CEATEC JAPAN 2008にて、米AMDからグラフィックス製品グループ担当上級副社長兼ゼネラル・マネジャーであるリック・バーグマン氏が来日し基調講演を行った。10年間グラフィックの分野を担当しているという同氏は、「すばらしい表現、コンピューターグラフィックが出てきたが、ほかにもっと(グラフィックで)できるものがあるのではないか」と問いかけ、「まだやらなければならないことはたくさんある」と語り始めた。

グラフィックス製品グループ担当上級副社長兼ゼネラル・マネジャーのリック・バーグマン氏

リック・バーグマン氏は、「HDはどこにでもある」としてテレビ、プレーヤー/レコーダー、コンテンツ、ビデオカメラ、ブロードキャストにゲームなどを挙げ、HDへのシフトがPCのみならずもっと広範囲なトレンドであることを訴えた。そのうえで、自社のHD対応製品の機能を詳しく紹介していった。まずはGPUに統合されたビデオ再生支援・高画質化機能のUVD2.0。ブルーレイビデオをCPUのみで再生した場合と、UVD2.0(GPU)で再生した場合、さらにそれぞれピクチャ・イン・ピクチャ映像を再生した場合とでCPU負荷を示したグラフを紹介し、大幅にCPU負荷を軽減できる点をアピール。そのほかDVDのアップスケーリング技術によりSD画質のDVDがよりシャープに精細に楽しめる点を紹介した。

生活の至る所でHDが始まっていると紹介

AMDはHDに関わるグラフィック関連製品を積極的にリリースしている

ブルーレイ再生時におけるCPU処理とUVD2.0処理とのCPU使用率の違いを紹介

UVD2.0ではDVDのアップスケーリングを可能としており、SD画質のDVDがHD品質で視聴できる

これに「もうひとつ」として加えたのがトランスコーディングだ。GPUのコアとなるストリームプロセッサを、グラフィックス処理以外にも汎用的に利用するGPGPUの技術を用いたものである。ここで例に挙げたのが長さにして1時間の1080pブルーレイ映像のトランスコーディング。3.16GHz駆動のデュアルコアプロセッサをもってしてもトランスコーディングに要する時間は9時間54分であったが、これに対し同じCPUとATI Radeon HD 4800を搭載した構成でGPUによるトランスコーディングをした場合、32分という約18倍の短縮が実現したというデータを示した。

1時間の1080p HD映像のトランスコードに、CPU処理では9時間54分で、対するGPUでの処理は32分

そのほか、ほとんどのPCユーザーが利用しているチップセット統合グラフィックスでも、同社のAMD 780Gチップセットが3D性能だけでなくHDビデオ再生性能においても優れた性能を持つことなどをアピール。さらにこうした高い性能を幅広い分野で利用するための取り組みとして、日本AMDが国内のハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダー、そしてコンシューマエレクトロニクス分野のメーカーとともに進める「AMD HD! エクスペリエンス」も紹介した。

AMD 780Gチップセットの3D性能、HDビデオ再生性能を紹介

HD性能を様々なシーン、様々な機器で活用する取り組みも紹介

GPUの本来の使われ方であるゲームグラフィックスに関しては、2008年に登場したDirectX 10.1、および同社最新GPUでサポートするテッセレーション機能、そしてGPGPUを非常に重要なアップデートとして紹介した。DirectX 10.1に関しては、対応タイトル「BATTLE FORCE」「S.T.A.L.K.E.R.」のデモを、テッセレーションに関しては画質やパフォーマンスを向上する機能として、GPGPUに関してはゲーム中に登場するNPCの行動をよりリアルに、ゲーム自体をよりインタラクティブにできると解説した。

DirectX 10.1に対応したタイトルも登場してきている

テッセレーションはよくAMDが同社GPUの優位性を語る際に紹介される機能

GPUを用いたAI処理はグラフィックというよりはインタラクティブ性やリアル感を演出するもの