聞き取りやすさを重視したチューニング

ヘッドフォン部分は開放型で軽く、周囲の音も聞こえてくる。モバイル用途では自分の回りの状況も気になるので、この選択は正解だ。音を聴いた第一印象は"高音重視"。もともと開放型ヘッドフォンは音がこもりにくく、低音が苦手で高音がよく聞こえる。それにしてもLX-2000は高音を重視しているようだ。ボイスチャットをしていると、言葉の1つ1つが明瞭に聞こえる。とくにサ行とタ行の子音が強く、ぼやけて曖昧になりがちな鼻濁音もクッキリしている。不明瞭に聞こえて相手に聞き返すということもほとんどなかった。

ちなみに筆者は耳鼻科で「鼓膜が一般の人よりも奥にある」と指摘されており、健康診断では正常だが、やや難聴ぎみである。そのためスピーカーやヘッドホンの音量は少し大きめだ。その音量でも子音部が割れず、雑音も乗らなかった。ゆえに、普通の聴力を持つ人は音量を大きくしなくても会話が聞き取りやすいと感じるだろう。

しかし、会話の聞き取りやすさに特化した高音重視チューニングは、音楽鑑賞にはまったく不向きな性能である。もともと開放型は低音を苦手としているけれど、それを割り引いても音楽を聴きにくい。ジャズ、ポップス、演歌、クラシックなどを聴いて見たけれど、とにかく高音が強調され、低音は消えて耳障りなサウンドになる。これはゲームのBGMについても同様で、RPGなどを長時間遊ぶと疲れやすい。ただし、高音重視の特性はFPS(一人称視点射撃)ゲームには都合がいい。敵の靴音や銃声が強調されるため、敵の位置を察知しやすいからだ。特にチーム戦のオンライン対戦ではボイスチャットも併用するため、会話の聞き取りやすさは重要だ。それでも残念なことに、LX-2000の高音特性は強すぎて長時間の戦闘には辛い。皮肉だが、ゲーム専用ヘッドホンの調整の巧みさを再認識した。

以上のことから、LX-2000はオールラウンドなヘッドフォン & マイクではなく、テレコミニュレケーション専門にチューニングされたヘッドセットだと言える。つまり、LX-2000は「高性能な電話機」だ。オーディオ用ヘッドフォンやスピーカーでは会話を聞き取りにくい、という場面で本領を発揮するツールである。

モバイルユースを開拓する意欲作

LX-2000のユニークなところはもう1点、折りたたみ可能としたことだ。しっかりとした布地の巾着袋式ケースが同梱されており、LX-2000を折りたたんで収納できる。ヘッドセットを持ち運ぶという発想は斬新だが、これは納得できるアイデアだ。なぜなら、モバイル環境のボイスチャットは今後、かなり重用されると予想されるからだ。

外出先での会話なら携帯電話で充分だと思うけれど、最近は無線LANを使える場所が増えている。海外出張の場合は国際電話料金やローミング通話料金が高額だから、インターネットを経由したボイスチャットのほうが安く済む。国内もビジネスホテルはLAN接続無料が基本的なサービスとなりつつあるし、ファーストフード店にもアクセスポイントがある。東海道新幹線も来年から走行中の車内無線LANサービスが始まる。もちろん店内や車内でのボイスチャットは遠慮すべきだろう。しかし、次世代高速無線通信がサービスインすれば、様々な場所でボイスチャットやSkypeなどの電話接続がやりやすくなるはずだ。そんなときに「携帯ヘッドセット」LX-2000のコンセプトが活きてくる。

髪の乱れが気にならないネックバンド。耳の加重を減らすためか、かなり軽量化されている

LX-2000が採用したネックバンド型は、ヘッドバンド型に比べてヘアスタイルを気にする必要がなく、帽子をかぶっても使える。また、モバイル時の使用を考えると外見が目立ちにくいこともメリットだ。ただし、折りたたみ構造とネックバンドの組み合わせは不利な点もある。ネックバンドは首の後ろに装着するため、ヘッドバンドに比べると落ちやすい。ゆえにネックバンドタイプは、ある程度バンドを硬くして頭をしっかり挟む、あるいは耳にフレームを引っ掛けるというスタイルになる。

LX-2000では後者の「耳に引っ掛ける方式」が採用された。そして耳への負担を減らすためにバンドを細くして軽くした。ここまでは良いけれど、折りたたみ構造とするためにフレームに可動部を付けた。ゆえに装着時に不安定感が出てしまった。これが唯一の残念なところだ。せめて可動部分を固定する仕掛けがあればよかった。また、眼鏡を使っている人にとって、耳にフレームを引っ掛ける構造は眼鏡のそれと干渉する場合があることも留意されたい。

幅広い音域のうち、不要な部分を落とし、会話を重視した音質については高く評価できる。モバイル利用のスタイルと携帯性を考慮して、ネックバンドと折りたたみを両立させようとしたことも意欲的だ。これで保持の安定性について改良されたら、モバイルテレフォニー環境のベストチョイスとなるだろう。この音質は音楽には適さない。しかし、このタイプのヘッドセットはオールマイティである必要はない。なぜなら「会話を聞き取りやすくし、聞き間違いによるトラブルを防ぐ」という大事な任務があるからだ。映像や音楽鑑賞用に特化されたヘッドホンを持っている人が、ボイスチャット専用として選ぶ。LX-2000はその意味でプロ志向だといえよう。