米Intelは8月27日(現地時間)、同社2010年第3四半期(7-9月期)決算の見通し予測を下方修正した。予想より低いコンシューマ市場でのPC需要に起因するもので、特に欧米などの市場で顕著であり、サプライチェーンの間での在庫調整の影響を受けたという。昨年比でのプラスは維持するものの、本来であれば売上が伸びる時期である年の後半の業績にブレーキがかかったことで、現在ささやかれている景気減速懸念によりいっそう拍車がかかる可能性がある。

Intelは7月13日に発表された第2四半期決算の中で、売上が116億ドル(±4億ドル)、グロスマージンが67%(±数%)程度と第3四半期の業績を予想していた。同社は今回の見通し修正で売上が110億ドル(±2億ドル)、グロスマージンが66%(±1%)と予測している。同社の第3四半期決算発表は10月12日を予定しており、ほぼ現在の予想に沿う水準で推移するとみられる。2009年第3四半期の売上は94億ドルであり、前年同期比で2桁のプラスになるのはほぼ確実だが、直前の2010年第2四半期における売上は108億ドルであり、横ばいに近い水準となる。昨年の例でいえば2009年第2四半期の売上が80億ドルに対し、第3四半期は94億ドル、第4四半期は106億ドルと、四半期ごとに十数億レベルで売上が増加している。多少の差はあれど、Intelの業績成長カーブはこうした四半期ごとに階段式に売上を積み上げ、翌年の第1四半期でいったん売上が減少し、また年率ベースで売上を増加していく形を描くことになる。そのため第4四半期でいきなり業績が上向く可能性も低く、今年後半はフラットな成長カーブで比較的低調に終わる可能性が高い。

筆者が以前、2009年第4四半期のIntel決算からPC市場回復について解説したが、Intelの業績とPC市場の動向は2つのファクターから成り立っていることがわかる。1つは昨年2009年のIntel業績の底上げ要因となっていたコンシューマ向けPC市場で、ここでの売上増加とASP(平均販売価格)の回復がIntelの業績急回復に大きく寄与した。一方で企業向け市場の回復の出足は遅く、今年2010年に入ってようやく上向きつつあることが伝えられた。今回は企業向け需要が回復しつつある一方で、以前の底上げ要因に減速感が漂ってきたことが業績停滞につながっている。

PC市場の減速に関する予兆は、今回のIntelの見通し予測下方修正以外にも、各部品メーカーの動向からも見て取れた。例えばDRAMeXchangeが8月19日に出した予測によれば、第3四半期のPC出荷台数は直前の第2四半期と比較して5%下落し、今年後半の出荷台数はトータルで1億9500万台を下回る見込みだという。これに応じてDRAM価格も下落しているようだ。特に欧州や米国市場向けのOEMでの受注取り止めが大きな影響を与えているということで、これはIntel側の報告とも一致する。コンシューマ分野が牽引してきたPC市場の回復は、ここで一段落したと考えて問題ないようだ。

一方でもう1つのファクターである企業向け需要だが、こちらもやや厳しいデータが出揃いつつある。例えば米Gartnerが8月10日に発表した調査報告によれば、2010年における企業のIT投資は2.9%成長になるという。だがGartnerは当初、成長の予測値を4.1%としており、事実上の下方修正となる。昨年比で回復しつつはあるものの、当初期待されていたほどの急回復ではないということだ。また米Wall Street Journalによれば、今月初めに米Cisco Systems会長兼CEOのJohn Chambers氏が世界経済の回復見通しについて不透明さを指摘しており、PC以外の市場でも同様の状態が広がっていることが予測される。

1ついえるのは、ここ2年ほど急回復していたIT企業各社の決算が、今年後半を境に横ばい、あるいは下落局面に入る可能性が高まったことだ。コンシューマと企業向けともに減速傾向ということで、全分野にまんべんなく影響を与えることになりそうだ。なお、Intel株は下方修正報告から週が明けた30日の取引で、原稿執筆時点で前日比2%マイナスの17.9ドル台で推移している。