Lumarca~DIYで裸眼立体視ディスプレイを作っちゃおう

遠くから見るとなにやら立体的な映像が動いている。近寄ってみるとかなり解像度が粗いことに気づかされる。「あれ?」と思いつつ間近に行ってみると、そのボクセルに相当するものが張り巡らされた糸だったと知ってさらに驚かされる……。

ニューヨーク大学のMatt Parker氏らの研究グループが開発した「Lumarca」は、PCとプロジェクタと根気さえあればDIYで作れる裸眼立体視ディスプレイのシステムだ。正確には裸眼立体視というよりもボリュームデータを立体的に表示するボリュメトリックディスプレイ(Volumetric Display)というべきか。

原理は驚くほど簡単だ。

映像の投射元はごく普通のプロジェクタ。そのプロジェクタから投射される映像フレームの各縦1ライン分が奥行きの違う糸に投射されるようにしているだけ。つまり、各糸はプロジェクタ側から見て他の糸に遮蔽されないように奥行き値を変えて張り巡らされているのだ。そう、ある奥行きの画素ライン(縦糸)は1本しかないので、解像度が粗いのは当たり前なのだ。

糸は木綿糸のようなものでよく、プロジェクタからの画素投射を受けると糸は拡散反射するため、全方向に発光する。なのでどの方向から見てもちゃんとした立体像が見えるのだ。

16×16×500ドットの表示に対応した大型基

8×8×200ドットの表示に対応した小型機

糸は磁石で固定

今回の展示では大小、2基のLumarcaが展示されており、1基は1メール四方程度の大きさで解像度は横16×奥行き16×縦500ドット(縦糸は256本)、もう1基は30cm四方程度の大きさで解像度は横8×奥行き8×縦200ドット(縦糸は64本)となっていた。横と奥行きの解像度は糸の数、縦解像度はプロジェクタの解像度に依存したものになる。ちなみに、前者の大型タイプでは1,024×768ドットの据え置き型プロジェクタを、後者の小型タイプでは320×240ドットのモバイルプロジェクタを用いていた。

担当者によれば、大変なのはキャリブレーションだそうで、研究グループが開発したLumarca専用の調整ソフトを使っても数時間はかかるのだとか。

ちなみに、表示部となる各糸の両端には磁石が備え付けてられていて、台座の上下板を磁石で挟み込むようにして固定される。磁石の磁力による固定なので糸の移動はたやすく、臨機応変に行えるというわけだ。

プロジェクタのフォーカスは、ボリュームの中心に合わせるのがコツだそうで、これによってプロジェクタ側に近い側と反対の遠い側とのフォーカスずれを最低限にできるのだ。

担当者によれば、今回の展示のようなテーブルトップ向けの大きさはもちろんだが、プロジェクタの光量さえあれば大ホールクラスの大きさにも対応できるとのこと。その際には、糸の代わりにロープを使うことになるだろう。

解像度がどうしても粗くなってしまうため文字や緻密なグラフィック表示には向かないが、固まり観のある基本的な図形ならば問題なく表示できる。また、動きのある映像ならば、観測者側の脳内で形状が補間されて視覚されるので、そこそこディテールに凝ったグラフィックスもいけそうな手応え。ブースでは美しい幾何学模様を立体的表示しつつアニメーションさせる幻想的なデモンストレーションを披露していた。オフィシャルサイトにはデモの様子を撮影した動画があるので興味がある人は是非見てみて欲しい。

研究グループはボリュメトリックデータからLumarca投射用データに変換するソフトウェアを開発

動画像表示にも対応。動いていると意外にも解像度の粗さは気にならなくなってくる

オフィシャルサイト1
オフィシャルサイト2

(トライゼット西川善司)