スマートフォンのアプリケーションは、それ自体が端末の魅力ともなるが、アプリケーションストアだけがビジネスというわけでもない。端末にあとからインストール可能なアプリケーションならば、新たなサービスを素早く展開できることになる。これまのでの低価格端末では、サービス用のアプリケーションは作り込みで、新たなサービスに対応するには、端末自体を買い換える必要があった。このため、新規のサービス導入は年単位の導入期間が必要になる。しかし、アプリケーションストアを介して、多くの端末にサービス用のアプリケーションを配布できるのであれば、すでに市場に出た端末もサービスの対象とすることが可能だ。このあたりも、スマートフォンが注目される理由と思われる。ようやく携帯電話の世界にも、あとからインストール可能なアプリケーションが普及するわけだ。また、高性能なスマートフォンならば、JavaScriptを含めたWebページを使うことも不可能ではない。

事業者は、さまざまなプラットフォームへの対応は困難だが、サービスの立ち上げは比較的簡単だ。また、これまで、自社のサービスに合わせて端末にソフトウェアを作り込ませてきた実績もある。そうした中、今回のMWCの基調講演で紹介されたのが、GSMAが提唱する「OneAPI」だ。これは、プラットフォームに依存しないネットワークAPIであり、これを使うことで、複数プラットフォームに対してサービスを対応させることが容易になる。事業者を中心にしたイニシアティブが結成されており、仕様自体は、GSM方式を採用する事業者、メーカーの団体であるGSMA(MWCの主催者でもある)が管理する。また、カナダで、このOneAPIを使った実験が開始されており、3つの事業者がこれに参加している。

MWCの基調講演で、GSMAのChief Executive OfficerであるRob Conway氏は、携帯電話用のアプリケーションの成長を予測

モバイル広告についても、2013年には、スマートフォンがPC台数を上回るため巨大な市場となることを同氏は予測している

最初のOneAPIは、今年の第1四半期に正式公開されるが、当初は、メッセージ(MMS、SMS)、端末の位置情報、支払い機能に対応する予定だという。このOneAPIは、いわゆるWebServiceであり、httpプロトコルを使ってサーバー側にURLとしてリクエストを送り、その結果を得るもののようだ。APIのドキュメントを見ると、SORPまたはRESTで利用が可能になっている。仕組みとしては、端末上のアプリケーション(Javaなどのプログラム、あるいはWebページとともにロードされたJavaScript)が、サーバーと通信しつつ、各種の機能を実行するものになっている。

GSMA OneAPI https://gsma.securespsite.com/access/default.aspx

モバイル広告も本格化か

アプリケーションだけでなく、携帯電話では、無償アプリケーションを開発するために広告モデルも導入されている。昨年11月には、Googleがモバイル広告を手がけるAdMob社の買収を発表、今年1月には、Appleが同じくモバイル広告を手がけるQuattro Wireless社を買収している。これまでは、モバイル広告は、Webページなどでほそぼそと行われてきたが、アプリケーションに広告を組み合わせるところが増え、規模を拡大しつつある。というのも、AppleのAppStoreでは、競争が激しく、無償アプリケーションを実現するためにアプリケーション内広告を採用するところが増えたからだ。また、Googleはもともと広告を利用した無償サービスを提供しており、これを携帯電話へも広げようというわけだ。

これまでの携帯電話では、画面が小さすぎて広告どころではなかったが、スマートフォンの登場により、携帯電話のディスプレイは大型化し、広告の表示スペースも取れるようになった。そういうわけで、スマートフォンの普及により、モバイル広告も本格化するわけだ。

こうした背景もあって、今回のMWCではスマートフォンが話題の中心となったが、それは、単に携帯電話ハードウェアとしてのスマートフォンではなく、アプリケーションや広告、さまざまな新サービスの土台となるものとしてのスマートフォンなのである。