――Adobe Creative Suite 4では「作業の簡素化、効率化」が大きなテーマになっていますが、どこまで実現できましたか?

 「『なぜCS4にここまで時間の削減に関する機能が必要なのか』と思われるかもしれませんが、デザイナーの時間を考えたとき、ソフトウェアでの作業時間を減らせばクリエイティブな時間を増やすことができると考えたからに他ありません。私たちが『いかにクリックの数を減らすか』、『いかにステップの数を減らすか』という部分に注力すれば、デザイナーは1時間でも早くデザインを仕上げられるかもしれません。さらに、創出された時間でよりリッチなコンテンツを生み出すことができるかもしれない。他の新しいメディアに挑戦する余裕も生まれるかもしれない。私たちの使命は、デザイナーのクリエイティビティをシームレスなものにするということなのです。今回のバージョンアップで『時間を短縮する→考える時間ができる→新たなメディア展開を考えられる、創造できる』という展開が生まれるのではないかと期待しています」

――新機能としては「コミュニティ機能」もユニークです。これは、どのような意図で生まれたのでしょうか。

 「この発想は、『人と人とがつながっている』というWeb2.0から生まれています。コンセプトの基礎はAdobe Creative Suite 3の段階であったのですが、Adobe Creative Suite 4で具現化して搭載することができました。デザイナーは、インスピレーションが必要なときお互いを助け合って仕事をしています。たとえば、Webサイトの構築では他のデザイナーがどんな仕事をしているか、カラーのコンビネーション、テーマは?と情報交換しているものです。こうした同僚や仲間の活動を共有できるとしたら、素晴らしいことですよね。アドビとしては、デザイナーが私たちのツールの中でつながっていく世界を作りたいと考えています。使い方が分からなくなったときも、これまではヘルプやWebで情報を調べるしかありませんでしたが、Adobe Creative Suite 4では同僚や仲間からのアドバイスをオンラインで得ることができます。Adobe Creative Suite 4は、出荷時に新鮮なソフトウェアであるというだけでなく、常にお客様自身によってアップデートされていくソフトウェアなんです。次期バージョンの企画もすでにスタートしていますが、この機能についても次のステップに進む予定です」

――では、突然なくなってしまう機能ではないということですね?

「もちろんです(笑)。オンラインコミュニティ機能は、デザインの工程において革新的な機能だと考えているので、継続し、発展させていきます。さらに付け加えるならば、オンライン機能の拡充はあらゆるサービス、機能を包括する事象だと思うんですよね。私がこの業界に携わった20年前は、クライアントに何か見せようとしたら印刷して車で運んで、あるいは郵送してと時間の掛かる手段しかありませんでした。しかし、Adobe Creative Suite 4では2クリックでプライベートなオンライン会議を開き、リアルタイムで打ち合わせすることができます。技術的には、根本的な革新がすでに起きているんです。これをデザイナーにより使いやすい形で提供することが、私たちに課せられた使命だと考えています」

――ソフトウェアのバージョンアップが続けば、機能の分かりやすさとプロユーザーが求める専門性の高い機能の両方が求められます。両者のバランスはどのように考えられていますか?

「私たちが時間と労力を掛けて考えることは『シンプルで親しみやすく、同時にパワフルであること』です。時々勘違いされるのですが『パワフルだ』と説明すると『コントロールが多い』と思われることがあります。しかし『パワフルでコントロールが多い機能』はお客様に望まれる機能ではありませんし、日常的な仕事の中でよりパワフルな機能が求められるかというとそうでもないわけです。今の仕事の90%を簡単にする機能のほうが喜ばれるわけですね。使いやすさと目を引く大きな機能という2つのポイントがあったとき、それぞれは補完しあう関係にあると言えます。実際には『新しい機能を習得する時間はない』という方も多いですしね。バランスとして考えるのは『大きな新機能が欲しい』、『小さなことで良いから日常の作業を効率よくできるようになりたい』という相反する2つのニーズを洗練された形で搭載することです。Adobe Creative Suite 4では、これがうまく実現できたと思います」