「拡張に伴って投資する」アプローチへの転換

SASコントローラ・デバイスは可用なSASポートの数という点では拡張性に限界がある。カスタマは実際に必要なポート数の分だけ費用を投資したいと考えており、もっとも基本的なコントローラ・デバイスは、コントローラ1基当たり4~16ポートまで提供する。

SASアーキテクチャをSASコントローラ・チップのネイティブなポート数以上に拡張する場合、SASトポロジの拡張にエクスパンダと呼ばれるデバイスを使用する。

SASは多層ストレージ環境に対応するためにトポロジを拡大することが可能

エクスパンダ製品は、通常12~36の追加ポートを提供する。追加ポートはカスケード式にエクスパンダをつなげることで追加することができる。エクスパンダはサーバ内や(JBODなどの)ストレージ・エンクロージャ内に置くことも、あるいはより大規模なストレージ・アーキテクチャ内のスタンドアローンのスイッチエレメントとすることもできる。基本、SASコントローラもしくは1チップRAIDの許容出力数を超えるものはすべて「SASファブリック」を構成することになる。

カスタマはストレージ容量拡張のニーズに従ってSASポート数の追加分だけ支払いながらSASトポロジを拡張することができる。この「拡張に伴って投資する」アプローチは、ローエンド市場で不必要なアーキテクチャ投資を課すことなくクライアント企業のニーズに沿ったトポロジと「ファブリック」の柔軟な成長を提供し、SASの市場浸透を支援することとなる。

密度:SFF高密度ケーブル配線のソリューション

SASと同時期に、極度に高密度なストレージ・ソリューションを生むいくつかのトレンドが見られた。共通のサブストレート上に複数の高速シリアルポートをコスト効果の高い方法で統合する能力が、シリアル技術の一般的な方向性として現れ始めたが、SASはこの能力を最大に活用した最初の業界標準の1つと言える。

消費電力、サブストレート上のノイズ、I/Oパッド密度などが主たる制約になってコンポーネントメーカーは単一ダイの上に複数の高性能、並行データストリームを載せることができなかった。

しかし半導体技術の進展と長年のファイバ・チャネルのコントローラ設計から得たノウハウにより、8ポート、3Gb/sの全二重SASコントローラが1チップ上で48b/sのI/Oスループットを実現することができた。そしてこれには高性能のPCIエクスプレスのインタフェースが含まれていない。従ってこの可能性を残しながら、SASはこの最新の能力をフルに活用できるタイミングで登場したことになる。

こうした統合機能と新世代のコネクタやケーブルを組み合わせることにより、適度に細く柔軟なケーブル配線で最大4つの同時リンクまでサポートしながら、システム内に大幅に改善されたエアフローを確保できるマルチプルSASポートを実現できるようになった。

このミニSASスモール・フォーム・ファクタ規格(SFF)は、内部および外部に多数のポート数をもつSAS接続を要求する高密度ストレージ・プラットフォームのためにスペース効率の優れたソリューションを提供することとなる。

しかし、SASがもたらした最も重要なトレンドは、やはり3.5インチのディスクドライブから2.5インチのスモール・フォーム・ファクタ(SFF)ドライブへの移行であろう。この移行により、前例のないまったく新しいクラスのエンタープライズ用ストレージが可能になったからである。

1Uサーバのフォーム・ファクタでRAID 6 をサポートする性能や、3Uのラックに20個を超えるドライブを搭載を可能にする性能は、システム全体の外寸の劇的な小型化、ストレージ展開モデルの効果的な改善、必要とする床面積や電力消費量の削減などの重要な役割を果たした。

これらを総合すると、この新しいソリューション密度パラダイムは市場を予期しがたい方向に変化させており、そのすべての影響の全貌はまだ明らかになっていない。

しかし、はっきり分かっていることはダイレクト・アタッチド・ストレージ(DAS)のモデルが復活したことであり、その大きな原因が統合/小型化のトレンドであったこと、そしてSASの登場によって普及してきたことである。