KDDI(au)から期待のスマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」が登場した。最大の特徴は、auの3G回線だけでなくUQコミュニケーションズのモバイルWiMAX回線が利用できるという点で、WiMAXの強力な通信により、テキストベースのWebサイトの閲覧はもちろん、YouTubeやニコニコ動画などの動画サイト、EvernoteやDropbox、SugarSyncといった話題のWebサービスを快適に閲覧することが可能だ。

国内初のWiMAX対応スマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」

WiMAX通信をおさらい

まずはWiMAXがどんな通信サービスなのか? というところを解説しておきたい。WiMAXの最大の特徴は、下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsというスピードだ。下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsのauの3G回線と比較すると、下りに関しては10倍以上、上りも10倍近い速度差がある(WiMAX、3Gともに公称速度)。

公称の通信速度だけだと、3Gの高速化規格であるHSPA+の下り最大21Mbpsに、それをデュアルチャネルにしたDC-HSDPAが同42Mbpsとなっている。ただサービスを提供するUQコミュニケーションズによれば、3Gの通信速度では誤り訂正を考慮しない通信速度を公称速度としており、誤り訂正を考慮すると35Mbps、逆にWiMAXが誤り訂正を考慮しないと48Mbpsになるそうだ。いずれにしても、あくまで公称の最大速度なので実際の通信速度はそれよりも遅くなるが、au回線の速度も遅くなるので、実測でも大体10倍近い開きが出てくることになる。

下り速度に関しては、測定時間、測定場所にも影響を受けるが、10Mbpsクラスの速度が出ることもあり、ほかの3G回線に比べると圧倒的だ。無線LANを使っている感覚で、快適な速度でインターネットが楽しめる。

一般的なスマートフォンの利用には、下り速度が高速であれば快適なことが多い。Webサイトの閲覧、YouTubeなどの動画の視聴、メールでオフィスファイルのような大容量ファイルを受信する場合でも、必要なのはほとんど下り回線だ。Twitterのような短文の受信ぐらいなら3G回線でも快適だが、通信でやり取りされる情報が大きくなるほど、高速回線になると見違えるように使いやすくなる。

快適操作でWiMAXに接続、繋がらないときは3Gに

HTC EVO WiMAXは、約4.3インチという大画面を備えており、Android 2.2(Froyo)を搭載することでWebサイトに埋め込まれたFlash動画の閲覧も快適に行える。動画視聴機会が増えると、当然高速通信が必要となるので、WiMAX通信が利用できるHTC EVO WiMAXは、こういったWebサイト閲覧にも威力を発揮する。

大画面を採用してさまざまなWebサイトや動画などを快適に閲覧できる

表面と背面。本体右側面にボリュームボタン、背面に800万画素CMOSカメラを搭載する

背面にキックスタンドを装備しており、本体が自立するので、置き時計としての利用だけでなく、動画の視聴マシンとしても最適

WiMAXを利用する場合は、設定画面にある「無線とネットワーク」から「WiMAX」をオンにするだけ。自動的にWiMAX電波が検索され、エリア内だと接続される。データ通信は3G回線に優先され、当然ながらさらに無線LANエリア内では無線LANが優先される仕組みになっている。

無線とネットワークの項目の「WiMAX」にチェックを入れる

WiMAXのオン・オフを設定できるウィジェットも搭載

WiMAXのエリアは現在拡大中とはいえ、歴史のある3G回線に比べると心もとない面もある。さらに周波数帯が2.5GHz帯を使用しているため、屋内への浸透率が弱く、エリア内でも建物内では圏外になる場合も多い。UQコミュニケーションズではリピーターや小型基地局を用意するなどの対応もしているが、今は屋外エリアの拡大を重視しているため、屋内でのWiMAX利用ができない場合があるのは確かだ。

だがそうした場合、HTC EVO WiMAXでは3G回線を利用することができる。WiMAXだけだと、圏外になったときに通信が使えなくなってしまうが、人口カバー率が100%に近く、屋内へのエリア展開も進んでいるauの3G回線ならば圏外になることは少ない。速度は遅くなるが、選択的に通信が使い分けられるのは便利な点だ。

WiMAXが圏外になった場合、自動的に3G回線に移行し、通信が再開される。無線LANから3Gエリアに移動した場合と同じような状況で、いったん通信は途切れるものの、すぐに通信は再開できる。3GエリアからWiMAXエリアに入ったときは、自動的にWiMAX回線に接続されるようだ。

Webサービス利用で実力を発揮!!

HTC EVO WiMAXを使っていて感じるのが、スマートフォンの通信速度が高速化すると、さらに使い勝手が向上するという点だ。

スマートフォンは、これまでPCで利用していたようなサービスをPCライクに利用できるというメリットがある。動画や画像をふんだんに盛り込んだWebサイト、動画配信サービスなど、従来の携帯電話では利用しづらかったサービスを快適に利用できる。

HTC EVO WiMAXは1GHzのCPUを搭載しており、通信速度だけでなく、端末本体のスペックも高い。通常の端末操作も快適に行えるが、HTC EVO WiMAXの実力を実感できるのは、Webサービスを利用している時だ。

例えばYouTubeやUstream、ニコニコ動画といった動画配信サービスはすっかり一般化したが、高画質になればなるほど、解像度が高くなればなるほど、引っ掛かりなく再生するためには高速大容量の通信回線が必要になる。EvernoteやDropbox、SugarSync、Google DocsやSkydriveなどといったファイル同期・共有サービスも、ファイルをダウンロードする必要がある場合がほとんど。高速通信が可能であれば、大容量ファイルも快適にダウンロードできる。

YouTubeを全画面で表示してみた。4.3インチの大型液晶で迫力ある映像を楽しめる

こちらはUstream。下り通信速度が速いので、映像の引っかかりも少なく、快適に視聴できる

WiMAX通信を割安料金で提供

HTC EVO WiMAXは強力な通信機能と充実した端末スペックに加えて、WiMAXの利用料金が安いという特徴を持っている。HTC EVO WiMAX向け料金プラン「+WiMAX」は、WiMAX通信を利用した月だけ、通常の月額料金にプラス525円をするだけでサービスを利用できる。

+WiMAXの料金イメージ(資料提供:KDDI)

通常のWiMAXサービスに比べて、パケット通信料が必要になるものの、パケット定額制に加入していればその上限金額以上にはならないので安心だ。逆に言うと、au側にとってはパケット定額制の上限いっぱいまで利用してもらえる可能性が高くなるため、プラス525円という安価な料金設定が可能だったのだろう。いずれにしても高速通信と安価な料金設定で、WiMAXを積極的に利用できる。通信エリアの課題も、速度さえガマンできれば3G回線を併用することで心配する必要はない。あとはUQコニュニケーションズにエリア展開の拡大を頑張ってもらうしかない。

後編では、実際にUstreamやニコニコ動画といった動画配信サービス、EvernoteやDropboxなどのファイル同期・共有サービスをHTC EVO WiMAXで使用し、その使い勝手を解説したい。