ITが大きな変革の時代を迎えるとともに、経済環境が悪化する状況のなか、企業は今後、どのようなIT基盤とデータセンターのあり方を目指すべきなのかを論じる「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2009(主催 ガートナー ジャパン)」が東京 目黒区で開催された。

初日の基調講演には、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏が登壇。「ITインフラとオペレーション:2012年へ向けたシナリオ」との表題で、クラウド・コンピューティング、仮想化などの技術要素とビジネスの関連を分析、激変に対処するための処方箋を示した。

ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト 亦賀忠明氏

亦賀氏は、現在の大きな変動が短期的なものではなく、将来に向けて、継続していく可能性があることを指摘、「ITインフラを、従来の視点だけで考えていては競争に勝ち抜いていくことができない。ビジネスのためのITはどうあるべきなのか、大変化の時代は、全体を問い直すための良いチャンスだ」とする。

ITはさまざまなサービスを提供しているわけだが、インフラと、それを動かしていくオペレーションのあるべき姿を再考すると「つまるところ、インフラとオペレーションの役割とは、必要なときに必要なサービスを提供するしくみ」(亦賀氏)であり、亦賀氏は「インフラとオペレーションは一体のものであり、インフラだけつくって、運用面を後回しにして考えるという時代ではない」と話す。

「必要なときに、必要なサービスを提供する」(同)との思想は、まさにクラウド・コンピューティングの本質を言い当てているといえる。これまでのITは、業務に対し一つとの形態が基本で、設計、導入、構築・実装、運用までには、数カ月から数年を要し、ハード、ソフトなどはエンドユーザーが所有、完成したらそこで終わり、というのが一般的だったが、クラウド・コンピューティングは、大量のユーザーに対し一つで、「稼動までには、数日から数週間、基本的にはリソースを所有しないモデル」(同)だ。

使えるまでに数年もかかっていては、システム完成時には、時代が大きく変わり、有効性が失せてしまう。今後の方向性としては、クラウドへの流れはごく自然なものといえそうだが、亦賀氏は「クラウド・コンピューティングは、遠い未来の話ではなく、米セールスフォース・ドットコムがすでにSaaSというかたちで始めているし、米グーグル、米アマゾン・ドットコムも着手しているおり、外部では動いているが、企業の内部では、まだまだの状態」と述べた。