ミスを恐れるな。フラッシュバック機能を使え!
筆者は普段はマニュアルトランスミッション(MT)車を運転しているので、MTモードにも挑戦してみたが、F1のMTは別モノだ。難しい。時速100kmまでわずか3秒そこそこ。時速200kmからのコーナリングスピードまでの減速も同じくらいの時間。コーナリング時は250km/hオーバーから150km/h以上の急減速をしつつ、トップギア(7速)から4段以上、短時間でシフトダウンしながら、ブレーキングとステアリング操作をしなければならない。ステアリングを切っている段階で急激なシフトダウンがオーバーラップしてしまうとトルク変動が起きて挙動がとたんに不安定になってしまうので、ステアリングを最大舵角にもって行くまでにシフトダウンは完了していなければならない。しかも1速多くシフトダウンしても、少なくシフトダウンしても、コーナーからの飛び出し加速で不利になる。
ということで、初心者F1ドライバーにはATがお勧めだ。
それにしても、F1ドライバーは、この操作/作業をレースの間ずっとやっているのだから凄い。ATに甘んじていてもミスするときはミスをする。本戦時のコースアウトはほぼ優勝のチャンスをなくすので、例えばレース終盤の集中力が切れたときに、これをやると、「今までやってきたものが全て水の泡」的な絶望感を味わう。きっと本物のF1ドライバーもこんな気持ちになるんだろうな、と、おこがましいことを考えてしまうわけだが、本作はゲームなので、こうしたうっかりミスに対しての救済措置が盛り込まれている。それがフラッシュバック機能だ。
しまった! ……と思った瞬間に[SELECT]ボタンを押すことで時間の巻き戻しモードへと突入でき、ミスする前の状態に戻すことができるのだ。ゲームはミスする前から再開になるので、ミスしたときの操作を訂正することで、順位やタイムを落とすことなくレースが継続できる。徹底したリアリズム追求がなされた本作ではあるが、この部分はちょっと「プリンス・オブ・ペルシャ」的なファンタジー要素が盛り込まれている。なお、難易度によって使用回数が決められており、「ふつう」は3回まで、「エキスパート」では使用不可となっている。
いやぁ、この機能、自分の人生にも欲しいですな。
F1 2010は、まさに「大人の社会科見学」的なゲームであった
知っているようで、実はよく知らないF1の世界をインタラクティブに疑似体験できるゲームデザインは実に秀逸。レーシングゲームとしてのデキに不満はないし、エンタテインメント要素も満点なのだが、「F1ドライバーがいかに大変な職業なのか」ということを、F1の世界に疑似的に身を投じる形で体験できるのがユニークだし、なにより楽しい。
もともと"RPG"(Role Playing Game)は「役割を演じるゲーム」というのが本当の意味だった。だとしたら、この「F1 2010」は、F1ドライバーの役割を演じられる本当のRPGだと思う。
「やさしい」モードならばちびっ子にもお勧め! クリスマスにはハンドルコントローラとセットでどうぞ。
(トライゼット西川善司)
ゲームタイトル | F1 2010 |
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対応機種 | プレイステーション 3 Xbox 360 |
ジャンル | レーシング |
発売日 | 2010年10月7日 |
価格 | 7,770円 |
CEROレーティング | A (全年齢対象) |
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