米Actelの上席副社長であるFares Mubarak氏

FPGAベンダの米Actelは2010年3月3日(日本時間)、独ニュルンベルクで3月2日から4日間の間で開催されているEmbedded World Conference(EWC)において、プログラマブル・アナログを搭載したインテリジェントなミックスド・シグナルFPGA「SmartFusion」を発表、日本でもFares Mubarak上席副社長が説明会を行った。

SmartFusionは、独自のオンチップ・フラッシュメモリを利用する不揮発性FPGAファブリック、ハードコアである「ARM Cortex-M3」プロセッサコアを中核に構築された完全なマイクロコントローラ・サブシステム、さらにフラッシュメモリ・プロセスによる高電圧対応プログラマブル・アナログ・ブロックを備えている。

このようにロジック、マイクロコントローラ・サブシステム、アナログという3つのプログラム可能な要素の組み合わせにより、SmartFusionファミリは、カスタマイズ可能な、使いやすいシステム設計プラットフォームとなっている。性能、効率的なシリコンの使用、電力管理といった目的に合わせて、組み込み設計者は、ボードレベルの変更を行うことなく、ハードウェアとソフトウェアのトレードオフを最適化できる。また、フィールドでのアップグレードが可能であり、複数の製品に対して1つのプラットフォームで処理できるため、設計効率、開発効率を高めることができる。

プロセッサからFPGAへ、アナログからプロセッサへ、さらにFPGAとアナログの間で送信されるデータがすべて、オンチップにあり、インタフェースが露出しないため高い保護機能が実現されている。さらに、同社独自のFlashLock技術は、情報の改竄およびプログラミングに対する保護を実現している。また、AESで暗号化されたインシステム・プログラミングが可能になっている。

SmartFusionのIP保護技術

SmartFusionデバイスは、フラッシュベースのProASIC3 FPGAアーキテクチャを採用している。130nm CMOSプロセス上に構築され、350MHzの性能と最大204のI/Oを持ち、システム・ゲート数6万から50万までの集積度で提供される。この組み合わせによって、他のデバイスが持つ既存の機能を統合することが可能になり、実質的に基板スペースの削減とシステム全体の消費電力の低減を実現できるという。

100MHzで動作するARM Cortex-M3プロセッサを備えたマイクロコントローラ・サブシステム(MSS)として、最大16Gbpsのスループットを持つマルチレイヤAHB通信マトリクス、RMIIインタフェースの10/100イーサネットMAC、最大で512KBのフラッシュ・メモリおよび64KBのSRAM、外部メモリ用コントローラ(EMC)、8チャネルのDMAコントローラなどを搭載している。また、MSSコンフィギュレータを使用することで、複数のユーザ間での共同設計を可能にしている。

ActelのMSSとMSSコンフィギュレータ

プログラマブル・アナログについては、独自のアナログ・コンピュート・エンジン(ACE)により、サンプル・シーケンスと演算処理を行い、Cortex-M3でのアナログの初期化と処理の負荷を減らすことが可能になっている。プログラマブル・アナログ・システムの仕様は、精度1%のADCおよびDACを内蔵、A/Dコンバータ(ADC)としては最大600KSpsのサンプリング・レートを持つ最大で3つの12ビットADC、D/Aコンバータ(DAC)としては最大で3つの12ビット1次ΣΔDACを内蔵することが可能となっている。また、最大10個の50nsコンパレータや統合された複数の温度モニタ、電圧モニタ、電流モニタも搭載することができる。

SmartFusionのラインセンス取得者は、Cortex-M3の性能と低消費電力性を活用できることに加え、600を超すパートナーを持つARMの幅広いエコシステムにアクセスでき、ツール、ソフトウェア、ミドルウェアを利用できるようになっている。

SmartFusionはコプロセッシングやインタフェースのカスタマイズで選択が求められる場合、モーター・コントロール、システムおよび電力管理、産業オートメーションなどの幅広い各種アプリケーションに対応した最適なソリューションを提供できるようになっている。これらのアプリケーションは、産業、防衛、医療、通信、コンピューティング、ストレージ市場まで、多岐に渡っている。各分野において、SmartFusionでのソリューションを提供することにより、コンポーネント数の削減、ボードスペースの縮小、ベンダー数の削減などを実現することができる。

SmartFusionファミリは、Actelの包括的なソフトウェア・ツールセットである「Libero統合設計環境(IDE)v9.0」によってサポートされている。Libero IDE 9.0は、同社ウェブサイトから無償でダウンロードできる。

なお、すでに2009年9月からの6カ月間、アーリー・アクセス・プログラムを展開、早期契約顧客にサンプル・デバイスの提供を行ってきたており、サーバ、ルータ、産業ネットワーク・ゲートウェイから太陽電池パネル・インバータやゲーム機に至るまで、多くのアプリケーションにおいて、現在、導入が進められている。