労働者の"ワークライフバランス"の実現や、通勤時の交通混雑の解消、災害時の事業存続などの問題の解決策として、再び期待されている"テレワーク"。国土交通省が郊外型のテレワーク施設のあり方を検証する実証実験を2008年秋から行っている。実証実験施設として開設された、神奈川県横浜市にある「テレワークセンターあざみ野」を見学した。

東急田園都市線 あざみ野駅すぐ近くにある「テレワークセンターあざみ野」

国土交通省による実証実験は、今年9月10日から2009年1月17日までの予定で続けられている。テレワークセンターあざみ野は、東急田園都市線 あざみ野駅から徒歩1分の沿線のガード下の事務所を改築して開設。平日9時から20時、土曜日9時から18時の間、実験に参加申し込みをしている企業の従業員を対象に開放されている。

テレワークセンターに代表される郊外型の分散オフィスは、1980年代後半に登場したものだ。都心に拠点を置く企業が郊外にオフィスと同等のワークスペースを設け、サテライトオフィスとして従業員にそこでの勤務を認めることで、高騰する都心部の地価で費用がかさむオフィス費用の低減や、通勤時間の解消といった問題を解消する手段として、民間企業を中心に実験的に導入が続いたものの、その後はあまり定着せずに終わった。

しかし、ここにきて郊外型のサテライトオフィスが再び脚光を浴びるようになった理由には、少子高齢化で労働者人口の激減という問題に直面する国の政策や、有能な労働者を確保し維持したい企業の戦略として、労働者の心のゆとりに目を向けたワークライフバランスが重視されるようになったことが挙げられる。労働者の仕事と家庭生活の調和を図るための手段としての視点から、再び郊外型のサテライトオフィスへのニーズが高まっているのだ。

1980年代に始まった郊外型テレワークオフィスが本格的に広がらなかった原因には、当時の通信インフラに限界があったことが挙げられる。当時の情報通信は、せいぜいパソコン通信程度のレベルで、コミュニケーションツールとしては不十分なものだった。そのため、テレワークセンターは単なる"郊外にあるオフィス"に終わってしまったのだ。さらにその後バブル経済が崩壊し、それを維持するための負担が企業に大きくのしかかり、次第に消滅していった。だが1995年に「ウィンドウズ95」が発売されると、パソコンが消費者の間に普及。ノートPCの登場とともに、モバイルワークが短期間で浸透していった。そして、インターネットが日常生活のインフラとなった現在、本当の意味でのテレワークの時代がようやく到来したといえる。