新聞/雑誌の新たな配信プラットフォームになると期待されているAppleの「iPad」。数多くの出版社がiPad版の提供に関心を示しているが、具体的な配信モデルを明らかにする出版社は現れていない。Appleが発売前のiPadの提供を制限しているため評価できないのが理由の1つ。また話題にはなっているものの、実際にどの程度の市場規模になるかが不透明で、戦略を決めかねているのが実状だ。そのような中、米Wall Street Journal紙が月額17.99ドルの定期購読プランを検討していることを明らかにした。

Wall Street Journalは、発売前のiPadの提供を受けている数少ないパートナーの1つと言われている。定期購読プランは「Magazines Use the iPad as Their New Barker」という記事の中で、同紙自身が"プロジェクトの内容を詳しく知る人"から得た情報として伝えた。

Wall Street Journalの現在の価格は、印刷版が月額29.08ドル、Web版が同15.12ドルだ。月額17.99ドルのiPad版はWebの上位版のような位置づけになる。記事ではCoca-ColaやFedExなどとの400,000ドル/4カ月の広告パッケージの契約交渉にも言及しており、iPad版には広告も掲載される模様だ。

Wall Street Journalの価格設定に対する反応は様々だ。すでに印刷版またはWeb版を契約し、それらと共に利用したいと考えている読者からは、iPad版のみで月額17.99ドルは高すぎるという声が目立つ。セット割引き次第ではあるものの、Web版利用者の中にはWeb版の契約でPCとiPadの両方で使えるべきと考える人が少なくない。逆にiPad版がWeb版と印刷版のメリットを兼ね備えたようなものになるのならば、iPad版だけで十分であり、月額17.99ドルは妥当という見方もある。こうした好意的な反応から、他のiPad版の新聞/雑誌も強気の価格設定からスタートする可能性も指摘されている。だが、Wall Street Journalは米国において、これまで一貫してWeb版を有料提供してきた数少ない新聞の1つだ。有料の印刷版のコンテンツをWebで無料配信している多くの新聞/雑誌が、Wall Street Journalのような値付けで読者に納得してもらうのは難しいだろう。無料のWeb版に対してiPad版をどのようにアピールするか……価格設定、定期購読割引き、広告モデルなど、今後も様々な可能性が議論されそうだ。