欧州のVisa EuropeがカナダのWireless Dynamicsと提携して、iPhoneを使ったNFC(Near Field Communication)によるモバイルペイメント実験を英国で開始している。EdyやSuicaなど、いわゆる非接触型の電子マネーのiPhoneを利用した公開実験だが、別にNFCを搭載したiPhoneの新製品が登場したわけではない。これは、いったいどのようなものなのだろうか?

Visa Europeのリリースにもあるが、これはWireless Dynamicsの「iCarte」というアクセサリをiPhoneに取り付け、さらに「Visa Mobile」というアプリをApp Storeからダウンロードして実現しているものだ。iCarteにはNFC用のアンテナとセキュアチップが内蔵されており、ここにVisaクレジットカードの情報が格納されている。これをアプリを起動した状態で専用リーダーに近付けることで、NFCによる決済が可能になるという仕組みだ。一度iCarte内のチップがアクティベートされると、以後はアプリが起動している限りいつでも決済システムが利用でき、欧州のクレジットカード利用では一般的なPINコード入力は必要なくなるという。

これだけだと特に際立った点はないが、まずユーザーが比較的に簡単に利用できるようになっていること。そして、ComputerworldのBloggerであるJonny Evans氏が、NFC搭載のiPhoneが今年中にも登場する可能性が高いのではないかと予測するように、用途の拡大が逆にiPhoneへの同機能搭載の期待とプレッシャーになっているのではないかという点だ。もっとも、AppleがNFCを搭載するとすれば、より汎用的に利用できるような実装でなければならない。一方でGoogleなどはNFCの技術に非常に注力しており、すぐに利用できるソリューションがなかったとしても、長い視点で技術を普及させ、他社に先んじて技術をリードしていく意向だという。今年2月に開催される携帯総合展示会「Mobile World Congress 2011」では、主要テーマの1つがNFCにあるといわれており、各社から関連ソリューションが多数登場することになるだろう。もちろん、iPhoneユーザーの1人として今後の対応は気になるところだ。