「2011 International CES」のカシオ計算機ブースでは、プレスカンファレンスで発表されたばかりのコンパクトデジタルカメラ「TRYX(トリックス)」を中心とした新製品やプロトタイプを展示。Bluetooth Low Energy対応ウオッチなどが注目を集めていた。
新しい使い方の提案で注目のTRYX
既報の通り、TRYXは液晶とフレームが2軸で回転し、携帯電話のように液晶を開くことができる独特のスタイルが特徴。バリアブルフレームデザインと呼ばれ、液晶部分を開くとフレームだけが残り、フレームをつかんだり引っかけたり、自由なスタイルで撮影できる。液晶とフレームを使って自立させ、その場に設置して撮影することも可能だ。
また、単焦点レンズながら35mm判換算21mmと広角で、風景撮影だけでなく自分撮りや集合写真で威力を発揮する。撮像素子は有効1,210万画素CMOSセンサー、液晶はタッチパネル付きの3型スーパークリア液晶を搭載する。
画像処理エンジンとしては「EXILIMエンジンHS」を搭載。2CPUの高速動作で実現するHDR撮影機能、HDR画像に独特の味付けを加えたHDRアート機能にも対応。コンパクトで独特のスタイルながら、単焦点の広角レンズ、高速動作の最新画像処理エンジンなどを搭載し、カメラとしての基本性能にも配慮しているのも特徴だ。
ブースでは大々的に製品説明を行っており、独特の外観、新しい使い方の提案に来場者の注目が集まっていた。
"フォトアート"を簡単に作成して共有できるWebサービス
カシオが新たに開始するWebサービスが「イメージング スクエア」。EXILIMエンジンHSで実現するHDRアート機能などの新しい写真表現"デジタルフォトアート"を、Web経由で誰でも作成できるようになるサービスだ。
使い方は簡単で、Webサービスにアクセスして画像をアップロード。ハイコントラストの独特の画像が楽しめる「HDRアート クラフト」、絵画風の画像に変換する「バーチャルペインター」などの用意された機能を選択し、HDRアート クラフトの場合は3段階の強弱から、バーチャルペインターは12種類のパターンの中からそれぞれ選択してボタンをクリックするだけだ。
カメラのHDRアート機能では複数枚の露出の異なる写真を撮影して1枚の画像に合成する形だが、HDRアート クラフトの場合、1枚の画像から変換できる。デモを見る限りは効果も大きい。
アップロードして変換した画像は、そのまま保存したり、プリントサービスを利用したりできるほか、撮影場所を地図で指定して、地図上に公開することもできる。同じ場所で撮影された画像がアート風に変換され、それを世界中のユーザーと共有することができるのだ。
カシオではデジタルフォトアートの使い方の提案を続けており、個人で楽しむだけでなく、世界中と共有できる新たなサービスで、さらに訴求していきたい考えだ。
腕時計が情報端末に
カメラ以外の注目製品は、「Bluetooth Low Energy Watch」と銘打たれた腕時計だ。時計自体の見た目は普通で、まだプロトタイプのため実際の製品としては異なるデザインになる模様だが、その機能は興味深い。
機能としては、スマートフォンに着信した電話、受信したメールの情報をBluetooth経由で腕時計に表示するというもの。アドレス帳に登録してあれば電話やメールの発信者の名前が表示され、着信時に腕時計自体がバイブレーションして着信を知らせてくれる。加速度センサーを搭載しており、画面を2回タップすると、スマートフォン側の着信音をミュートしたり、そのまま切断したりといった操作も可能だ。
また、付近にあるはずのスマートフォンが見つからない場合に、時計側からスマートフォンのアラーム音を鳴らして発見しやすくする、スマートフォンから一定距離を離れたらアラームを鳴らす、といった機能も備えている。
現時点での機能自体はその程度だが、使っているのがBluetooth 4.0という点が新しい。現在最新の規格はBluetooth 3.0で、まだ4.0は正式に規格化されていない。カシオは4.0規格化に積極的に関わっており、いち早くプロトタイプを開発した形だ。
Bluetooth 4.0では必要なとき以外にBluetoothを休止させることができるため、時計の小さなボタン電池でも消費電力が押さえられ、電池交換後2年間の電池駆動が可能だという(通信機能を1日に12時間使用した場合の試作機による想定値)。
さらにプロファイルを追加していくことで、電話やメールの着信といった情報だけでなく、各種の情報のやりとりも可能になる。例えば老人が転倒したときの衝撃からスマートフォンを使って自動的に登録番号に発信するセキュリティ機能、体温計や血圧計などの計測器を内蔵し、リアルタイムの計測結果をスマートフォンに転送する健康やスポーツの機能、腕につけたコントローラーでゲームを操作するといったエンターテインメント機能など、さまざまな用途が検討されており、腕時計が情報端末に進化することになる。
ブースの説明員によれば、こうした機能の提案は時計メーカーとしてカシオから行っており、ほかの時計メーカーにも声がけをしてきたという。標準規格であるBluetooth 4.0の機能を使っているため、カシオ以外のメーカーでも同様の製品は開発できるそうだ。
発売はBluetooth 4.0の規格を待ってからで、今年中には製品化する予定。スマートフォン側はAndroid搭載端末を想定しており、Bluetooth 4.0を内蔵した端末が出てくれば、その端末に対してアプリを提供することでこうした機能が利用できるようになる見込みだ。
なお、展示ではNECカシオモバイルコミュニケーションズのAndroid搭載スマートフォンが利用されており、両社で協力して開発をしてきたようだ。