α700から変更されたクリエイティブスタイル

カラー調整機能のクリエイティブスタイルはα700から若干変更された。α700では全14種類のモードのうち、メニューには「スタンダード」、「ビビッド」、「ニュートラル」、「AdobeRGB」の4つと、変更可能な3つ、計7種類が表示されていた。α900は6種類が表示されるが、この全てが好みのものに割り当てられる。これに伴い、微調整パラメーターも全モードで明度とゾーン(白飛びや黒つぶれを防ぐパラメータ)の調整が可能になった。もちろんコントラスト、彩度、シャープネスも調整できる。

またα900のクリエイティブモードは13種類に減ったが、これはAdobeRGBが独立したため。これまでのαシリーズではAdobeRGBがクリエイティブスタイルの1モードとして用意されていたが、これは使い勝手が悪かった。例えば「ビビッドにAdobeRGBで撮影したい」と思っても、設定できないことになる。α900では撮影メニュー内の「色空間」という独立したメニューに移され、あるべき姿に戻ったといえる。

クリエイティブスタイルはメニューに表示されるのは6つだが、全て好みのものにカスタマイズ可能となった

クリエイティブスタイルを選んで十字キーの右を押すと、全12種類から選べるほか、明度や彩度、コントラストなども調整できる

色空間はクリエイティブスタイルから切り離されて撮影メニュー内に用意される

クリエイティブスタイル(CS)を変更して撮影した。左からCS:スタンダード、CS:ビビッド、CS:ニュートラル。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+X.FINE(JPEG) / 35mm / ISO 200 / プログラムAE(F3.5、1/50秒) / 分割測光 / WB:オート / CS:スタンダード]

CS:ポートレート

CS:風景

CS:白黒

青空の色を比較した。左から、CS:スタンダード、CS:ビビッド、CS:ニュートラル。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+X.FINE(JPEG) / 35mm / ISO 200 / プログラムAE(F10、1/125秒) / 分割測光 / WB:オート / CS:スタンダード]

CS:ポートレート

CS:風景

彩度の高い被写体をクリエイティブスタイルの各モードで撮影した。中央は、赤い部分のヒストグラムを比較したもの。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+X.FINE(JPEG) / 35mm / ISO 200 / マニュアル(F13、1/60秒) / 分割測光 / WB:6200K / CS:スタンダード]

左のテストを行った各モードの白丸内のヒストグラム。風景や紅葉、ライトでは赤の階調を飛ばしているが、ビビッドでは赤を残す設定になっている

紅葉の色がどのように写るか?

今回、テスト撮影の時期が秋ということもあり、クリエイティブスタイルの「紅葉」が「風景」や「ビビッド」とどう違うのか、実際の紅葉を撮り比べてみた。パソコンに移してチェックしたところ、3モードとも赤と緑成分を暗くした近い絵作りがされているようだ。しかし細部を見ていくと、「風景」と「紅葉」ではより輪郭が強調されている。また「紅葉」ではわずかだが黄色を強くしているようだ。そのため、葉の黄色は鮮やかになり、僅かだがその影響を受けて空がややくすんだ色になる。

クリエイティブスタイル「スタンダード」で撮影。全体的に黄色が強く赤が弱い、やや空がくすんでいる

「ビビッド」になると、赤と青がやや強くなっている。空の青みも増した

「風景」では、シャープネスが強くなっているようだ

「紅葉」にすると、やや黄色が強くなった。ヒストグラムでは緑の山が若干右に動いている

それぞれのヒストグラムを比較した。「ビビッド」と「風景」ではスタンダードに比べ、赤と青が強くなっているがヒストグラムはほとんど同じ。「紅葉」になるとわずかに緑の山が右に動いている

すさまじい効果のDレンジオプティマイザー

階調補正機能も、最近は多くのカメラに搭載されるようになり、珍しい機能ではなくなってきた感がある。α700の時にもDレンジオプティマイザー(以下、D-R)には驚かされたが、α900では分析能力がさらに進化、補正能力が向上しているという。そこで、逆光で比較撮影を行なうことにした。わざとフレーム内に直射光を入れ、木陰から光を見上げるようにフレームした。

D-RがOFFでは真っ暗になっていた木の肌が、スタンダード、オートとレベルを上げていくに従い、徐々に明るくなってくる。アドバンスドレベル補正では、おもしろいように色が乗り、最大レベルのLV5で撮影したものはまるで巨大なレフでも当てたかのような絵になった。今回は、α700のテストの時よりも直射光を多めに入れて撮影しているため条件は悪くなっているはずだが、以前よりも効果は大きくなっているようだ。ここまでの絵が撮れるのであれば積極的に逆光で写真を撮りたくなってしまうほど。撮っていて楽しくなってしまった。

Dレンジオプティマイザー(D-R)の設定を変えてテストを行った。中央は切、右はスタンダード。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+FINE(JPEG) / 24mm / ISO 200 / プログラムAE / 分割測光 / WB:オート / CS:スタンダード]

D-R:アドバンスオート

D-R:アドバンスト Lv1

D-R:アドバンスト Lv2

D-R:アドバンスト Lv3

D-R:アドバンスト Lv4

D-R:アドバンスト Lv5

明るさを変えてマクベスのチャートを撮影し、各色の明度を拾い出した。中央はD-R「切」、右は「スタンダード」。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+X.FINE(JPEG) / 70mm / ISO 200 / マニュアル / 分割測光 / WB:マニュアル / CS:スタンダード]

D-R:アドバンスオート

D-R:アドバンスト Lv5

期待以上の色で撮影できるカメラ

元々αシリーズは、色乗りが非常にいい傾向がある。デジタル一眼レフでは、実際の色よりも空の色がくすんだように感じられることが多く、撮った写真と実物の被写体を比較してみても、色の乗りが浅く感じる経験をした人も多いだろう。しかし、αシリーズの場合は撮影した画像を見ると「えっ?こんなに空が青かったっけ?」というくらいに色が乗ってくる。スタジオ撮影などでは、色は忠実に写っていなければいけないものだが、レタッチを前提とせずに撮影する一般的な用途なら、思った通り以上の色で撮影できるα900は撮影していて楽しくなるだろう。

抜けるような青い空と紅白のクレーンがとても鮮やか。これがαの発色だ。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+FINE(JPEG) / 24mm / ISO 200 / 絞り優先、補正+0.7EV(F11、1/640秒) / スポット測光 / WB:オート / CS:スタンダード]

日が傾いてきたころに停泊中の船を撮影。マストのオレンジがやや不自然になってしまった。[50mm F1.4 / L+FINE(JPEG) / 50mm / ISO 250 / 絞り優先(F13、1/200秒) / 分割測光 / WB:太陽光 / CS:ビビッド]

シャボン玉ごしに見える景色が幻想的だった。[Vario-Sonar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM / L+FINE(JPEG) / 70mm / ISO 1600 / 絞り優先、補正-1.3EV(F3.5、1/8000秒) / 分割測光 / WB:オート / CS:ビビッド]

都内のビルから望む夕焼けをクリエイティブスタイル「夕景」撮影。手前のビルではまだ忙しく仕事をしている。[50mm F1.4 / L+FINE(JPEG) / 50mm / ISO 800 / 絞り優先、補正-0.3EV(F4.5、1/30秒) / 分割測光 / WB:オート / CS:夕景]