CEATECの興奮も覚めやらぬIT業界。18日より開催されたITpro EXPO 2010では、クラウドやセキュリティ、仮想化等の最先端のソリューションが数多く発表された。来場者の注目は、昨今話題を集めているクラウド関連、特に"プライベートクラウド"が脚光を浴びていた。

クラウド型パッケージ「Evernoteスターターパック」から次なる展開へ

セミナーでパーソナルトクラウドの活用を説く松田氏

プライベートクラウド関連では、昨今Evernoteのパッケージ版「Evernoteスターターパック」を販売したソースネクストから、よりユーザーに寄った自社製品とクラウドを連携させたサービスの可能性について代表取締役社長の松田憲幸氏がセミナーで講演を行った。

セミナーで、クラウドに対する消費者のイメージは、企業向けや難しそうといったものといったマインドで利用障壁の存在を示唆。よりクラウドを身近なものへとするためのアイディアとして、ソースネクストでは自社製品とのコラボレーションによる"パーソナルクラウド"を提案していくという。セミナーで明かされた一例では、「筆王」とクラウドの組み合わせで年々溜まっていく年賀状をスキャニングし、年号に紐付けて管理していく"年賀状アーカイブ"機能の可能性を示した。

また、「携快電話」とクラウドの組み合わせでは、アドレス帳や送受信されたメール、写真やメモといったデータをクラウド上へ移すことによって、携帯電話の機種変更や買い換え時に発生する面倒なデータの移行を簡便化できるのではと松田氏。他にも「いきなりPDF」や「B's Recorder」なども、クラウドを利用することでユーザーに新たな価値を提供できるという。近い将来、"ソースネクスト製品+クラウド"によって"プライベートクラウド"とはどのようなものかを体験できることだろう。

プライベートクラウドが企業や部門単位でのもの。ソースネクストでは、一歩踏み込んでユーザー個々が恩恵を受けられるパーソナルクラウドを提唱

セミナーでは、ソースネクストの定番ソフト「筆王」とクラウドの連携によって得られるメリットを例として挙げた

年々蓄積していく年賀状。手描きのものは捨てるには気が引ける……そういった場合にクラウドを利用することでスマートに解決できるという

スキャニングしたデータをEvernoteと連携させ年賀状の年号をベースにファイリング。確かにこれは便利なサービスだ

何かと難しそうなイメージや、一部のITリテラシーの高いユーザー向けサービスとして捉えられがちなクラウドサービスだが、マルチデバイス化が進むなかより一層身近なものへとなるだろう

年内に投入されるというiOS版「超字幕」シリーズ

また、先日同社人気製品「超字幕」シリーズがiOS版への対応を発表したが、会場では実際にiPhoneやiPadで超字幕シリーズが動作しているデモ機を展示していた。松田氏に伺ったところ「価格については1,000円を切る価格で提供したい。年内には数タイトルを送り出す予定」とのこと。実際にデモ機を操作してみたが、iPhoneやiPadが備えている携帯性に加え、時間や場所を選ばずにサッと使用できるスマートさと「超字幕」シリーズの組み合わせは、電車での移動時間やちょっとした待ち時間といった"細切れ時間"を有効に活用できるソリューションだと実感した。

iPadの大画面だとPC版となんら遜色のないカタチで英語学習が行える

iPhoneでもご覧のとおり。動画のクオリティも高く、表示される字幕も見やすい

VRや3Dもクラウドの時代へ

まるでゲームイベントを思わせるようなブースで筆者の目を惹いたのが、FORUM8のSaaS型のドライブシミュレーター「UC-win/Road for SaaS」だ。これは、3DのVRを簡単なPC操作で作成でき、仮想空間内での走行シミュレーションに加え、日照シミュレーション、交通流シミュレーションなどの高度なシミュレーション機能を備えたもの。

イベント会場のあるビッグサイト周辺に道路を新設して、実際に走行シミュレーションを体験することができた。目を見張る機能としては、単にシミュレートを体験できるだけではなく、ひとつの仮想空間を複数人数で同時に体験することができること。従来のようにビデオストリーミングだけではなく、インタラクティブにリアルタイムVRを提供してくれるシステムは、業務用用途以外での活用にも期待したいところだ。

FORUM8の展示ブース

イベント会場のある東京はお台場周辺を精緻に再現した仮想空間

先ほど自分で新設した道路をドライブシミュレート

クラウド技術以外にも目を見張るものが

最後に、ITとは若干異なるかもしれないが、アイディア次第では面白いサービスが生み出せそうな技術をひとつ紹介しよう。富士フイルムが出展していた偽造防止ラベル「フォージガード」は、特殊な印刷技術と専用のインクによってプリントされたものに専用のビューワーをかざすもの。すると、何も印刷されていなかった場所にフルカラーの画像や文字が表示されるのだ。

最近広告などでも利用されているAR、少し古いが鬼才ジョン・カーペンター監督のSF映画「ゼイリブ」の劇中を想像するとイメージとしてつかみやすいだろう。基本的に偽造防止という利用用途から広く一般に展開される技術ではないが、例えば専用のビューワーを携帯電話やスマートフォンのカメラに装着できるフィルタとして配布し、AR同様デジタルコンテンツへの誘導として利用する、なんてこともできるのではないだろうか。

その分かりやすさからか注目の高かった富士フイルムが出展した偽造防止ラベル「フォージガード」

このように専用のビューワーをかざすとカラフルな画像や文字が見えるようになる

あまねくデータやソフトウェア、それらを包括するサービスが、ローカルPCという束縛からマルチプラットフォームでの活用を実現してくれるクラウド技術。我々ユーザーに、もっと気軽にクラウドを利用するきっかけを与えてくれるサービスの登場に期待して止まない。