ハードウェア周りも改善
最後にハードウェア関連の新機能をチェックする。Internet Explorer 9 RC版では、タイマーの分解能が高まり、バッテリ駆動時とAC電源駆動時で動的に変化する機能が加わった。本機能を検証するため、簡単なJavaScriptプログラムを走らせてみたが、確かにAC電源駆動時は10ms未満で動作しているが、バッテリ駆動時になると10~20msに変化した。
これらの数値はお使いのコンピューターや、Windows 7の電源設定によって変化するが、バッテリ駆動時の消費電力軽減につながるのは間違いない。ただし、筆者の使っているコンピューター側なのか、Internet Explorer 9 RC版の問題なのかわからないが、AC電源駆動からバッテリ駆動に移行する際、Internet Explorer 9 RC版がハングアップするといったトラブルに見舞われることがあった(図23)。
ベンチマークに用いたコンピュータースペック
Intel Core i7 L620 / Memory 8GB / Intel HDグラフィック / SATA2-HDD 5400rpm / Windows 7 64ビット版
技術情報を確認すると、Internet Explorer 9ベータ版と同RC版の差異として、メモリ管理の改善があげられているが、筆者が確認した限りでは、ほとんど誤差の範囲だった。これは表示するWebページに挿入された広告バナーが、影響を及ぼしているのではないかと推測している。メモリ消費量の改善に関する検証は、正式版のリリースをお待ち頂きたい。
最後にサードパーティ製Webブラウザを並べて、ベンチマークを行ってみよう。今回使用するのは、Internet Explorer 9 RC版、Mozilla Firefox 4.0ベータ11、Google Chrome 10.0.648.45とすべて執筆時点での最新版である。後者2製品はDirect2Dといったグラフィックアクセラレーション機能が有効になっていることを確認した。
用いるベンチマークは、JavaScriptエンジンを測定するSunSpider JavaScript Benchmarkと、HTML5のパフォーマンスを測定するWebVizBenchの二つ。前者の単位はms(ミリ秒)のため、数値が小さいほど優秀である。後者はウィンドウサイズやfpsなどを元に算出したスコアポイントのため、数値が大きいほど優れている。
今回は下記の囲みのコンピューターに各Webブラウザを導入し、SunSpider 0.91は5回、WebVizBenchは3回実行した結果の平均値をグラフ化した。結果はご覧のとおり、Internet Explorer 9 RC版が優れた結果を残している。JavaScriptエンジンはMozilla Firefox 4.0ベータ11がひっ迫しているが、HTML5レンダリングエンジンはInternet Explorer 9 RCが一歩抜きん出る結果となった(図24~25)。
もちろん各エンジンが優れていることが望ましいが、足回りとなるキャッシュシステムのI/Oやアドオンによる影響などを鑑(かんが)みると、総合的な評価を打ち出すのは早計である。ただ言えるのは、現在Internet Explorer 8を使っているユーザーは、このタイミングで乗り換えてもまったく問題ないということだ。ただし、Internet Explorerのエンジンを用いたサードパーティサイト製タブブラウザを使用している場合は、予期せぬトラブルを引き起こす可能性がある。それでも、HTMLレンダリングエンジンおよびスクリプティングエンジンの向上は、サードパーティサイト製タブブラウザの性能にも寄与するはずだ。
なお、これまでと異なりInternet Explorer 9ベータ版を削除せず、同RC版の導入が可能だったことを踏まえると、従来のようにInternet Explorer 9 RC版の削除→Windows 7 Service Pack 1の適用→Internet Explorer 9 RC版もしくは正式版の導入という手順を踏む必要はなさそうだ。リリースが直近に迫っているWindows 7 Service Pack 1も気になるところだが、安心してInternet Explorer 9 RC版をお試し頂きたい。
阿久津良和(Cactus)