シャープは、独自開発のプラズマクラスター技術を搭載した商品の累計出荷台数が、12月末に2000万台に達したと発表した。2000年9月に、シャープの空気清浄機に搭載して以来、8年3か月で達成。2000万台のうち、自社商品への搭載が約7割、他社商品への搭載が約3割だという。

シャープ健康・環境システム事業本部 副本部長兼環境ソリューション統轄兼環境システム事業部長 浅野豊氏

同社健康・環境システム事業本部 副本部長兼環境ソリューション統轄兼環境システム事業部長の浅野豊氏は、「最初の1000万台までに5年を要したが、2000万台までの1000万台は3年。次の3000万台到達までは、2年で達成したい」と、今後の普及加速に意欲を見せた。

それまでの空気清浄機では、汚れた空気をファンで吸い込み、フィルターでろ過して、空気をきれいにしていたが、プラズマクラスター技術では、プラスとマイナスのイオンを空気中に放出し、浮遊する有害物質を分解、除去するのが特徴。放電電極にプラスやマイナスの電圧をかけて、空気中の水分子と酸素分子を電気的に分解。水素イオンと酸素イオンを作り出し、空気中の水分子がブドウの房のようにイオンのまわりに集まり、各イオンが安定したクラスターイオンになる。プラスとマイナスのイオンは、ウイルス表面のたんぱく質を物理的に破壊するなどの作用があるという。白血球がプラスイオンとマイナスイオンを発生させ、体内のウイルスを殺菌する仕組みにヒントを得て開発した。

プラズマクラスターイオン発生ユニット

これまで同社では、電極方式の改良や小型化、消費電力の削減、イオン発生量の増加などの進化によって、第7世代にまで技術を進化させており、今後、さらなる高濃度化にも取り組む。現在、大きくユニットは2種類あり、国内および海外の2拠点で生産している。

高濃度プラズマクラスターイオン発生デバイス

権威ある第3者の研究機関において、効果を実証するアカデミックマーケティングの手法を採用したのも特徴で、2000年に浮遊カビ菌抑止に関する効果を財団法人石川県予防医学協会が実証して以来、これまでに浮遊ウイルス、浮遊アレル物質、浮遊菌、付着臭、付着カビ菌など27種類にのぼる有害物質の抑止効果を、国内外13の機関が実証している。2008年8月には、鳥インフルエンザに関しても抑止効果があることを、英国レトロスクリーン・バイロロジー社が実証した。

「当初は、効果の実証だけを行ってきたが、その後、薬品業界で用いられている抑止効果のメカニズムの解明にも取り組んできたことで、表面にたんぱく質を持つ広範囲の浮遊有害物質への効果が期待できることを実証した。今後は、実際の生活空間での効果検証も行っていくほか、バイオハザードのように実空間では容易に検証できないような対象物にも効果、効能の測定を広げていく」という。   これまでシャープでは、自社製品として、空気清浄機のほか、エアコン、冷蔵庫、加湿機、ドラム式洗濯機、掃除機、加湿セラミックヒーター、コンビニクーラー、プラズマクラスターイオン発生機、LED照明の10品種に、プラズマクラスター技術を搭載している。

ドラム式洗濯機にもプラズマクラスター技術を採用している

プラズマクラスター技術を採用した冷蔵庫

LED照明にもプラズマクラスター技術を採用

プラズマクラスター技術を採用した商品にはロゴが入る。掃除機にプラズマクラスターのロゴが

10月に発売したプラズマクラスターイオン発生機は、10月には2万台だった生産台数が、11月には3万台、12月は5万台へと拡大。わずか3か月で10万台を販売するヒット商品となった。

「プラズマクラスターイオン発生機は、コンパクトであること、アレル物質を除去するので赤ちゃんの健康対策にあうこと、また、ペットやタバコの臭いが気にならなくなる、髪がサラサラになるなどの声があがっており、1台目を購入すると、2-3週間後に2台目を購入するというケースが出ている」(浅野氏)という。

3カ月で10万台を出荷したプラズマクラスターイオン発生機

現在、プラズマクラスター技術を採用した同社商品は、全世界58か国に出荷されているという。

プラズマクラスターのロゴ。ぶどうの房のようになっているクラスターイオンの様子を示した

店頭展示している商品には、2000万台達成のシールを貼付する

一方、他社商品への採用も相次いでいる。 2002年2月に、INAXのシャワートイレに採用されたのを皮切りに、これまでに24社の企業で採用。車内空間、公共空間、家庭内空間、集合住宅などに導入される機器に採用されている。

シャープでは、自動車の車内環境に対応するために80度からマイナス30度までの環境での動作を保証し、振動対策を施した車載用ユニットや浴室などにも利用できるようにした浴室用ユニットをそれぞれ開発。「日産自動車では20車種、トヨタでも20車種に採用されている。他社向けでは自動車産業での採用が最も多い。今後、さらに異業種の採用メーカーを増やし、他社商品への出荷比率を高めたい」としている。

片山幹雄社長はプラズマクラスターイオン発生機を健康・環境分野の重点商品に掲げる

12月からJR東日本の山形新幹線「つばさ」に導入された最新車両「E3系2000番代」では、川崎重工業、デンソーとの協業によって、鉄道車両向け空気浄化システムにプラズマクラスター技術を採用。「公共の交通機関において採用されたことは、さらに大きな一歩を踏み出したものといえる」とした。

プラズマクラスター技術が採用されたJR東日本の山形新幹線「つばさ」の最新車両「E3系2000番代」(写真提供:東日本旅客鉄道)