この日のワンモアシングは「Apple TV」だった。ストレージを無くしたストリーミング専用デバイスになって価格は99ドル。現行のApple TVでは映像コンテンツを購入できるが、ストレージのない新モデルではレンタルのみ。Mac/ PCのiTunesとの同期機能もなくなり、Mac/ PCからのストリーミング再生のみをサポートする。
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今回はワンモアシングならぬワンモアホビーとして「Apple TV」の新モデルを発表 |
2006年の発表以来、成功を収めていないApple TV。しかしユーザーは気に入って使っている。そうしたユーザーの声を新モデルに反映した |
興味深かったのは、こうしたApple TVの変更に至った理由だ。従来のApple TVユーザーは「TVの横にまでコンピュータを求めていない」という。TVでは映画やTV番組を楽しめれば十分であり、そのためにわざわざTVの横に別のコンピュータを設置する必要はないというのだ。このことをコンピュータ産業の関係者はなかなか理解できないが、消費者にとっては自然な発想だという。さらに「(Apple TVの)ストレージ管理は余計な悩み」、「コンピュータとの同期は複雑で面倒な作業」などのユーザーからの反応が紹介された。
従来同様にApple TVとMac/ PCのiTunesとの連係は維持されているものの、ストレージ管理やiTunesとの同期をApple TVのデメリットと認めているあたり、Appleはパソコンと切り離してApple TVを使うスタイルを重んじているように思う。パソコン通を納得させる複雑な機能よりも、一般消費者が単純に映画やTV番組を楽しめるシンプルさが不可欠と考えているようだ。
これはApple TVだけが直面している問題だろうか? iPhoneやiPadでもユーザー層が広がれば、パソコンに関心のないユーザーも増えてくる。パソコンでコンテンツを管理せず、もっと簡単・シンプルに使いたいという声が大きくなってきてもおかしくない。TVの横にわざわざ専用のコンピュータを設置する必要がないと考える消費者は、多機能携帯やタブレットを使うのにパソコンが必須なのはおかしいというようにも考えるのではないだろうか。新しいApple TVは、コンテンツハブとしてパソコンを中心に据えたApple製品の関係図からはみ出しかけている。日本での展開は不透明だが、その成否は気になるところだ。