シマンテックは25日に新しいセキュリティ対策ソフト「ノートンインターネットセキュリティ2011」(以下ノートン2011と略記)など2011年版の製品群を発表した。シマンテックでは、一般家庭向け製品として、日本市場を最重要視し、世界に先駆け8月27日に先行販売開始。対応OSは、WindowsR XP SP2/SP3(32bit)のHome/Professional/Media Centerエディション、Vista SPなし/SP1/SP2(32bit/64bit)の各エディション、7(32bit/64bit)の各エディションとなる。システム要件は、

  • 300MHz以上のCPU(XPの場合)、1GHz以上のCPU(Vista/7の場合)
  • 256MBのRAM(XPの場合)、512MBのRAM(Vistaの場合)、1GBのRAM(7の場合)
  • インストールに300MBのディスク空き容量

となる。価格はオープンであるが、推定実売価格で6,480円。本稿では、ノートン2011の新機能などを発表会の様子などともに紹介する。

図1 ノートンインターネットセキュリティ2011

悪質化するインターネットの脅威

発表会当日、恒例の「Black Market」を公開した。これは、インターネット上で繰り広げられている犯罪行為を体験できるスペースである。実際に、行われている強盗、詐欺、ストーカー行為などの犯罪行為を体験できる。

図2 Black Marketの入り口

まずは、ドラマ風に仕立てられたネット犯罪行為のビデオから始まる。6分くらいのものであったが、元彼女に裏切られ… その結末には驚かされた。そして会場では、盗品が売買される様子などが展示されていた(図3)。

図3 売買される盗難された個人情報

また、犯罪行為の手口や実例なども紹介される(図4)。

図4 IDやパスワードを奪取する様子

シマンテックでは、このBlack Marketの展示を今後、日本各地の主要都市にて年末にかけて行っていくとのことだ。ネット犯罪の源になるBlack Marketの認知を深め啓発活動の一環として行われる。

ノートンネット犯罪レポート:人々への影響

ノートン2011の発表と同時に行われたのが、「ノートンネット犯罪レポート:人々への影響」の発表である。これは日本を含む14カ国の18歳以上7,066人を対象に行われたものだ。このレポートの報告をまずは、ConnectSafely(コネクトセーフリー)共同ディレクターのアン・コーリア氏が行った(図5)。

図5 アン・コーリア氏

アン氏は、この調査から、ネット犯罪に対し「犯人が捕まらない」といった無力感が浮かび上がる点を指摘をした。そして常識と思われる対策のいくつかがあまり有効でないことなどを問題点として提起した。

図6 レポートの分析

アン氏については、単独でインタビューを行った。それについては、別の記事で紹介する予定である。次いで、登壇したのは、シマンテック ノートン・サイバーセキュリティチーフアドバイザーのアダム・パーマー氏である(図7)。

図7 アダム・パーマー氏

アダム氏は、米国海軍に所属当時、多くのネット犯罪事件を担当した。アダム氏は、ネット犯罪の解決は大きな困難を伴うと指摘する。調査によると、ネット犯罪の解決には平均28日(日本は32日)、解決のためのコストは334ドル(約3万円、日本は16,112円)かかっている。日本ではネット犯罪を完全に解決していない人が60%にのぼり調査対象国の中で最も高い結果となった(平均は31%)。また、お金を払わず音楽や映画をダウンロードすることを合法だと考える人は半数近くになり、11%が他人へのなりすましは問題ないと考えていた。アダム氏は、不正ダウンロードなどの行為で、マルウェアに感染させられる危険性を指摘した。

図8 日本では、5人に2人がネット上で個人情報を偽った経験がある

なお、レポートについては後日こちらを参照いただきたい。

ノートンインターネットセキュリティ2011

このような脅威の報告を受け、ノートン2011の紹介となった。シマンテック、コンシューマビジネスユニット日本/韓国リージョナルプロダクト、マーケティングシニアマネージャの風間彩氏が登壇した(図9)。

図9 風間彩氏

風間氏も最近の脅威として

  • 偽のセキュリティソフト
  • 検索結果のポイズニング
  • ソーシャルメディアへの攻撃

などを指摘した(図10)。

図10 検索結果のポイズニング、検索結果の上位とて安全とはいいがたい

これらの脅威に対抗すべくノートン2011では、レピュテーション(評価)技術をより強化している。5,800万人ものノートンコミュニティウォッチメンバーからの情報を元に、プログラムの作成時期と送信元などを評価する。これにより、新たな犯罪プログラムをすばやく阻止する。さらに評価スキャンでは、ノートンコミュニティウォッチメンバーと比較して、自分のPCの安全性などを確認できる(図11)。

図11 評価スキャン

レピュテーション技術は、ノートンダウンロードインサイト2.0、ノートンセーフウェブなどにも使われている。数年前までのウイルスなどへの対策は、シグネチャーベースによる方法が主流であった。しかし、2008年以降、作成されたシグネチャーは膨大な数となり、シグネチャーだけでは安全といえなくなってきている。ノートン2011では、レピュテーション、さらにはヒューリスティックなどを複数組み合わせることで、より確実に脅威から守ることができる。さらに、注目したいのがパフォーマンスである。セキュリティソフトの使命として、脅威からの保護も重要であるが、日々の使用に支障があっては意味がない。ノートン2011では、システムインサイト2.0を新たに搭載し、PCのパフォーマンス監視、PCを遅くしているアプリケーションを報告する機能などが搭載された。そして、ノートン2011自体のパフォーマンスの向上を図っている。

図12 ノートン2010との比較、ほとんどの機能において高速化が図れている

また、図13はノートン2011のメイン画面であるが、大きく変更になっている。

図13 ノートン2011メイン画面

シマンテックからフリーで提供されるツール

シマンテックでは、ノートン2011と併用することで、より効果的なツール類を提供している。まず紹介したいのが、ノートンオンラインファミリーである。これは、保護者が子どもたちを監視するためのツールとなる。ノートン2011では、図13から即座に呼び出すことができる。ノートンオンラインファミリーについてはこちらの記事を参照していただきたい。単なるフィルタリングを行うものではない。子どもとのコミュニケーションを深め、PCの利用におけるルール作りのきっかけとなるよう配慮されている。

図14 ノートンオンラインファミリー

また、ノートン2011とは、完全に独立したプログラムとなってしまうが、2つのツールを紹介しよう。まずは、ノートンブータブルリカバリツールである。これは、CDなどの光学メディアやUSBメモリから起動をし、OSの深い部分にまで組み込まれてしまった不正プログラムやウイルスを検出する。そして、ノートンパワーイレイサーである。風間氏が指摘した脅威に偽のセキュリティソフトがある。この種の不正プログラムは、シグネチャーベースのスキャンでは検地が難しいという状況があった。

そこでノートンパワーイレイサーを使うことで、これらの不正プログラムを削除することが可能となる。風間氏によれば、ノートン2011とは異なる検知方法(緩やかなヒューリスティック手法)を採用しているとのことだ。したがって、ノートン本体に組み込まれる可能性は低く、異なるツールとして利用することが最適となる。ノートンオンラインファミリーを含め、ノートン2011がなくても利用可能である。後者の2つのツールはこちらからダウンロードしていただきたい。

図15 フリーのツールのダウンロードページ

ネット犯罪者N?―ノートン2011のCM俳優:成宮寛貴氏

発表会の最後にノートン2011のCM俳優として、成宮寛貴氏が登場した。Black Marketわきの特設ステージにて、トークショーが開催された(図16)。

図16 成宮寛貴氏トークショー

ノートン2011のCMでは、やや危険を煽るように成宮寛貴氏がストーカーや強盗、詐欺師を演じる。3種類のCMが作成されたので、その違いを見比べてみるとおもしろいであろう。犯罪者を演じる成宮氏の狂気っぽい演技が見物だ。最後に、会場では、ネット犯罪者Nからの不気味なメッセージが流された(その模様はWebで参照可能)。そんな演出もまた楽しめた発表会であった。