宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月17日、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルの中から見つかった微粒子の一部について、初期分析を開始することを発表。記者会見を開催し、試料の配布先や分析方法に関して詳細を明らかにした。

JAXAによる会見。中央が川口淳一郎プロジェクトマネージャ

初期分析は、これまで実施してきたキュレーション作業(サンプルの回収・保管・配分等の作業)の一環として行われるもので、代表的なサンプル(微粒子)について、カタログ化することを目的としている。ここで、どんな物質がどのくらいあるのか明らかにした後、世界中から研究テーマを募集。この国際公募は年末までには実施される予定で、その後の選定を経て、本格的な分析がスタートする。

初期分析に使用されるのは、サンプルキャッチャーA室(2回目のタッチダウンで利用した側)から見つかった岩石質の微粒子50個ほど。大きさは光学顕微鏡で見える数10μm程度のもので、いわゆる"自由落下法"(容器を逆さまにして衝撃を与える方法)により回収されたもの。これを第1弾として、国内の研究グループに分配、数カ月にわたって詳細な分析を行う。微粒子はこれ以外にも見つかっており、順次追加提供される見通しだ。

提供されるのは、東北大学、茨城大学、九州大学、北海道大学、岡山大学、東京大学などの研究者が参加する国内8グループ。様々な分析装置を使って、鉱物組成や元素組成、有機化合物の有無などについて調べる。初期分析は早ければ今週末にも始まる見込み。まずは、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」において、X線照射が21日より開始される予定とのことだ。

初期分析の概要(研究者名、分析方法など)

会見に出席した川口淳一郎プロジェクトマネージャは、「こういった節目となる機会にたどり着けたことを、プロジェクトチームとして何より嬉しく思う。昨年の今頃(イオンエンジンに異常が発生して帰還が危ぶまれた)を思うと大きな進展。これからの成果に期待したい」とコメント。今後については、「我々の任務は国際公募まで。はやぶさプロジェクトとしてはそこで終止符を打ち、その後は活動が一般研究に切り替わっていくことになるだろう」との見通しを示した。

初期分析の成果については、今後は論文による発表がメインとなる模様だ。早ければ、「月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)」(3月7日~11日、米テキサス州)や「日本地球惑星科学連合大会」(5月22日~27日、幕張メッセ国際会議場)あたりで論文が出てくる可能性もあるという。