ウィルコム 取締役執行役員常務 平澤弘樹氏

5月12日と13日にパシフィコ横浜で開催された無線通信技術・研究開発の専門展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2009」。同展示会初日に行われた専門フォーラムで、ウィルコム 取締役執行役員常務の平澤弘樹氏がXGPの概要について説明した。

平澤氏は講演の冒頭で、ウィルコムが割り当てられた2.5GHz帯ついて説明。「今後ブロードバンドを展開していく上で、重要になるのが、周波数の幅。トップスピードを出すため、たくさんのユーザーを収容するためには、周波数の幅が広いほうがいい。LTEは1事業者あたり10MHz幅が2つ、20MHz与えられている」それに比べると、スピード・容量の面で、「ウィルコムが与えられた30MHz幅は、十分な競争力がある」と述べた。

XGPのロゴマークを紹介。「世界に羽ばたきたきたい」といった思いから、チョウをモチーフにしているという

XGPの導入で上下20Mbpsを実現する

次にウィルコムが提供してきたPHSの歴史を紹介し、2.5GHz帯を利用して提供する「XGP」に話しを進める。XGPの特徴として、マイクロセルで構築できる点を挙げ、「ウィルコムが持つ、基地局の資産と10数年培ってきたTDD技術、ALL-IPバックボーンを活かしてXGPを構築する。現行のPHSでは800kの通信速度を実現してきたが、3Gや3.5Gのサービスと比べると速度的には見劣りする。今後はXGPで20Mbpsクラスの速度を実現して行きたい」とアピールした。

XGPのコンセプトと特徴。最大の特徴はマイクロセルを利用したシステムであり、上りが高速である点

WiMAXとXGPの違いについては、「技術的にはほとんど同じ。大きな特徴はマイクロセルでシステム設計されている点。上り下りで同じ速度が出るシステムになっている」と述べた。続いて、現在の東京駅近辺の基地局配置図を示し、XGPもこのアンテナを活用してセルを構築すると説明。「(この基地局)全部にXGPを乗せるわけではない。この中から良い場所を選び、XGPアンテナを設置していく」と平澤氏は説明する。また、XGPを導入して展開していくアプリケーションとして、「動画」「P2P」「VoIP」を挙げた。

エリア展開イメージ。エリア内で2~300mごとにXGP基地局を設置予定

また、モバイル・ブロードバンド時代を迎えるにあたり、「今後、家で固定回線を利用していたユーザーがモバイルを利用することが考えられる。この場合、住宅街のトラフィックが増加するため、相当大容量のネットワークを作らないとカバーできない」(平澤氏)といった問題が出てくると指摘。

こういった問題を解決する「大容量システムの構築を実現する技術」として、ウィルコムでは、マイクロセルの実現に注力すると平澤氏は説明する。「マイクロセルであれば、10~1000倍の改善効果が見込める。これまでの経験から、マイクロセルを実現するのが一番効果的だと考えている」という。

割当周波数幅の拡大、データ圧縮技術の導入、MIMO通信の導入などを挙げるが、マイクロセルが一番効率的だという

XGPの主な規格

続いて平澤氏は、ウィルコムのマイクロセルについて説明。マイクロセルを規則正しく並べるのではなく、不規則に並べることで、1つの場所を複数の基地局でカバーする独自の技術を紹介した。「現実には、整然と基地局を並べることはできないので、マイクロセルを構築するためには、(基地局と端末が利用状況に応じて最適なチャネルを選択する)自律分散システムが重要なる。このためWiMAXではなくXGPを選択した」と説明。しかしマイクロセルは、高速移動での通信に弱く、郊外に展開する際に効率が悪い(多数のアンテナで構築するため)などの課題もあるという。これらの課題を解決するため、ウィルコムでは、マクロセル網の構築を検討しているという。

ウィルコムのマイクロセルの特徴

マクロセルで高い実行速度を実現し、マクロセルで高速移動と郊外をカバーする

このほか、10月の本サービススタートに向けて、4月27日より実施しているエリア限定サービスについても説明があった。6月には約500ユーザーに本格的な端末貸し出しを実施するという。また、XPGとおサイフケータイを利用したデジタルサイネージ実験など、現在実施しているさまざまなXPGの活用実験を紹介した。

今後のスケジュール。6月より約500ユーザーに端末を貸し出す