雑誌+DESIGNING、雑誌Web Designing、マイコミジャーナルの3媒体が、様々なジャンルのクリエイターたちを100人連続で紹介していく新企画。第28回は、デザインやファッション、カルチャー等、幅広い分野で活躍をするパピエ・コレの長澤均が登場。

長澤均プロフィール

1981年にカルチャー雑誌『papier colle』を創刊。同名のデザイン事務所を設立。川崎市市民ミュージアムをはじめ、多くの展覧会での図録・ポスターなどを制作。一方で28歳のときに『倒錯の都市ベルリン』というワイマール~ナチス時代までの文化史本の刊行。雑誌にもデザイン、ファッションに関する原稿を書いている。近著は20代のときから収集してきた昭和30年代の人工着色絵はがきをまとめた『昭和30年代モダン観光旅行』(2009年 講談社刊)」。オフィシャルWebサイトはこちら。

Q&A

――この仕事に就こうと思った年齢ときっかけは?

長澤均(以下、長澤)「ナチズムの根元にオカルティズムの要素があったという、これまで歴史として触れられてこなかった部分に光を当てた雑誌を発行したいと思い、そのためにはデザインもできないと良い雑誌は作れないと思ったからです。25歳のときです」

――これまでで一番思い入れのある仕事は?その理由や思い出を教えてください。

長澤「1994年に川崎市市民ミュージアムで開催された『バウハウス──芸術教育の革命と実践』展のポスターから図録など一式をデザインしたことです。タイポグラフィにMacのPhotoshop でエフェクトをかけたり、と当時としては早くからコンピュータを使った作品ということ、それにまだデザインが下手で荒削りなところです。年とともにデザインは上手くなってしまって、下手な時代には戻れない、というのが残念ですね」

バウハウス展
CL:川崎市市民ミュージアム / AD+D:長澤均

――この仕事を辞めようと思ったことはありますか?また、そのきっかけは何ですか?

長澤「グラフィック・デザインに関しては年中。ひたすらMacに向かって夕日も見ずに一日が終わってしまうから。文筆業のほうは、辞めたいと思ったことはまったくありません」

――これから取り組んでみたいこと、関わってみたい仕事は何ですか?

長澤「19世紀末から20世紀末の100年ぐらいのファッションを上流階級から下層階級まで、アナール派の歴史学の手法で記述したファッション史の本を、なんとかして書きたいし、調べてもいます。あと、10年かけた書いた長編詩を好き勝手な装丁で自費出版したいとも思っています」


――愛用している、思い入れのある道具や本、ものを教えてください。

長澤「中近東的な不思議な光を壁に映し出せる瓢箪ランプ。ひとつひとつ手作りのもの。それとマニアのモデラーが製作したラジコン・カー。打ち合わせテーブルでこれで遊んでいます」

長澤氏愛用の瓢箪ランプとラジコン・カー


――尊敬している人を教えてください。
長澤「思想家のシモーヌ・ヴェーユと革命家のレオン・トロツキー」

――アイデアを練る場所、時間などを教えてください。

長澤「自転車通勤の行き帰りか、シャワーを浴びているときにほとんどデザインが頭のなかで完成してしまいます」

――1カ月で仕事をしない日は何日ありますか?

長澤「仕事は速く短く、にしたいので、普通のサラリーマンの人よりは働いてないですが、仕事と趣味の境界が曖昧なので、まあ普通に休みがあるって、感じでしょうか」

――理想的なオフの過ごし方は?

長澤「ものすごい金持ちになって美女と週末を過ごすこと、だけれど、あり得ないなあって思ってます」

――趣味やコレクションなど、いま、個人的にハマっていることを教えてください。

長澤「19世紀から1970年代までの稀少なファッション雑誌の収集と過去の映画を観まくることです。映画は昔からシネフィル(映画狂)で、ほぼ毎日、観ていますが、それでも作られた歴史と作られる量の膨大さから"人生は映画に追いつけない"と感じています」

――お酒を飲みますか?週何日、どのくらいの量を飲みますか?

長澤「毎日ビール2本とワインか日本酒を2杯ほど」

――同業でよく飲みにいく、食事をする人は誰ですか?

長澤「同業者に友人がいないので、そういうのはないですね」

作品紹介

左:「BIBA」スウィンギン・ロンドン1965-1974
CL:ブルース・インターアクションズ / AD+W:長澤均
右:「JFW International Fashion Fair」(JFW-IFF)
CL:繊研新聞社 / AD+D:長澤均