英CSRの日本法人であるシーエスアールは、携帯電話のBluetooth対応モノラルヘッドセットに向けたBluetoothチップ「BC6100」シリーズとして「BC6130」「BC6140」「BC6150」3製品を発表した。サンプル出荷は6月中を予定している。

CSRの日本法人シーエスアールの営業部長である深田学氏

3製品ともにミドルクラスのモノラルヘッドセットをターゲットとしている。シーエスアールの営業部長である深田学氏は、「Bluetoothヘッドセットは、欧州や北米、アジアなどで巨大な市場になりつつある」と語る。主に、携帯電話のハンズフリー目的でモノラルBluetoothヘッドセットは用いられるが、機能を制限し価格を10~20ドル以下に抑えたローエンドモデル、カスタマの好みによりノイズキャンセラなどのさまざまな機能を搭載したハイエンドモデルがあり、今回の6100シリーズは、価格を意識しながら、ある程度の機能を持たせたミドルレンジモデルに対応する製品となっている。

主な特長としては、3製品ともにチップ内部にマスクROMを搭載することで、外部のフラッシュメモリを不要にし、モジュールコストの低下を実現している。また、コアは、最新世代の90nmプロセス採用「BlueCore7」ではなく、130nmプロセスの「BlueCore6」を採用しているのもポイント。加えて、独自の技術で特許も出願しているという近接ペアリング技術を採用。これは、これまではBluetooth機器をつなげるためには、機器同士の電源を入れ、ペアリング処理をして、機器を認識する必要があり、場合によっては設定なども必要となっていた。同技術を用いることにより、電源が入っている状態であれば、機器同士(例えば携帯電話とヘッドセット)を数10cm程度の距離に近づけるだけで、ペアリングを完了するという。

BC6100シリーズに搭載されている主な機能

このほか、プログラム可能な音声プロンプトを採用。これまで、ヘッドセットにはLCDがないため、LEDなどで状態表示などを行っていたが、耳に取り付けた状態では確認できなかった。音声案内により、(電話が誰からかかってきたかやメールが届いたといった)どのような状態であるかを理解しやすくなるという。ちなみに、この機能は日本語にも対応済みとのこと。

6140と6150には、「これらの機能に加えて、アクティブ・オーディオ・クオリティの強化として、同社のオーディオ技術として第5世代となる「Clear Voice Capture(CVC 5.0)」が搭載されている。これは、独自のDSPアルゴリズムを用いて、遠端(通話相手)と近端(自分)両方のノイズリダクションを実現する技術で、6140には「シングル・マイク・アルゴリズム・スイート」として1つのマイクによるノイズリダクションが、6150には「デュアル・マイク・ノイズ・キャンセレーション機能」として、2つのマイクを用いたより高性能なノイズキャンセレーション機能が搭載されている。

BC6130/6140/6150それぞれの特徴

また、CVC 5.0では、小さな音のゲインを自動的に引き上げ、聞きやすくしたり、コンフォートノイズを入れることで、無音状態でも自然と通話状態であることを認識させることができるほか、データが落ちた時に発生する"ブツブツ"といった切れるノイズをなくすことが可能となっている。

CVC 5.0のアルゴリズムイメージ図

BC6140とBC6150のノイズキャンセル機能の概要

さらに、「AuriStream技術」を導入することで、通常のBluetoothが採用しているCVSD(継続変数スロープデルタ・モジュレーション)の代わりにADPCM(適応差分パルス符号変調方式)を採用することが可能。これにより、音声信号が一般的な8kHzから16kHzに引き上げることが可能となり、高音質化が可能になるという(ただし、通話先の相手も対応している必要があるとのこと)。

6130/6140のパッケージは7mm×7mmのQFNパッケージを採用。これは既存製品である「BlueVox2」とのパッケージ互換がある。一方の6150は8mm×8mmのQFNパッケージを採用。こちらも既存製品の「BlueVox」と互換性があり、いずれも開発環境などは使いまわしができるほか、基板も使いまわしが可能だという。

同社では、このほか、ハイエンドモノラルヘッドセット向けやステレオヘッドセット向けの次世代チップの開発も進めており、「日本ではどちらかというとステレオヘッドセットの方が普及する可能性が高い」(同)としており、「CSRだからこそできた技術(CVCやAuriなど)を活用してもらうことで、Bluetooth機器をBluetoothであるということを意識せずに、有線でつながっているかのような使い勝手を実現し、誰にでも使ってもらえるようにしていきたい」(同)とカスタマならびにエンドユーザーに対してメッセージを送っている。