ネットユーザーからは多くの期待も
ポータルサイト「網易(Netease)」の報道によると、アリババが大淘宝網戦略を発表した直後、淘宝網は百度蜘蛛(Baidu Spider)を遮断し始めた。百度蜘蛛はサーチエンジン・プログラムの一つで、インターネット上のhtmlサイトを訪問し、サーチデータベースを構築するもの。ユーザーは百度蜘蛛を介し、百度サーチエンジンにおいてhtmlサイトを検索できる。
百度蜘蛛の遮断は淘宝網にとって不可欠と考えている専門家がいる。百度で勤めた経験を持つコンサルタントの白鴉氏もその一人だ。
白鴉氏は、以下のように述べている。
「第一に、淘宝網はこれまで蓄積してきたユーザー情報などを競合相手の百度CtoCに利用されぬよう努めねばならない。第二に、eコマースのうち、3分の1のネットワーク・トラフィックがサーチエンジンを経由していることは事実だが、馬雲氏は自分のユーザーが競合相手によって網をかけられることを容認できない。ネットショッピングをサーチエンジンから切り外すのはきわめて斬新かつ大胆なやり方。馬氏はユーザーの習慣を変えようとしている」
また、有名ITアナリストの洪波氏は、「百度蜘蛛を遮断することは、淘宝網、そして淘宝網で店舗を展開しているユーザーにマイナス影響を与えるのは確実。一方、百度には、大してマイナス影響はないはず。馬雲氏のこのような姿勢は、改革開放前の中国に通じるところすらある」と述べ、淘宝網に対し、批判的な見解を寄せている。
いずれにせよ、CtoC市場の王者の座を守りたい淘宝網そしてアリババと、サーチエンジンという強力な基盤を武器に、CtoC市場に新規参入してきた百度との間の競合は、大淘宝網戦略を契機に、一気に表面化し、激化することだろう。
ポータルサイトの捜狐網は、淘宝網とアリママとの合併に合わせ、インターネットで調査を行い、計1,554人が回答した。
これによると、「淘宝網とアリママとの合併をどうみているか」の質問に対し、「良い」と答えたのは70.4%、「良くない」は27.4%、「分らない」は21.3%だった。この結果からみれば、大多数の回答者が淘宝網とアリママとの合併、すなわち大淘宝網戦略に期待をかけている。
さらに、「今回、淘宝網とアリママが合併した最大の要因は何だと思うか」との問いに対して、「淘宝網を上場させるため」と答えたのが63.9%、「百度に追撃されているから」が15.8%、「その他」は20.3%だった。淘宝網とアリママの合併を、これまでに何度も話題になった淘宝網の上場の布石とみる人は多いが、百度からの圧力も注目されているわけである。
金融危機の影響を受け、アリババの株価も大幅に下がってきた。中国の経済成長エンジン、とくに輸出や個人消費が減速し始めている。このような背景の下、淘宝網とアリママの合併からスタートした大淘宝網戦略は、上場するためにせよ、競合相手からの挑戦に応じるためにせよ、いずれにしても、万事が前途洋々とはいかないだろう。
「IT業界の武侠」と呼ばれる馬氏と彼が統率するアリババグループを、厳しい試練を待っている。