工業用電子部品のカタログ販売などを手がけるアールエスコンポーネンツ(RSコンポーネンツ)は8月27日、エンジニア向けコミュニティサイト「DesignSpark」を9月1日より本格的に開設すること、ならびに回路図/PCBレイアウト用ツール「DesignSpark PCB」の提供を開始することを発表した。

エンジニア向けコミュニティサイト「DesignSpark」。将来的にはサードパーティのツールなども置かれる予定で、エレクトロニクス分野向けApp Storeのようなポジションを狙いたいとしている

DesignSparkは、組込機器などの設計エンジニアを対象とした、さまざまな設計ツールや技術情報の共有を目的としたコミュニティサイト。すでに7月25日より日本語のほか、中国語、英語、ドイツ語にて一部運用が開始されている。

ユーザー登録を行うことで、製品や開発キットのレビューやQ&A、ユーザーブログなどの投稿や閲覧することがことが可能となる。

ElectrocomponentsのHead of Electronics MarketingであるGlenn Jarrett氏

すでにフェーズ1として「エンジニアのサポートを目的とした3つのツールの提供を開始している」(RSグループの持ち株会社ElectrocomponentsのHead of Electronics MarketingであるGlenn Jarrett氏)としている。この3つのツールは、複数の企業の製品を跨って必要とする製品を同社のデータベースより探すことが可能な「Component Chooser」、約4万5000のコンポーネントを用いることが可能な「3D CADモデル」、そしてARMが運営、販売を行っているマイコンボード「mbed」との互換性を確保した組み込み開発プラットフォーム「EDP」となっている。

フェーズ1として「DesignSpark」の開設に先駆け3つのツールの提供を開始

9月1日のDesignSparkの本格開設はフェーズ2と位置付けられており、同時に無料のPCB設計ツールとして"DesignSpark PCB"が提供されることとなる。

フェーズ2としてDesignSparkが本格的なオープンとなり、PCB設計ツールの提供も行われるようになる。DesignSparkは大きく5つのコンテンツで分けられるサイト構成となっている

5つのコンテンツの概要

DesignSpark PCBは、「"パワフル"で"使いやすく"、そして"無料(フリー)"であることをコンセプトに開発されたPCB設計ツール」(同)であり、DesignSparkのメンバーであれば、誰でも同サイトよりダウンロードして使用することが可能だ。対応OSはWindowsとのことで、また英語での利用となるが、日本語でのQ&A対応などは行っていくとしている。Gerbarフォーマットに対応しており、基板サイズやレイヤ数、ピン数などの制限はない状態で利用できるほか、ウィザードを用いてコンポーネントを追加したり、3D CADツールとの互換性を持たせることも可能だという。また、データを元に、RSコンポーネンツへの発注に向け、BoM(Bills of Materials:部品表)リストを作成したり、必要となるパーツの購入が行える機能も搭載されている。

DesignSpark PCBの概要

さらに、2010年第4四半期から2011年にかけてはフェーズ3としてさらなるツールやリソースの強化を計画しており、「メンバーがダウンロードして活用するツール群の拡充や、Component Chooserの機能強化などが予定されているほか、ユーザーから要望の強かった機能を実現するツールやGoogle SketchUpとのフォーマットコンバータなどを用意する計画」(同)としている。

RSコンポーネンツの代表取締役社長である兵頭克邦氏

なお、RSコンポーネンツの代表取締役社長である兵頭克邦氏は日本の現状として、「アジア太平洋地域は中国の成長を背景に全体的に、売り上げ比率を伸ばしてきているが、日本も過去5年間(2004~2009年)のCAGRで8%の成長とまだまだ潜在的な成長力を秘めた大きな市場と考えている。もの作りをベースにして、日本という国を発展させていくという信念を企業が持ってビジネスを行っていく限り、成長は続いていくと信じている」とし、既存ユーザーへのサービスの拡充としての取り扱い製品の充実などを図っていくほか、新たなユーザー層の掘り起こしを図り、顧客数を従来の5倍に拡大することを目指すとしている。

これを実現するために、「価格を超える満足を、エンジニアへ。」をスローガンに国内8万2000点の品揃えだけでなく、グローバルの25万点以上の在庫を一週間程度で届けるサービスやDesignSparkでのエンジニアサポートツールの拡充、価格や数量などの相談への柔軟な対応などを行い、「今後は毎年15%の成長を目指していきたい」(同)との抱負を語っており、「個人でも買いやすいようにクレジットカード決済などにも対応を2009年より開始しており、今後もそうした個人ユーザーからの要望があれば、柔軟に対応していくつもりなので、気軽に意見を述べてもらえれば」としていた。

9月1日には年刊の「RS総合カタログ Vol.18」が発刊される予定。ペーパーカタログには、半導体製品を中心に新製品1万点を追加した8万2000点の商品が掲載され、2472ページの体裁となっている。入手方法は電話、FAX、およびインターネットからの申し込みで無料で入手可能だ