こうしたチャンスに賭けるSunの強みの1つがオープンソースの豊富な資産だ。単体では開発費の捻出や維持が難しいプロジェクトを買収等で資金面から援助し、さらに大規模プロジェクトで利用できるだけの実績や技術的裏付けを与える。こうしてOSSプロジェクトの1つという位置付けだった製品のバックアップに成功したものの代表例が「MySQL」となる。MySQLは現在企業向けのMySQL Enterpriseなどのバリエーションも登場しており、以前と比較してさまざまな開発プロジェクトで利用される機会が増えているようだ。

Sunの抱えるオープンソース資産。MySQLだけで関連開発者の人数が1200万人と、大規模なものになっている

OpenOffice.org (OOo)もSunによる初期の投資例の1つだ。「OOoは企業がもうこれ以上プロプライエタリな資産に投資したくないというニーズを掴んでいる」(Schwartz氏)というように既存ソリューションへの疑問も背景にある。このほかデスクトップ仮想化ソリューションの「VirtualBox」、クラスタリング向けファイルシステム「Lustre」など、インフラ構築に必要な基幹技術を少しずつ強化している。「オープンソースに注力するメリットの1つは、これらを使用していた学生がやがてFacebookのような新興企業を立ち上げたり、あるいは大企業に入っても使い続けることで、その技術自体がボトムアップで広がる効果が期待できる」と同氏は述べ、将来的な種蒔きの意味合いもあるとしている。

だがSchwartz氏が改めて強調するのは、これら買収や技術への投資は無作為に行っているわけではないという点だ。「Sunはインフラベンダーであり、ATMやKIOSK端末を作るわけではないし、消費者家電の世界に進出するわけでもない。これまでに挙げた企業やコミュニティ同士を結びつけるビジネスにあくまでターゲットを絞っている」と説明する。「The Network is the Computer.」とはSunが創業時から掲げる標語だが、この時代から何ら軸がぶれることなくビジネスを続けているということだ。