敵も味方も"メカアクション"がカッコいい!
濃厚なSF設定が下地にあることは十分に分かった。では、一体どこに"メカアクション"の要素があるのか?
まず、主人公サムが着用しているバトルスーツが、この『VANQUISH』という世界観、そしてストーリーの根幹を支える存在となっている。このバトルスーツには「ARS (Augmented Reaction Suit System)」という名称が付けられており、意訳するならば「運動反応増進スーツ」といったもので、人間の運動能力と反応能力を増幅する、いうなれば"着ることのできるサイボーグ"ユニットとでもいうべき武器。現実世界でも夢の新素材として実用化への研究が進んでいる「カーボンナノチューブ」を人工筋肉などの主素材としているなど、ワクワクするようなSF設定だ。人工筋肉の制御には「BCI(Brain Computer Interface)」技術が使われており、一定時間内であれば常人の数倍の感覚能力を発揮することもできる。
着用後の風貌は、大きすぎのヘルメットを深くかぶりすぎた『HALO』のマスターチーフみたいな感じになるが、マスターチーフとは違って、スイッチ1つでアイバイザーからヘルメット部分は収納して、顔を丸出しにすることもできる。激戦を終えたあとには、サムは、ウィーン・ガシャコンと、高音の機械音を響かせてヘルメットを収納し、かならずタバコを一服する。そのオン/オフを切り換える感じが渋くてカッコいい。
主人公のARSと同じくらいのカッコいいメカアクションを披露してくれるのは、「ロシアの星」側の敵メカたち。「ロシアの星」軍の構成部隊のほとんどが無人の機械化兵であり、ワラワラと虫のようにわいてくる雑魚歩兵から、ノシノシと偉そうに出てくる身長の高いコワモテのエリート歩兵までバリエーションに富んでいて、新しい敵に遭遇すると、どんな攻撃を仕掛けてくるのか期待と恐怖で興奮してくる。
そして、なんといっても、『VANQUISH』のメカアクションの真骨頂はボス敵にある。サムのARS以上に「メカメカしい」アクションを大盤振る舞いしてくれるのだ。
例えば、最初に遭遇することになるボス敵の多脚戦車「アルゴス」は、初期状態では、そのぶっとい砲身からとんでもない火力の大質量弾を撃ってきて、いかにも戦車っぽい攻撃を仕掛けてくるのだが、ダメージが嵩んでピンチになってくると、二足歩行の人型に変形する。その変形シーンは、ハリウッドのSFロボ映画『トランスフォーマー』の質量保存の法則を無視したような荒唐無稽なキコカコキ! ガシャ~ン! 的なものではなく、部位が展開/回転して折れ曲がるグルリンパ! 的な説得力のあるものになっているのだ (この表現でちゃんと伝わることを願う……)。いうなれば、日本の"わびさび"を感じさせるメカ変形が目白押しなのである。