iPad搭載プロセッサ「A4」

AppleがiPadを発表して以降、そこに搭載された謎のプロセッサ「A4」に関係者の注目が集まっている。例えばVentureBeatでは、ジャーナリストやアナリストではなく、現場のエンジニアや元Apple関係者のコメントを集めて、その実体解明に乗り出している。

VentureBeatのA4に関する話題は「Apple’s A4 chip: Engineers correct stupid journalist」と「How Apple’s A4 chip lets iPad run cooler, save battery life」という2つの記事に見ることができる。どちらも、予測だけのジャーナリストの話ではなく、現場のエンジニアから意見を請おうという企画だ。だが怪しい情報ソースや思いつきに近い話もあり、必ずしも信頼に足る情報かという部分には目をつむってほしい。

A4はCPUやGPUコア、そしてメモリコントローラなど複数のチップの機能を1つのダイに集約したSoC (System on Chip)であることが知られている。このうち、CPUコアについてはiPhoneの上位互換があることからも、ARMベースのプロセッサであることに異論を唱えるエンジニアはいないようだ。問題はどのARMコアを利用しているかという点で、ある人物は伝聞の話として「Cortex-A9のデュアルコアプロセッサ」だという話を紹介している。だが別の人物は「Cortex-A8またはA9」のいずれかで、デュアルコアであるかについては触れていない。VentureBeatが後に追加情報として元Appleエンジニアの話を紹介したところによれば「A4はCortex-A8のシングルコアで、A9ではない」ということだ。

次はGPUで、こちらもさまざまな話題がある。AppleがOpenCLに力を入れていること、そしてATI Radeonの開発に携わっていたMichael Frank氏を同社に迎え入れていることから、将来的にGPUコンピューティングのようなアーキテクチャを導入していくのではないかというトピックが盛り上がっている。現行の話についていえば、iPhoneのプロセッサではPowerVR系コアが採用されていることからも、A4ではPowerVR SGX 5 Seriesのいずれか、SGX 545または540ではないかという予想だ。上位互換を維持する以上、あまり斬新なコアを採用する可能性は低いということだ。前述の元Appleエンジニアもこの意見を支持しており、「どのSGXかは不明」としながらも、PowerVR SGXファミリの1つであることを強調している。

もう1つ重要なのは、Appleが以前に買収したPA Semiの技術がA4に導入されているかという点だ。PA Semiは65nm製造プロセスルールでPowerPCのデュアルコアプロセッサを2GHzの25W未満で動作させる技術を保持しているといわれる。これがもしA4に反映されているのであれば、iPadの10時間という稼働時間と高パフォーマンスながら低発熱という特徴も説明しやすい。またLLVMのようなプラットフォーム中立のソフトウェア技術にAppleが注力していることで、将来的にMacBookのような製品も非Intelプロセッサでの置き換えが可能になるかもしれないという期待も高まる。だがVentureBeatが信頼できるソースとして紹介する情報によれば、PA Semiは今回のA4には関わっておらず、既存のVLSIチームがA4の設計を担当しているという。VLSIチームはPowerPC G4 / G5の時代にノースブリッジの設計を何年にもわたって行っていた集団ということだ。