オーディオビギナーである新人編集者の吉田が、世界にひとつだけのオリジナルスピーカーを作ることができる、ビクターの「ウッドコーンスピーカー組み立て教室」にチャレンジ! 簡単に作ることができるハンドメイドキットを使って、まっさらな木箱から、楽器のような美しい音色の本格派スピーカーに完成するまでの様子を、あますところなくレポートする。

デジタル音楽プレーヤーが主流となっている昨今。イヤホンのデザインにもこだわりを持つ人が増えてきている。スワロフスキーを散りばめたものからモチーフを配したものまで、小技の効いたアクセサリー感覚のイヤホンが、若者の間で人気を得ている。大切な音楽ライフだからこそ、外出先だけではなく、家で聴く時でも妥協はしたくないところ。デジタル音楽プレーヤーもいいが、レコードのような温もりのある音が活かされるようなスピーカーにも興味が沸いて来た。「デザイン」も「音質」も良い、そんなスピーカーを探していたところ、ウッドコーンスピーカーに出会った。なんでも、スピーカーが楽器のような音色を奏るのだそう。しかも手作りキットだけあって、キャビネットも自分で仕上げるのだという。さっそく、ビクターのウッドコーンスピーカー組み立て教室に参加することにした。

初心者でもサクっとできる、本格派のウッドコーンスピーカー

スピーカーのボディとなるチェリー無垢材

まずは組み立て方の説明

オーディオの仕組みなど、まったくと言っていいほどわからない私が本当にスピーカーを作れるのだろうか。そんな心配をよそに、製品の企画開発などに携わった技術者の尾形さんと高田さんがアットホームな雰囲気で登場した。「ここで顔をあわせたのも何かのご縁ですから、みなさんでワイワイと楽しみながら作っていきましょう!」とご挨拶。ウッドコーンスピーカーとは、スピーカーユニットのなかで音を発する振動版の素材に「木」を使ったもの。世界初の技術だそうで、従来使われている紙やプラスチック素材とは違い、ピアノやヴァイオリンのように伸びやかな響きを持った"楽器"のようなものだという。興味深い話に活気づく会場。講師のアットホームな雰囲気も手伝って回を重ねるごとに、男性だけでなく私のようなビギナーの女性やカップルでの参加が増えているとのこと。すぐに定員枠が埋まって、キャンセル待ちになることもあるほどの盛況ぶりだ。今回、私が組み立てた「SX-WD1KT1」はシンプルな作業でウッドコーンの音色を手に入れられるハンドメイドキット。ハンダ付けなどは一切不要、クラフト感覚で作れる初心者にはうれしい内容となっている。ここでは木製キャビネットの塗装と、好みの音に調整する吸音材の量が重要なポイントとなってくる。さらに、じっくりと作業できるタイムスケジュールになっているので、納得のいくまでとことんスピーカー作りに没頭できそうだ。

ビクター犬がお出迎え

ウッドコーンスピーカーの完成品

マニキュアと同じ!? 女性にもできる簡単塗装術

さっそく自前のエプロンをつけて、スピーカー作りスタート! まずは、ダンボールの箱を開けて中身を取り出す。あらわれたのは、ふたつの白い木箱。これはスピーカーの本体となる「木製キャビネット」らしい。キャビネットの表面がザラザラしているので、木目に沿って丹念にサンドペーパーでこすっていくことに。荒目で木の表面にある凹凸を削り、目の細かいサンドペーパーで仕上げていく。そういえば、この作業どこかでやった覚えがあるような気が。ひょっとして……爪磨き!? マニキュアを塗る前の下準備として、爪の表面を研磨する工程と同じだ! そう気づいてからは、だんだんと手つきもさまになってくる。そんな矢先、勢い良くこすり過ぎたのか表面に小さなキズが発生。「まだ修正はいくらでもできますよ! できれば、赤ちゃんの頭をなでるように優しく撫でてあげてくださいね」とのアドバイスをもらい、ソフトタッチで磨いていくことに。すると、あっという間にベビースキンのような心地よい手触りに。プロに聞くと、仕上がりにかなり違いがでてくるものらしい。

サンドペーパーの使い方から丁寧に指導してくれる

ササっと軽やかにサンドペーパーをかける高田氏

下準備ができたら、いよいよ塗装の工程へ。白のキャビネットに好みの色付けができる「オイルステイン」を塗っていく。加減が分からずにたっぷり塗ったところ、案の定、ヨレて色ムラができてしまった。どうすれば綺麗に仕上がるのかと、助けを求めたところ「愛情を持って作業すれば、ひとつひとつの作業も慎重になって、自然と良いものが出来ますよ」と答える高田さん。確かにスキンケアをする時も、気持ちを込めて丹念にお手入した日は、潤った肌になっているものである。意外な共通点を発見して親近感が沸いたおかげか、キャビネットは温かみのあるキャラメル色に仕上がっていった。ついついのめり込んでしまったが、ふとキャビネット全体を見渡したところ、多少だがキズや塗りムラが残っていた。ここでがっかりしてしまうところだが、愛着の湧いたキャビネット。こんな未完成なところもさえも、愛しく見えてくる。こういったところも「手作りの醍醐味ですね」と尾形さんは語っていた。

オイルステインを塗った後はひたすら磨く

7回ほど塗り重ねていくと深みが増す