このソフトの中で(おそらく)唯一、SPEを使っていると思われる機能で、どの程度の高画質化が得られるのかは興味のあるところだろう。そこでサンプル動画のアップスケールを行ってみた。これらの画像は、画質がどれだけ変わっているかを確認できるよう、拡大画像が原寸大になっているので注意してほしい。

元の画像

アップスケール後(標準)

アップスケール後(最高品質)

元の画像

アップスケール後(標準)

アップスケール後(最高品質)

元の画像と並べてみると違いが良くわかる。HD出力の品質を標準にした画像は、単に引き延ばしているだけという印象だが、最高品質ではシャープになり解像感感がいくぶんかは増していることが分かるだろう。また、MPEG-2由来のノイズもわずかだが最高品質出力では抑えられているようだ。

高画質にアップスケールしたいのなら最高品質を選ぶべきだが、時間はそれなりにかかる。アップスケーリングはエンコード共に行われるので、エンコード込みの時間になるが、標準品質設定ではほぼビデオの実時間とほぼ同等の時間がかかる。

一方、最高品質では48秒のビデオクリップのアップコンバートに88秒かかっていた。ソフト上に時間が表示されないので、時計を並べての実測であるため1秒前後の誤差はあるかもしれないが、実時間の2倍近くかかるのは間違いない。PlayStation 3で非常に高画質のアップスケールコンバートがリアルタイムに実行できてるのに比べるとかなり遅いが、SPEが減らされた上に動作クロックも半分と言うことで致し方ないところかもしれない。

エンコード自体はかなり高速で、SD解像度のままHDへのコンバートを行わなければ48秒のビデオクリップをわずか8秒でH.264のMPEG-2 TSデータを出力してくれる。ハードウェアエンコードなので当然といえばそれまでだが、CPUで行うのに比べれば圧倒的だ。

ところで、読者の中にはデジタル放送の受信データのH.264変換に使えないだろうかと考えている方も多いに違いない。MPEG-2 TSに対応しているため、デジタル放送のデータ自体はFIRECODER WRITERの素材としてきっちり利用できる。

だが、データに含まれるエラーなどにかなりシビアな反応を示すため、実際にエンコードを完遂するのは難しそうだ。放送波のデータは途中にフレームの欠落があったり、音声の形式が切り替わったりすることがあるが、その種の状況に遭遇するとFIRECODER WRITERは確実に停止してしまうのである。

MPEG-2 TSのエラーを検出、修正してくれる「mpeg2repair」というフリーソフトを通したデータもFIRECODER WRITERでのトランスコードには失敗するなど、やってみるとなかなか難しい。エラーを表示して停止してくれればいいが、場合によっては完全に固まってしまうことがあるのが厄介だ。いろいろなデータを試した結果から、エラー処理がまだいまひとつという印象を受けている。

参考までに、テストに持ち込んだデータのうち、H.264への変換がなんとか成功した35秒のBS放送フルビットレート(24Mbps)データでは、トランスコードに24秒かかっていた。SDに比べると流石に重いが、それでも実時間以下でトランスコード出来るのは確かだ。