Bentoが支える、ロックバンド「ハイドロヴァイブ」のベストパフォーマンス【Mac Fan 2010年5月号掲載】

iMacから張りのある声が会議室に響いた。今、ぐんぐん注目度が上がっているロックバンド「ハイドロヴァイブ」のリードボーカル、ヘザー・セント・マリー氏が、ロサンゼルスの自宅からiChatで私たちのインタビューに応えてくれたのだ。海外のロックバンドがなぜここでインタビューを? と不思議に感じる読者も多いだろう。実は彼女は、バンドの活動を支えるあらゆる情報をパーソナルデータベースソフト「Bento」で管理しているのだ。

ヘザー・セント・マリー(Heather St. Marie)
ロサンゼルスを拠点に活動するロックバンド「ハイドロヴァイブ」のリードボーカル。2006年楽曲「キラー・インサイド」が、映画「ソウ3」の挿入曲となり注目を集める存在に。2007年以来全米ツアーを展開してファンを獲得し続け、今年3月、ついに日本でのデビューアルバムもリリースされた

無料の評価版から始まった

ハイドロヴァイブは日本でCDデビューしてから間もないため、知名度はまだ低いかもしれない。しかし、世界的大ヒットを記録したサスペンス映画「ソウ」シリーズ第3弾の音楽を担当しており、そのサウンドに触れたことがある読者はいるのではないだろうか。

映画に使われた楽曲が話題を呼び、ハイドロヴァイブは全米で9カ月に渡るツアーを敢行したが、当時「知る人ぞ知る」存在だった彼らには、専属のツアーマネージャーが存在していなかった。その結果、ツアーのアレンジ、会場でのグッズ販売の管理やバンドの経営など、すべてがヘザー氏の仕事として降りかかってきた。旅行バッグは請求書や資材の発注書、毎日のバンド活動の収支帳簿、コンサート会場の設備を記録した日誌でいっぱいになってしまった。

そんなある日、ヘザー氏は複雑な操作やプログラミングなしで日々の煩雑な業務を整理してくれるBentoというソフトの存在を知った。ヘザー氏はすぐさま無料の評価版をダウンロードし、使ってみることにした。すると、複雑な手順を踏まなくても感じのいいテンプレートが次々に出来上がっていった。

フリーのグラフィックデザイナーとしても活躍するヘザー氏のセンスからすると、単に数字の並んだ表計算ソフトの使用は受け入れがたかったという。その点、Bentoならクールなデザインでしっくり来るテンプレートが作れた。また、写真やビデオも情報として取り扱いたいという希望にも、すんなりと応えてくれた。「これは使える」と直感した彼女は本格的にBentoを「パーソナルな電子秘書」として採用することにした。

「2007年の9カ月にやったツアーが終わったときは紙の資料が山のよう、5センチの厚みになっていました。どのグッズがどれだけ売れて、毎晩の入場者がどうで、売り上げはどうだったか……。そういった記録をBentoに全部入れて持ち歩いたら、2008年のツアーは前年の苦労が嘘みたいになくなったんです」

ヘザー氏が実際にBento上で作っているデータベースを5点紹介しよう。これは「グッズの販売管理」データベース。CDアルバム、Tシャツ、アイロンプリント、車に貼るステッカー、デモアルバムなど30種類ほどのグッズを管理している。何がいくら売れて、次の会場に向けていくつ発注を入れるかなど、こなす仕事はたくさん。グッズのデザインもヘザー氏の手によるものだ

これは「ツアーマネージャー」データベース。どの会場がよかったか、会場の雰囲気、お客さんの反応など、このデータベースを開くとバンドにとっての会場評価が一発でわかるようになっている

Bentoのシンプルさがいい

ヘザー氏は大学時代にグラフィックデザインの勉強をする中で、さまざまなグラフィックツールの使い方やパソコンの知識を習得したという。さらに、PHPを使ったプログラミングも独学で身に付け、データベースの基礎も習得した。しかし、そんなバックグラウンドの持ち主でも、シンプルに使えるBentoだからこそ「パーソナル秘書」として威力を発揮させられるのだと強調する。

Bentoの発売元であるファイルメーカーは、より高機能なデータベースソフト「ファイルメーカー・プロ」も販売しているが、ヘザー氏にとっては「ツアーに出てボーカルトレーニングをする合間に触るだけで目的が達成できるシンプルさ」が必要だった。シンプルなBentoは、クリエイティブタイプの人にとてもおすすめだという。

しかも、シンプルでありながら高度な情報管理もできるところも重要だそうだ。例えばMacに標準装備されている「アドレスブック」から情報を引き出してきて広報用のデータベースを作ったり、さらにそこからレビュー用のデータベースを作成できるといった連携がBentoの魅力だという。

プレス関係データベース。バンドの広報活動の要となる情報がここに集約されている。Macのアドレスブックと連動しているから、同じ情報を何度も入れるなどといった無駄を避けることができる。掲載記事もここで管理する

音楽活動にもBentoが活躍

楽曲の管理にもBentoが大活躍している。曲のテンポ、演奏時間、歌詞などのデータを入れておき、アルバム作りの構想を練るために使う。また、ライブパフォーマンスを収録したビデオをメンバーで確認したり、配信準備を整えるのにも使う。

歌詞、テンポ、演奏時間などをデータベース化しておくと、次のライブでどの曲をどんな順番で演奏するか、アルバムにどれを収録するか、よい検討材料になる。もちろんこれで著作権管理もバッチリだ

ライブパフォーマンスのビデオもBentoで管理。バンドのメンバー同士で確認したり、配信用にどれを使うかが一目で判断できる。お客さんからの投稿ビデオもこれでライブラリ化している

ハイドロヴァイブのアルバムは、3月3日に日本でのリリースを開始している。「アルバムの日本発売に合わせて日本ツアーができればよかったけど、実現するのは夏の終わり頃かもしれません。最新アルバムはiTunesストアでも買えるようになってるので、ぜひ聴いてみてください!」

Bento 3


[発売元] ファイルメーカー [価格] シングルユーザ:5,040円、ファミリーパック(5台まで):1万290円

パーソナルデータベースソフト「Bento 3」。あらかじめ美しくデザインされた35種類のテンプレートから選択すればワンクリックで情報管理を始められる。表計算ソフトのような表示方法とカード型のレイアウト表示を簡単に切り替えでき、記録・検索・集計に役立つ。写真やビデオなどのマルチメディアコンテンツも美しく管理できる。WEBサイトから30日限定の無料体験版、世界中のBento 3ユーザが使っている人気のテンプレートもダウンロードできる
[販売元] ヴィレッジアゲインアソシエイション [販売元] スピニング [価格] 2,300円

3月3日にリリースされた日本デビューアルバム「Nothing Left to Lose」。日本盤ボーナス・トラック「キラー・インサイド」は、「ソウ3」の挿入歌。サウンドトラックにも収録され話題になった
No.1 Mac専門誌「Mac Fan」は毎月29日に発売

内容の詳細な情報は、Mac Fan公式サイト「Mac Fan.jp」にて公開中

会員登録はこちら

●Mac Fan公式サイト「Mac Fan.jp」はこちら

●最新号のお買い求めはこちらから

●バックナンバーのご購入はこちらから

●定期購読のお申し込みはこちらから