ホストドライブへの書き込みをキャッシュする「SSD革命」

コンピュータを高速化させるという観点から見れば、HDDに保存したファイル操作時のオーバーヘッドは大きなネックとなる。最近ではメモリをディスク化したSSDも流行っているが、物理的な駆動構造がないSSDでもオーバーヘッドは発生してしまう。この観点からコンピュータのパフォーマンスを向上させようとすると、書き込み先を変更するほかない。そこでMemory革命とは違うアプローチでI/O処理を高速化させるのが、「SSD革命/Speed Advance Hi-Grade Ver.1」(以下、SSD革命)だ。

SSD革命はホストドライブに対する書き込みを、メモリ上に作成した特殊領域に書き込むことで、システム全体のパフォーマンスを向上させるためのツールである。つまりHDD/SSDいずれの環境でもメリットが発生するものの、SSDユーザーには特にお勧めしたい。そもそもSSDは、物理的な駆動構造を持たない分、低故障率や耐衝撃性という長所を備えながらも、書き込み回数が制限されるという大きな短所を兼ね備えている。このような環境でSSD革命を使用すれば、Webブラウザの一時キャッシュなど重要性の低いファイルの作成先を特殊領域に向けることで、SSD自身の寿命を大幅に伸ばすことができるだろう(図15~18)。

図15 セットアップを終え、コンピュータを再起動すると自動的に起動するランチャ。表示されない場合はデスクトップなどにあるショートカットアイコン「Arkランチャー」をダブルクリックする。本画面が表示されたら、<システムドライブの高速化・保護>をクリック

図16 これでSSD革命のメイン画面が表示される。システム高速化を行なうため、<開始>ボタンをクリック

図17 メモリ上に特殊領域を作成し、ホストドライブに対する書き込みがトラップされた

図18 トラップ有効時はデスクトップに全体的な高速化向上率を示すウィンドウが表示される。なお、同ウィンドウを非表示することも可能だ

最大のポイントはユーザーがアプリケーションの設定を個別に行なわず、シームレスにホストドライブへの書き込みを特殊領域に誘導できる点。基本的な構造は前述したMemory革命に似ているが、SSD革命はEWF(Enhanced Write Filter)を用いて、書き込みをトラップし、メモリ上に作成した特殊領域にホストドライブに対する書き込み情報を格納している。内部ロジックは少々煩雑だが、ユーザーが操作する範囲では特に意識する必要がないため、手軽にコンピュータを高速化させたいユーザーには、有益なツールとなるはずだ。

なお、どの程度高速化するかは、お使いのコンピュータによって異なる。発売元が測定した結果によると、SSDの読み込みスピードは4倍、書き込み速度は100倍とうたっているが、この結果は大げさではなく、筆者がHDDを用いてベンチマーク測定を行なったところ、書き込みは約12倍、書き込みスピードは約14倍という結果が出た。体感的な向上も感じられ、Memory革命同様、有益性を実感できた(図19~21)。

図19 SSD革命のトラップ機能を無効にする際は、コンピュータの再起動もしくはシャットダウンをうながされるが、<高速化・保護開始から~>をチェックすることで、<何もしない>が選択可能になる

図20 使用可能なメモリ領域はMemory革命と同じく、OS管理外メモリも選択できる。ただし、コンピュータによっては使用できないのでバージョンアップ情報を確認して欲しい

今回は個別にツールの紹介を行なったが、Memory革命およびSSD革命はコンピュータのメモリを活用するツールということで、両者を1パッケージにした「Speed Complete BOX」として販売されている。各ツールを個別にダウンロード購入するよりも安くなるため、コンピュータの使用されていないメモリ領域を活用したいユーザーは、導入を考慮しても損はないだろう。

図21 CrystalDiskMark 2.2でHDDに対する差異を計ってみた

図22 なおコンピュータスペックは以下のとおりである

CPU:Intel Core 2 Duo T7600
チップセット:Mobile Intel 945PM
メモリ:4GB(OS上では3GB)
OS:Windows 7 32ビット版 Ultimate
HDD:Toshiba MK1646GSX(ATA2)