写真1:Spansion Consumer Set-Top-Box Industrial Division(CSID)担当のThomas Eby上席副社長

米Spansionは組込用途向けのシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)の新製品ファミリとしてMirrorBit Multi-I/Oフラッシュメモリを発表した。これに伴い同社Consumer Set-Top-Box Industrial Division(CSID)担当Thomas Eby上席副社長(写真1)が来日、エンベデッド市場向けの事業戦略の説明を行った。

一般に、SPI製品はデータをシリアルに読み取るため、ピン数が抑えることができるため、製品の設計コストの引き下げ、基板レイアウトを簡素化、ボード・スペースを縮小化可能にするなど、コスト面でパラレル・インタフェース製品を上回る特徴を持つものの、リード/ライトなどの性能面やセキュリティの面に課題があった。しかし、MIO製品では最大4つのシリアルI/Oデータバスに対応、データを1ビット(Single I/O)、2ビット(Dual I/O)、または4ビット(Quad I/O)ずつ伝送できるため、Single I/O SPIの利点を活かして、ピン数は8本(I/Oピン数最大4本)のままで高速化が可能となっている。Singleモードでのシリアル伝送速度は104MHz、Dual、Quadモードでは80MHzである。

写真2:MirrorBit SPI Multi-IOのパッケージ写真

今回発表したMirrorBit SPI Multi-I/O(MIO)フラッシュメモリ(写真2)は、最大40MBps(80MHz動作)の読み出し性能という、従来のパラレルI/O NOR型フラッシュメモリと同等かそれ以上の高速化を実現した。高速ページモードNOR型フラッシュメモリに対しても3分の2以上の性能を達成している。

写真3:Spansion MirrorBit SPI MIO製品の性能比較

また、性能向上により、シリアル製品でありながら高速XiP(Execute in Place:プログラムコード直接実行)に対応できるようになり、低速なSPI製品を採用したシステムでは必要な余分なRAM容量を削減、システムの起動時間を高速化することが可能になった。

セキュリティ面では、メモリ・アレイの特定領域への書き込み禁止によるソフトウェア保護、ライト・プロテクション・ピンとSRWD(Status Register Write Disable bit)による堅牢なハードウェア保護機能を搭載、強化を図っている。

新製品ファミリでは、32Mビットから128Mビットまでの容量帯での提供を予定しており、各製品はいずれもSingle、Dual、Quad(のシリアル・データ伝送に対応。下位互換性を持ち、ピン配置、パッケージ、ソフトウェアなども従来製品のものが利用できるため、製品移行も容易になっている。すでに32Mビット製品は量産出荷中。64Mビット品は09年6月からのサンプル出荷開始、128Mビット品は09年第4四半期からの量産出荷を計画している。3PC周辺、ネットワーク関連、HD-DVD、STP、DTVといった幅広い分野での利用が期待されている。

エンベデッド分野に注力

Spansionでは2009年4月22日に発表した自主再建計画の中で、事業の中心を携帯電話分野からエンベデッド分野にシフトしていく方針を明らかにしている。MIO SPI新製品投入もその戦略の一環である。今回の戦略説明会においてThomas Eby副社長は、エンベデッド市場におけるSpansionの地位とこれからの戦略方針を示した。2008年時点では売上高に占めるエンベデッド分野の比率は50%未満だが、今後数年をかけて90%以上にまで引き上げていく。

Spansionは携帯電話向けを含むNOR型フラッシュメモリ全体ではNumonyxとトップを争っているが、エンベデッド分野では競合2番手の2倍近い実績を残しているという。

写真4:2008年NOR型フラッシュメモリメーカ別/製品分野別売上高(iSuppli調べ)

特に通信・ネットワーク、アミューズメント/ゲーム、DTV/STB、自動車などの分野で大きなシェアを獲得している。小容量から2Gビットという大容量までの幅広い製品ラインナップ、20年以上前の製品の供給も継続するとった長期サポート、高品質などが評価されているという。 さらに最先端プロセスのについても積極導入している。65nmプロセスについてはすでに量産中で、45nmプロセスについても2009年中のサンプル出荷、2010年の量産化を計画している。さらにエンベデッド用途向けのNAND型フラッシュメモリの製品化も進めており、現在43nmプロセスを使用したMirrorBit NAND製品を社内評価中で2009年中のサンプル出荷、2010年からの量産を予定している。

競争力をいかに強化するのか

今後、エンベデッド分野で競争力をさらに強化していくための条件として、エンドシステムを含む技術予測の充実・強化、事業の長期持続性、大容量化対応を挙げている。これを実現するため、特に顧客との長期的で緊密な関係の構築が必要である。実際、同社売り上げの50%弱を54の顧客との取引が占めており、これらの有力顧客との長期的、安定的な関係を維持していくことが、事業基盤を支えていくことになる。この関係実現のために、すぐれた顧客サポートを提供できる直販営業部門と優秀な代理店、ディストリビュータとの連携を要件としている。

世界のエンベデッド向けフラッシュメモリ市場の31%は日本市場が占めている。その日本市場では、富士通/富士通マイクロエレクトロニクス、Hoeiを主力とする営業体制とSpansion Japanの技術サポートにより前期の要件をクリア、45%のシェアを獲得しているという。日本市場においても、Spansionの長期的事業継続についてアピールし、既存顧客との関係を従来以上に緊密にするとともに、新規顧客の開拓を進めていく。

写真5:Spansionエンベデッド地域別シェア