より多くのドライブ、ワイドポート、高スループット、IOPSへの拡張

以上、SASがもたらした数多くの変化を見てきたわけだが、性能も少なからず向上した。

SASは新世代PCIで使えるようになった帯域幅を有効に使用し、必要なポート数以上のポートを提供して標準システム接続規約の限度まで完全に供給するが、これはコントローラを追加ポート数に合わせてスケールアップするか、もしくはコントローラカードを追加ポート数だけ挿入するだけで行うことができる。

加えて、SASは、「ワイドポート」という機能を使用してこれらのマルチポート・コントローラの帯域幅を合算するという固有の性能も持ち合わせている。

SASでは、複数のポートを何個でもロジック的に組み合わせて、アプリケーションの需要に合った帯域幅まで拡張された仮想高速伝送路を実現することができる。この機能は、多数のエンタープライズ・ドライブを拡張したい場合や、高い帯域幅を必要とするストリーミング・アプリケーションのスループットが最重要な場合に、システム性能を確保する大変重要なものである。

従来のエンタープライズ系のシステムでは小さなブロックI/O性能を重視してきたが、新登場の方式では非定形のデータをますます大量に扱い、I/Oスループットが今後さらに重要な課題になってゆく。データベースへの検索要求や交換サーバなどのアプリケーション環境ですらI/Oスループットによって性能が制約される可能性がある。SASはこうしたシステムのボトルネックを事実上粉砕し、こうした帯域幅を強く求めるアプリケーションを最後のPCIスロットまで使い切ることなく拡張することが可能とする。

この拡張は小さなブロック性能の改善にも役立つ。「ショート・ストローク」のディスク装置を好むカスタマは、しばしば作動装置が同時にいくつ動作できるかで性能が制約されることとなる。SASはSFFのドライブの大きなグループに対して無数のI/Oを起動することができ、ドライブ装置を並行に動作させる機能を使うことにより、処理件数の多い環境でのI/O性能を大幅に改善することができる。

ワイドポート、SFFの密度とほとんど無制限の拡張性に支えられた複数のドライブ、それに高いロースループットが組み合わさったSASは、広く一般に可用な最高の密度と最高性能を持つストレージ間接続である。そしてこれらの成長するアプリケーション環境に対する市場の需要によりさらに広い分野でSASの採用が推進されることとなるはずである。

6Gb/s SAS:SASをエンタープライズ用に強化する

このような際立った特徴に支えられ、SASは主流のサーバ市場でパラレルSCSIを凌駕するに足る能力を備え、SASの訴求力ある新機能セットをいち早く取り込む高性能アプリケーション環境をすでに視野に捉えている。

しかしストレージ市場が成熟するにつれて、少ないコストで多くを実現するニーズもまたSASへの要求として求められた結果、仮想化、より堅牢なデータ保全方式、より優れた操作性、より大きな拡張性などの新しい市場トレンドをサポートする新機能が求められている。

こうした要求への対応なくしては、SASの利便性は限定され、エンタープライズ分野でのさらなる普及が難しくなるだろう。そこで規格作成のグループは、オリジナルのSAS資料を若干整理した後で、SASへの投資がエンタープライズ分野にもっと深くてこ入れされるような方向にSASを改良するよう、作業を開始した。

(後編に続く)

著者プロフィール
Harry Mason(ハリー メイソン)
SCSI Trade Association (STA) のPresidentならびにLSIのIndustry Marketing Director