米Googleの「Android」、フィンランドNokiaのSymbian Foundationの設立と、モバイルプラットフォームの覇権争いは、オープンソースに主戦場に移している。2007年に設立されたモバイルLinuxの業界団体LiMo Foundationはこの状況をどう見ているのか。どのような戦略なのか。2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2009」にて、LiMo Foundationでグローバルマーケティング・ディレクターを務めるAndrew Shikiar氏に話を聞いた。

LiMo Foundationグローバルマーケティング・ディレクター、Andrew Shikiar氏

MWCの会期中、今年度の新ディレクターが発表された

――LiMo Foundationのこれまでの経過について教えてください。

共通のLinuxベースのミドルウェアプラットフォームを作成することを目標に、2年前、創業メンバー6社により設立されました。現在、メンバー企業は約55社で、LiMoプラットフォームの開発を共同で進めています。

「LiMo Platform」はミドルウェアプラットフォームで、コードはすべて参加企業が貢献したものです。メンバー企業は資産を共有しつつ競合しています。今年のMWCでも、Samsungのコードが動くLG端末が展示されています。このように、ライバル同士が同じプラットフォームを共有するという興味深い動きが実現しています。

昨年、最初のバージョンとなるR1を発表しました。現在、LiMo端末は33機種あります。先日、R2の作業が完了し、現在、内部でプラットフォームを統合しています。R2をベースとした端末は年内に登場すると見ています。すでに機能ベースでは、最新の機能が端末に搭載されています。

R2はR1よりも大きなスコープとなり、LG、Samsung、Azingo、Purpule LabsなどのLiMoメンバーがリファレンス実装を発表しています。R1すべてとR2の一部を利用し、まったく同じコードを持つもので、将来的にこれを拡大できます。最終的にR2としてパッケージされますが、当分の間はR1に実装するため、事前統合したリファレンス実装は重要です。

――R2ではどのような強化があるのでしょうか。

メディア、セキュリティ、デバイスマネジメントなどのミドルウェア機能がサポートされる予定です。また、Web 2.0向けとしてBONDIフレームワークを支援します。BONDIはOMTP(Open Mobile Terminal Platform)のWebアプリケーション標準で、WebランタイムとWebアプリケーションとの間で共通のインタフェースを提供します。これにより、デスクトップ向けに開発されたWeb 2.0アプリケーションやウィジェットがLiMoで動くことになります。

今日のWeb開発者にとって、自分が開発したWebアプリケーションを携帯電話に対応させるのは、ラクな作業ではありません。プロプライエタリなWebランタイムで動作するよう修正を加える必要があるからです。LiMoのOEMが端末でBONDIをサポートすることで、Web開発者にはモバイルへの道が開けます。これは、モバイルインターネットの離陸に向けて重要なことです。

MWCの会場では、SamsungがWindows Mobile端末「Omnia」にLiMo Platform R2をのせたものを展示

AzingoもLiMoブースに出展、「Azingo Brower」などをデモしていた

――開発者向けの取り組みを教えてください。

開発ツールやSDKは、メンバー企業から提供されています。例を挙げると、ACCESSは、LiMoに対応したアプリケーションプラットフォーム「ACCESS Linux Platform v3.0」やSDKを提供しており、これを利用してネイティブアプリケーションを開発できます。また、Azingoは、「Azingo Mobile Platform」の一部でSDKを提供しており、ネイティブアプリケーションとWebアプリケーションを開発できます。

Samsungも開発者コミュニティを持っており、迅速に開発できるLiMo向けのSDKを提供しています。Javaベンダのアプリックスは、JavaとLiMoの橋渡しをするソリューションを発表しました。JavaアプリケーションがLiMoで動くようになります。

開発者の作業を増やすのではなく、LiMo向けに開発しやすくするようトビラを開く、これが我々のメンバー企業のアプローチです。開発者は現在、iPhoneかAndroidかと選択しなければならず、これでは市場が限定されてしまいます。我々は、すべての開発者がクロスデバイスで動くアプリケーションを開発できるようにしていきます。

メンバー企業独自の取り組みのほか、LiMo Foundationとしては、Webサイトで開発者のサポートや開発者向けのセッションを提供し、開発者が環境を理解できるよう支援しています。