容赦なく肌を突き刺す厳しい日差し、寝苦しくて何度も目を覚ます熱帯夜…うだるような暑さが毎日続き、うんざりしている人もきっと多いはず。そんな今年の夏を象徴するキーワードのひとつといえば、間違いなく「熱中症」だろう。連日ニュースでも取り上げられ、この夏の熱中症による死者はおよそ500人にものぼるという。数多くの熱中症患者を診察し、「熱中症に関する委員会」の委員長でもある昭和大学医学部・三宅康史准教授に話を聞いた。

今年のピークは「3回」

昭和大学医学部・三宅康史准教授によると、例年「400~700人は熱中症が死因とされる」。ただ、死亡時にお風呂に入っていたことなどにより「熱中症が死因とされているケースも多くある」と言い、「今年の数字は実際に熱中症が死因だった方が多いとみている」

「もともと熱中症は梅雨明け後の7月下旬から8月上旬がピークとされ、お盆の時期にはほぼ終息している季節性のものなんです。ところが、今年はピークがこれまで3回も訪れており、現在は3回目のピークが続いているとも、4回目がやってきているとも言われています。軽症者も含めると今年は異常な発生数であり、危険度が高いことは確かですね」。

古くから屋外で行われるスポーツや労働の現場ではさまざまな熱中症対策が講じられ、注意も喚起されてきた。だが、今年の特徴は屋内での高齢者の熱中症による死亡者数が多いということ。三宅氏は日本の社会環境の変化も背景にあると指摘する。

「迅速にきちんと対応すれば回復する病気なので、『無理をしない』『水分を取る』『エアコンを使う』を心がけていれば充分に防げるんです。しかし、もともと老人は体の水分が少なく、汗をかきにくいうえに、エアコンを嫌っている人が多い。昔、エアコンで冷えすぎて痛い目にあったというトラウマや、電気代がどのくらいかかるかわからないなどの心配をしている方が多いのです。

加えて、近年は高齢化社会によって一人暮らしや老老介護のお年寄りが増え、熱中症の兆候を見落としがちになり、重症化を招いているケースが増えています。実際、私どもの病院に搬送されてきた重症患者さんのほとんどはその日のうちに亡くなっていることが多いですね」。

予防には、まず「良眠」を

いずれにせよ、暑かったら窓を開ければよい、という古き良き時代は終わりを告げ、自らの体は自らで守らないといけない厳しい時代に突入したことは間違いないようだ。

「昼間の熱中症を予防するためには、実は夜間の睡眠が非常に大事なんです。夜にエアコンもつけず汗をダラダラかきながら寝るというのは、結果的に体力・水分の消耗につながり、深刻な脱水症状を招いてしまいます」。

三宅氏曰く、「眠る前に、一杯の水を飲むことも、熱中症の予防策」

眠っている間に体力を消耗し、日中は炎天下に…という行動パターンは危険信号。日中だけ、日差しを避けているだけではダメなのだ。熱中症を予防するためには、室内を「温度28度以下、湿度70%」に保つことが大切なのだという。

三菱ルームエアコン「霧ヶ峰ムーブアイ」2011年度モデル。省エネ性能とあわせ、文字や絵でわかりやすく表示する「らく楽アシスト」はお年寄りにもやさしい

最近では、エアコンの省エネ化も進んでおり、例えば家庭用ルームエアコン(冷房定格能力3.6kWクラス)において省エネNo.1を謳う、三菱電機「MSZ-ZW361S」は期間消費電力量1,110kWh(2010年8月24日現在)。多機能化によりボタン数が増加する傾向にあるリモコンも、お年寄りにも簡単なように改良しており、リモコンの液晶に表示された「風をよけたい」「快適に眠りたい」などの文字や絵を選ぶことで、床、人、人の状態、間取り、日射熱などを見張る赤外線センサー「3Dムーブアイ」が働き、選択した希望を優先した運転を自動で行う。

また、このリモコンには加速度センサーを搭載。リモコンを持ち上げてから運転した場合の1時間あたりの電気代を表示してくれるほか、使った後も、エアコンが行った省エネ運転を通算金額としてアニメーションで知らせてくれる機能もついている。冷房をつけたいけれど電気代が気になる…という人には、エアコン使用時の目安としてぜひ活用していただきたい機能だ。

"羽根のない扇風機"として話題を呼んだ「Air Multiplier」。ユニークなデザインだけではなく、生み出す風の"質"にも注目したい

また、「寝ている時は体の位置が低いので、あまり部屋の下部ばかりを冷やさないよう、扇風機も上手に活用してみては?」と三宅氏。直接、風に当たることで、体を局部的に冷やすことを嫌う人も多いが、扇風機の風を壁に当てて部屋の中に空気の対流を起こすなど、ひと工夫してみるのもいい。最近では、ダイソンの"羽根のない扇風機"「Air Multiplier」など、断片的な風ではなく、より自然に近い風を生み出す高性能扇風機も登場している。

先日発表された気象庁の3ヶ月予報によれば、9月~10月も全国的に残暑は続くとあり、まだまだ熱中症に対する厳重な注意は必要だ。あらためて熱中症に関する認識・知識を深めると共に、扇風機やエアコンを効果的に活用し、屋内での熱中症対策を万全に整えたい。