ツールはクリエイターに楽しみをもたらす

仕事場には「Intuos4」がセッティングされている

タナカカツキはどのように自身の作品を生み出しているのだろうか。年内に刊行予定の新作マンガの執筆作業を例に、タナカは自身のマンガのデジタルツールをどう活用しているかを語ってくれた。

「手描き表現の豊かさは普遍なのですが、僕も紙の前よりPCの前に向かう時間のほうが多くなりました。実線はあくまでもペンで描いていますが、その後にデジタル技術を利用しています。主に手描き原稿をスキャンして、レタッチに『Intuos4』を使用しています」

タナカにとって『Intuos4』の利点は、何よりもその描き心地だという。

「僕は『Intuos3』からペンタブレットを使用しているのですが、正直、完全には自分の理想に追いついていなかったんです。凄く感覚的な事なんですが、自分が手描きで描くような線が引けなかったんです。Intuos4では、理想に近い線が引けるようになったので、常時デスクに置いて使わせていただいています。使い方自体は3と変わらないのですが、Intuos4では速い動きでも線が描ける。手の動きに対するレスポンスがとにかく良いですね。ベタの塗りつぶしとか、Intuos4では、より使いやすくなりました。またマウスでは手間のかかる部分をIntuos4でやっています。例えば汚れのある線を綺麗にしたいという場合ですが、マウスで範囲を指定して修正するのは、やはり手間がかかります。Intuos4ならこの作業も楽ですね。こういう作業は原稿では、一番こだわる部分だから」

原稿のレタッチ作業にはIntuos4が使用されている

原画の修正作業こそ楽にはなったが、必ずしもそれで作画する時間が短縮されたわけではないと、タナカは笑顔で語る。

「僕の場合、効率化で逆に仕事が遅くなるんです(笑)。やれることをとことんやってしまうので、別の事に時間をかけてしまうんです。たとえば、マンガの世界では、これまで購入していたスクリーントーンをカスタムシェイプで自分で作る事ができるようになった。楽しくて、さらに原稿に時間がかかってるはずですよ。外で遊んでたマンガ家が家にいる。仕上げるという事が楽しみになってきているんです」

これからのタナカカツキはどんな作品をクリエイトしていくのだろうか。

「僕はあくまでも、ツールありきなんですよ。After Effectsとハイビジョンがあったから、新しい映像をやった。新しいツールを覚えて、それを使ってなにかやりたいという感じです。それで色々な事が出来るというのは、クリエイターにとってワクワクする事なんです」

「Intuos4」 -タナカカツキはこう使う

「Intuos4」は2009年4月に発売された「Intuos」シリーズの最新モデル。ここでは、タナカカツキさんのIntuos4使用法を紹介しよう。
「今、ツールをIntuos4に移行中という感じです。ファンクションキーは現状では未使用です。なぜかというと、マンガにはセリフがあるからです。こればかりはキーボードで入力するしかない。他の作業はすべてIntuos4で可能なのですが、セリフだけはどうにもならない。ただ、ファンクションキーに設定されているオプションとコマンドは使いやすいと思うので、今後は使用していきたいですね。カスタマイズできるという受け皿があるという事自体、クリエイターにとっての楽しみのひとつだと思います。あと余談ですが、デスク上でライトテーブルを多用しているので、Intuosシリーズも光ってくれないかなと思うんですよ(笑)。モニターしなくて構わないから、ただ表面が光ってくれるだけで、マンガ家やアニメーターの人は助かると思います」。 「Intuos4」で「Illustrator」をより活用する方法はこちらから

撮影:石井健