商業化スケジュール

また、JAXAとNECの共同開発したマイクロ波方式のイオンエンジンの特長として、「1つのマイクロ波電源から、主イオン源と中和器への同時給電を行うことで、システムの小型化を実現した」(國中氏)というポイントも商用化に向けたアドバンテージとなるという。

近藤氏によると、NECとしてターゲットとなる人工衛星のクラスは、「大型の静止衛星は難しいが、300~500kg級の小型衛星での搭載が日米ともに注目されているほか、1~2t級の中型静止衛星では、静止軌道に侵入する際の軌道調整用に、との意見が出ている」と中小型での活用を期待しており、そのためには軽量化、小型化が求められることとなるためである。

このAerojetとの協業は、「2008年10月より、NECから提案してミーティングをこれまで4回行い、2009年7月初旬に合意締結に至った」(近藤氏)経緯があるという。今後のスケジュールは2009年8月末までに技術援助契約(TAA:Technical Assistance Agreement)を締結、同10月中旬の米国政府の承認を経て、2009年10月末の協業合意(Teaming & Agreement)を締結、米国市場向け提案活動を2010年1月より、NASAの深宇宙探査プログラムをターゲットに市場の受注を行っていき、2011年からの販売開始を予定しているという。

協業の今後のスケジュール

「低出力・長期運用のイオンエンジンはAerojetのラインナップにはなかった製品。マーケティング的にはAerojetの方が大きく、同社にエンジンを提供することがNECの海外展開の一助となる」と近藤氏は語る。ソリューションとしてエンドユーザの役に立つ1つのアイテムとしての人工衛星という側面をNECでは強く意識しており、宇宙関連技術を開発していくことで、通信デバイスの信頼性向上や技術転用などを含めて、さまざまな分野へのフィードバックも可能となるとしており、そうした分野も含めて、「10年後の2019年度には、宇宙事業全体で、現在の500億円弱程度の売り上げを1000億円超程度まで拡大したい」(近藤氏)と意気込みを見せる。

Aerojetの概要