以上、FIRECODER Blu付属のFIRECODER WRITERを紹介してきた。良く言えばシンプルだが、SPEを搭載するSpursEngineでこれだけのことしかできないのかと拍子抜けしてしまう部分もある。SPEが働くのはアップ/ダウンスケールコンバートのみというのでは、あまりに寂しいと感じるのは筆者だけではないだろう。エフェクトやノイズ処理といったさまざまな映像処理にSPEが活躍するようになれば、より魅力的な製品になるに違いない。

実際、GPUサイドの状況を考えるとSpursEngineの立場は微妙になりつつある。カタログスペックだけを見れば、48GflopsのSpursEngineに対して、ハイエンドGPUの性能はすでに1Tflopsに達しており、今やSpursEngineはPCの周辺機器として圧倒的なスペックを持つとは言えない。もちろん、浮動小数点演算のカタログスペックが動画処理のパフォーマンスに直結しないのも確かだが、GPUでも本気を出せばかなりの処理が可能だろうことは間違いない。

さらにNVIDIA、AMDともに動画に力を入れ始めており、とくにAMDは(まさに今月)AMD Streamみ対応する動画変換ソフトウェアAvivo Video Converterの新バージョンを無償で配布するなど動画方面に力が入っている。開発環境の点でも、すでにNVIDIAはCUDAを擁しており、NVIDIAとAMDの両社が対応を表明しているOpenCLが正式にスタートするなどGPUサイドも整いつつあるわけで、対するSpursEngineとしてはGPUよりも一刻も早く映像関係のソフトウェアを充実させなければならない状況と言っていい。そんな状況も横目で見ながら、SpursEngineの今後に期待しておくといいのではないだろうか。

もちろん、実力のある方は是非ともSDKを手に入れてSPEプログラミングを試みるとより楽しめるはずだ。筆者がPlayStation 3でSPEをいじった経験から言うと、SPEに本気を出させるのはかなり大変そうだが、それだけにやりがいはあるはずだ。