昆虫を中心とする自然写真の第一人者、海野和男さんは少年の頃から大の昆虫好き。大学では昆虫行動学を学び、学生時代に研究発表した写真『スジグロシロチョウの交尾拒否行動』が雑誌に掲載されたのをきっかけに、フリーランスの写真家の道へ進んだ。卒業後は1年のほぼ四分の一をアジアやアメリカを中心とした海外の熱帯雨林地域で撮影取材を行うなど、明けても暮れても昆虫と向き合う毎日を続けている。そんな海野さんに、カシオのハイスピードデジタルカメラ「EXILIM PRO EX-F1」で撮る昆虫写真の楽しさや撮影テクニックを語ってもらった。

フィルムからデジタルへ

海野さんがフリーの写真家を目指した頃はまだフィルムカメラ全盛の時代。そんな時代にあってどのようなきっかけでデジタルカメラを昆虫撮影に使おうと思ったのだろうか。

海野和男(以下、海野):「初めてデジタルカメラを仕事で使ったのは1998年の秋。雑誌の仕事で沖縄での撮影に臨んだのですが、撮り始めていきなり1枚目にいい写真が撮れたんです。海をバックにチョウが飛んでいる写真でしたが、デジカメは撮像素子が小さいため被写界深度(手前から奥までピントの合う範囲)が深く、チョウの撮影には打ってつけだったんですね。この沖縄での撮影が実に楽しくて、今後はデジタルカメラで行こうと決心したんですよ。当時はフィルムカメラに比べると、まだとても使いづらかったけど、"これからはデジタルの時代だ"と確信したんです」

1998年というと、まだ100万画素クラスのデジカメが10万円以上した時代。またインターネットも発展途上で、デジタル画像を扱うには何かと不自由だった頃だ。

海野:「実は、作品撮りをデジタルに移行したのがやや早過ぎたため後悔している部分もあるんです(笑)。1999年から2002年くらいまでの作品に関しては画素数不足などでデジタル画像の完成度が低く、物足りないのが残念ですね。また、デジタルカメラを使用し始めたのと同時期に自分のWEBサイトを作ったのですが、当時は640×480ドットのVGA画像を1分かけてやっと1枚送り込むほど時間がかかり苦労しました。1999年2月からは撮った写真にコメントを付けて掲載する『小諸日記』というコンテンツもWEBサイトに新設。読者から反応があるのも面白く、海外で撮影しているときでも現地で遅い通信環境と戦いながら、ほぼ毎日更新を続けてきています」

カシオ「EX-F1」との出会い

そんなデジタルカメラに造詣が深い海野さんは、EX-F1のユニークな機能に発表時から注目。3月の発売が待ちきれずに、カシオへカメラの貸し出し依頼をしていたそうだ。EX-F1の高速連写や、ハイスピードムービーなどの機能はすでに報道関係を通してリリースされていたが、昆虫写真家にとってEX-F1のどんなところに期待を寄せていたのだろうか。

海野:「EX-F1で一番興味を持ったのは1秒間に最高1200フレーム撮れる『ハイスピードムービー』ですね。ボクは以前からハイスピードムービーで昆虫の生態を撮って子供たちやテレビなどで紹介していたんです。ただ、250フレーム/秒のカメラでも1日のレンタル料金が約7万円、業務用を購入するとなると500万円近い出費が必要になるなど経費面で問題があったんです。EX-F1は本体価格がわずか10万円程度という低価格でハイスピードムービーを実現したうえに、フルハイビジョンの撮影もできるからすごいですよね」

昆虫好きに限らず一般のアマチュアカメラマンにとっても、高価な機材を使わずに特殊な分野の撮影が可能になったと言うことだろうか。

海野:「EX-F1は、一般の人々の撮れる世界を広げたと言ってもいいでしょうね。プロが業務用カメラで撮影するような写真が、誰にでも撮れるわけですから。EX-F1を使えばアマチュアカメラマンでも特殊な分野の写真やムービーが撮れるということになれば、昔から苦労して撮ってきた写真家としては困ったことですけど(笑)」

実際に撮影をしてみて、海野氏自身は、EX-F1のどんな機能に面白みを感じたのだろうか。

海野:「最初は手ごろな価格で、これだけきれいな画像が撮れるハイスピードムービーに興味を持ったのですが、実際に使用して、特に便利だと感じたのはシャッターを押す前の画像が記録される『パスト連写』ですね。この機能を使えば、シャッターが少し遅れてもシャッターチャンスを逃がすことがないので重宝しています。また、ムーブアウト連写やムーブイン連写などユニークな機能がたくさん用意されているのもEX-F1の魅力ですよ」

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