イー・モバイルは25日、データ通信カード向けの料金割引キャンペーン「新世代Wi-Fiキャンペーン」を実施すると発表した。キャンペーン期間中に端末を購入し、「データプラン(にねんM)」または「データプラン21(にねんM)」の契約者に対し、月額基本使用料を12カ月間、1,000円割り引く。データ通信専用端末向けの施策だが、特にポータブル無線LANルーター「Pocket WiFi」ユーザーをターゲットとしたキャンペーンとなる。受付は5月26日から8月31日まで。

Pocket WiFiなどのデータ端末向けキャンペーン

1,000円を1年間割り引く

同社は、データ通信に注力し、定額料金と高速な通信速度を武器にデータ通信市場で存在感を発揮しており、契約者数も1年で100万契約を伸ばして240万を突破。人口カバー率も9割を超え、地下鉄駅構内のエリア化もほぼ100%に達している。

特に昨年発売のPocket WiFiの販売が順調で、家電量販店での販売実績の4割がPocket WiFiになっているという。Pocket WiFiは、持ち運べるコンパクトな端末で、無線LAN機能を内蔵し、最大5台までの無線LAN機器を接続し、携帯電話の3G回線で通信を行うルーター機能を備えている。イー・モバイル以外にも、UQコミュニケーションズや日本通信、NTTドコモなど、各社が力を入れ始めている製品だ。

契約数も拡大、エリアの拡大も順調に進んでいる

Pocket WiFiは、多彩な機器が接続できることで人気が高まっている

ノートPCやiPodなどの携帯型音楽プレイヤー、ニンテンドーDSなどの携帯型ゲーム機、無線LAN内蔵のEye-Fiカードを使ったデジタルカメラなど、多彩な無線LAN機器が登場しているが、これまでは自宅や会社の無線LAN環境や公衆無線LAN環境でしか利用できなかった。こうした無線LANスポットはエリアが限られ、いつでも使えるわけではなかったが、Pocket WiFiを使うことで、無線LAN機器をいつでもインターネットに接続できるようになる。

今までの公衆無線LANではできなかった、いつでもどこでも無線LAN機器を接続することができる

これまでのPCなどに加え、今後はiPadのようなより画面の大きい端末や、カーナビ、テレビといった端末までターゲットになる

同社の阿部基成副社長は、無線LANスポットを「公衆電話のようなもの」と表現。それに対してPocket WiFiは無線LAN機器が場所を選ばず使えるようになるとアピールする。

同社の調査では、Pocket WiFi利用者の6割以上はPCを接続しているが、iPod touchも4割を超え、iPhoneと合わせるとPocket WiFiユーザーの7割以上が利用しており、「予想よりもiPod touchの利用者が多かった」(阿部氏)。無線LAN機器単体ではなく、複数の機器を接続して使っているユーザーも多く、利用者層も、従来のデータカードが30~40代中心だったところ、女性比率が3割に、20代以下の男性も25%になり、新たな顧客層に訴求する製品だとしている。

Pocket WiFi利用者は、ノートPC以外にもiPod touchなどを接続。しかも複数台をつなげている

これまで30~40代のビジネスマンとは異なる層が購入している

こうした点について阿部氏は、単身者で固定回線を持たない人が自宅のインターネット接続に利用したり、PC以外のiPod touchなどをメインに利用している人の利用が増えてきたのではないか、と予想する。

これまでデータ通信は、ノートPCやネットブックに始まり、携帯ゲーム機や音楽プレイヤーが使われ、スマートフォンやデジカメ、iPadといったデジタル機器で使われるようになってきた、と阿部氏。今回のキャンペーンは、「少し大きな画面のデバイスをターゲットにした」(同)という。

キャンペーンでは、Pocket WiFiやデータカードを購入し、データプランにねんMを契約したユーザーに対し、通常4,980円の月額基本使用料を1,000円割り引き、3,980円にする。また、データプラン21にねんMの場合は月額5,980円を4,980円にする。

また、6月24日からは割引サービス「にねん得割」を提供する。契約種別「ベーシック」の割引サービスで、2年間の継続利用を条件に300円を割り引く。従来の「ベーシック」の「データプラン」は月額5,980円で、「年とく割」は4,980円、「年とく割2」は4,580円だったが、これが4,280円になる。また「スーパーライトデータプラン」では280~4,680円の2段階定額制になる。

新割引プランのにねん得割

阿部氏は、特にPocket WiFiは、5つの端末を同時に接続できるため、携帯電話のパケット通信、自宅の固定回線、従来のモバイルデータ通信という3つの回線を1つにまとめられる点を強調。通信速度や使いやすさ、バッテリー駆動時間といった点をアピールする。

阿部基成副社長

回線を1つにまとめてコストダウンが図れる、という提案

今回のキャンペーンを26日から開始するのは、28日に発売されるアップルのiPadを意識したものだ。阿部氏も「(iPad発売日である)金曜に向けて準備もしていた。(iPadを)予約しているユーザーにも訴求していきたい」と話す。iPadは、無線LANモデルと3Gモデルがあり、回線を提供するソフトバンクモバイルはiPad専用のプランも用意しているが、阿部氏は「iPadでしか使えない回線に(約)3,300円を払うか、(ほかの機器にも接続できる)無線LANルーターを選ぶかはユーザーの選択」として、Pocket WiFiの利便性を強調する。

千本倖生会長は、「(iPadは)ある種の革命を引き起こす端末で、この種の端末が、今後主流派になってくる。モバイル(端末)が、電話の端末から新世代の端末に代わる、まさに大変化の時」とコメント。こうした端末において「Pocket WiFiのようなものが、思っていた以上に広い応用範囲と親和性がある」と指摘する。

エリック・ガン社長は、これまでのデータカードはPCだけで利用できたが、スマートフォンやスマートブック、タブレット、デジカメ、フォトフレームなど、無線LAN機器が増えてきたことで、ポータブル無線LANルーター市場が今後、PCのデータカードと同等の規模まで拡大すると見る。データカード加入者は、市場全体で400~500万とガン社長は予測。固定のブロードバンド回線は1世帯に1回線であるのに対し、「モバイル通信は1人あたり、1デバイスあたりの商売」(ガン社長)であり、これからさらに伸びることが見込まれる。ガン社長は、「最低でも(固定回線加入者の)3,000万と同等の数字は出てくるのではないか。それでも人口普及率では20%なので、それほどアグレッシブな数字ではない」と話す。

なお、イー・モバイルでは今年秋以降、HSDPAの回線速度を既存の下り最大21Mbpsから同42Mbpsまで増速する考え。Pocket WiFiについては現在同7.2Mbpsだが、増速対応については「検討していく」(阿部氏)という考えだ。

左からエリック・ガン社長、CMキャラクターでモデルの佐藤ありささん、阿部基成副社長

佐藤さんは、「iPod touchを買うかiPadを買うか迷っている」といい、イー・モバイルの新たな割引プランをアピールする