優れている」とPlattner氏。HANAが動く最も小さいマシンは2コア×2CPUの「iMac Mini」という。中国企業が実際に「Mac mini Server」で動かしていることを明かした一方で、最大級のHANA実装例として、1000以上のコアを持ち、16TBのメモリ、64TBのSSDのシステムも紹介した。

速度などの特徴に混じって興味深いのが、やはりSAPが以前から口にしてきた「タイムレスソフトウェア(時間を越えたソフトウェア)」だ。タイムレスソフトウェアはHANA開発にあたって目指したことの1つで、「ソフトウェアの部品が比較的独立しており、他に影響を与えることなく継続的にコンポーネントを変えることができる」というアプローチとなる。HANAは1.0として登場したが、一般提供開始後は1.5や2.0のようなバージョン番号を持たず、サービスパック形式でアップグレードすることになる。「オンサイトでもクラウドでも、継続的に改善できる」とPlattner氏は述べた。

「他に影響を与えない」は、Plattner氏、Sikka氏がともに口にした言葉。自社ソフトウェアを使い続ける顧客企業を多く抱える同社が、長い付き合いと信頼関係の構築を重視していることをうかがわせた。