仮想環境の「作成」「展開」をラクにする

ユーザー部門に仮想環境(仮想マシン)を提供する際は、最初に管理者による新規ゲストOSの展開といった作業が必要となるが、そのためにはあらかじめ構成作業が済んだ仮想マシンが必要となる。そして、ライブラリ管理された仮想マシンを最適な物理サーバに展開するといった流れになる。

ここで問題となるのが、「最適な物理サーバはどれか」を迅速に把握することだ。先述のように、物理サーバが集約されたラックの前にいちいち出向いて「手作業」で稼働状況をチェックしてから仮想マシンを割り当てるというのは物理サーバが数台しかないような状況でしかできないこと。物理サーバが何十台、何百台もあると、「手作業」は事実上困難となる。

このような状況で有用なのが、福原氏が担当するSystem Centerを構成する1つのコンポーネントである「System Center Virtual Machine Manager 2008 R2」(以下、Virtual Machine Manager)だ。このツールを利用すると、いくつもの物理サーバの中から最適なマシンを「スターレーティング」と呼ばれる星印のラベルによって迅速に把握することができる。さらに、仮想マシンの展開もウィザード形式で行えるため、専門知識のない担当者でも容易に作業をこなすことが可能だ。

最適な物理サーバが「スターレーティング」ですぐにわかる(Virtual Machine Managerのウィザード)

福原氏は取材時に実際に「Windows 2000 Serverの仮想マシンを物理サーバに展開」する作業のデモを行ったが、「最適な物理サーバを選んで仮想マシンを展開する」作業は3分もかからずに完了してしまった。

仮想マシンを作成・展開しているところ

展開した仮想マシン(ここではWindows 2000 Advanced Server)を起動したところ

「運用」(監視)をラクにする

「ツールを使えば仮想環境の運用がラクになるのは当然ではないか」といった思いも頭をよぎるが、福原氏は「必ずしもそうではない」という。同氏によると、ここで最も重要なポイントの1つは「モデル化」だそうだ。

具体的には、「仮想マシンとして稼働するOSに適用されたパッチの状態や、OS上で稼働するアプリケーションのライセンス、バージョン管理といった各種要素の管理をどのように効率的に実現できるのか」、また「どこで障害が起きそうか」「障害の発生源はどこか」などをどれだけ迅速に把握できるのかということである。 一度でもシステムの運用に携わったことがある人なら、これが実は容易ではないということがわかるはずだ。

System Centerには「System Center Operations Manager 2007 R2」(以下、Operations Manager)や「System Center Configuration Manager 2007 R2」(以下、Configuration Manager)といった、コンピュータの自律運用を支援するツールも用意されている。あらかじめ、展開される仮想マシンに「このシステムはこうあるべき」というルール(モデル)を定義しておくことで、仮想マシン上でルール外の動き(障害も含む)が発生した場合に、管理者への通知が自動的に行われる。これによってトラブルを未然に防ぐことができる。

また、これらのツールを利用すれば、仮想マシンを展開すると同時に自動的に監視対象のマシンとして登録されるため、登録漏れなどの人為的ミスを軽減することも可能だ。福原氏によれば「仮想マシンが増えるたびに、監視項目の設定もどんどん増えてしまうといった事態を避けることができる」という。

「Operations Manager」による監視画面の例