ゼットエムピー(ZMP)は、早稲田大学理工学術院高西淳夫教授らの研究成果物である人間計測システム「WB-3(Waseda Bioinstrumentation system No.3)」をZMPが事業化してゆくことで合意したことを発表した。これにより、ZMPでは第1弾製品として人間の姿勢センサを製品化、開発用SDKおよび教材として2010年2月より出荷を開始する予定。即日受注を開始、ワイヤレスモーションセンサ&SDK「e-nuvo IMU-Z」が20万円、追加のワイヤレスモーションセンサが1個8万円となっている。

製品化されるWB-3(右)と前世代の「WB-2」

WB-3の概要

同製品の発表に際し、ZMPの代表取締役社長である谷口恒氏は、「今回の製品は、ロボットテクノロジー(RT)の応用だが、ロボットということを意識しないで新しいアプリケーションの開発を行ってもらうことを考えている」とし、コンピュータや家電の入力インタフェースとしての活用などのほか、「個人的にはヘルスケア(フィットネスやダイエット、身体の矯正など)の分野に注目している」とする。

IMU-Zは3軸加速度センサ、3軸角速度センサ、3軸地磁気センサ(いずれもSTMicroelectronics製)を搭載したモジュールで、BluetoothもしくはCANでの通信が可能。管理用のプロセッサとしてSTM32を搭載し、基板サイズはおよそ30mm×30mm×30mm、重量100g以下を達成している。また、Bluetoothでの接続は最大28台までつなげることが可能だ。

前世代の人間計測システム「WB-2R」を用いた例

また、地磁気センサを搭載したことで、絶対位置による動的な状態でも絶対角の計測が可能なほか、ソフトウェアによる処理で生じる遅延などがない。さらに、ダイナミックレンジを変更することで、用途に応じた精度での計測が可能となっている。

加えてWindows 7の「Sensor & Location プラットフォーム」に対応したことで、Windows 7上でのアプリケーション開発も容易に行うことが可能である。

高西教授の研究は、「人の社会に人間型ロボットが入ってきたとき、人間がその動きを見てどう感じるか」といったことを通じて人間を解明することが目標であり、「そうしたことをこれまではアンケートベースでやって、学会にデータとして用いても、信用度が低い、と評価してもらえなかった。それならばやはり実際に人型ロボットを活用することで定量的なデータを蓄積させ検証する必要があると感じた」(同)ことが今につながっているという。

首および手に包帯のようなものでWB-3を取り付け、仕草に応じて後ろのモニタのモデルも動くというデモ

また、人間の解明という観点から、医療向けロボットの開発にも関与しており、他大学との連携による脳手術訓練ロボットや内視鏡訓練ロボットなどの開発のほか、超音波の断層診断装置では慣性センサを用いたコントローラなどによる医者側の負担軽減を目指したシステム開発なども行っており、そうしたセンサを活用するノウハウがベースとなって、今回のシステムの販売に結び付いたとする。

内視鏡ロボットの説明をする高西教授(ハンドル部分にWB-3が取り付けられており、その動きを検知している)

なお、ZMPでは今後、使いやすい環境とともに提供することを目指し、教育・研修向け学習テキストの開発を予定しているほか、第2弾製品として、脈波の計測モジュールの提供を2010年半ばころまでに開始することを予定しているとする。

左からZMPの谷口氏、高西教授、発表会においてWindows 7のセンサAPIのデモを紹介したマイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏