カシオ計算機が2004年より日本市場に投入した、フルメタルケースの質感とスポーティなデザインが特徴のソーラー電波時計「OCEANUS(オシアナス)」。「Sporty Elegance & Technology」というブランドコンセプトがどのようにして製品デザインに反映されているか、そしてプレミアムラインの「OCEANUS Manta(マンタ) OCW-S1200」はフラグシップモデルであることをどのように表現しているのか。同社生産技術本部デザインセンター 第五デザイン室長の森島高志氏に聞いた。
OCEANUSが共通して備える要素とは
時刻合わせ・電池交換の必要がないソーラー電波時計の市場において、OCEANUSはいち早くクロノグラフを採用したことで成功を収め、同社アナログ腕時計の高級機としての地位を確立した。しかし森島氏は「ソーラー電波のクロノグラフというだけで売れたわけではありません」と話す。「エレガントなスポーツウオッチというポジション」(森島氏)の製品を新たに生み出し、それとソーラー電波をはじめとする同社の先進的な技術をうまく融合させたことが、成功の理由だという。
ソーラー電波やクロノグラフといった機能性に加えて、デザイン面では、上質感、スポーツ感、そしてブルーのイメージカラーといった要素を、OCEANUSは全てのモデルで共通して備えている。
上に挙げた各要素のうちどれを前面に打ち出すかによって、それぞれのモデルの性格が決定されている。例えば、スポーツ感や機能感を強調したのが、20気圧防水やヨットレース用減算式タイマーなどを備える「OCEANUS CACHALOT(カシャロ)」シリーズ、思い切り機能性に特化したのがコンビネーション(アナログ・デジタル両搭載)モデルといった具合だ。
金属素材の美しさを最大限引き出す手法
フラグシップモデル「OCW-S1200」などが含まれる「OCEANUS Manta」は、先に挙げた要素の中でも「上質感」を追求したシリーズだ。確かに、スリムで端整なボディからはこれまでのOCEANUS以上に優美なイメージが感じられるが、具体的にはどのような手法で上質感を表現したのだろうか。
森島氏は、OCEANUS Mantaシリーズにおけるデザイン面での共通の要素として、「ザラツ研磨」と呼ばれる、熟練職人の手作業による研磨技術を挙げる。「日本でもトップクラスの限られた職人の手でしか行えない高度な技術となっており、これによって鏡面部分の平滑度を非常に高いものにできます」(森島氏)。
OCW-S1200のケースの両サイドはいくつかの面から構成されているが、ザラツ研磨を施すことにより、それぞれが美しいミラー面になることに加え、面と面との境界をよりシャープに見せられるのだという。「ザラツ研磨のケースとそうでないケースを並べて見比べると、片方はどことなく線が少しぼけやたように感じられるのに対し、もう片方は面の境目の線がきれいに出ていることがわかると思います」(同)。
カシオとしては2007年6月に発売した「OCW-S1000」で初めてザラツ研磨を採用。OCEANUSではケースにチタン材を使用しているのも特徴となっているが、チタンはその組成上、研磨すること自体が難しく、チタンケースでこれだけの平滑度を出したというのは、同社ならではのチャレンジということだ。
また、文字板上には多面カットの時字(インデックス)を配し、輝きによる美しさ、立体感による視認性の高さを共に得ている。「メタル素材の良さというのは光の反射に表れます。いかに良い光を見やすく綺麗に出すかが、金属による上質感の表現のポイントです」(同)。……続きを読む