電子辞書といえばカシオのEX-word(エクスワード)が定番となっている。2007年1月~12月における国内販売台数(GfK JAPAN調べ)はカシオ製品が55%。昨年にくらべ2%の伸びを示しており、2位のメーカー(27%)に大差をつけ独走態勢を固めている。市場で支持され、進化を続けるEX-wordの2008年モデルの魅力、特徴についてEX-wordシリーズの開発に長年携わってきた成木氏、大島氏に聞いた。

左:成木由紀夫 氏(開発本部コンシューマ統轄部第二開発部第20開発室室長)
右:大島淳 氏(開発本部コンシューマ統轄部第二開発部商品企画室リーダー)

お客様の声でモデルを充実させたEX-word

--カシオの電子辞書にはたくさんのモデルがありますが、このような状況になった経緯を教えてください。

成木:EX-wordシリーズとしてリリースした1号機は1996年の「XD-500」というペンタッチタイプのモデルで、手書き入力は未対応でした。しかし、英単語はやはりキーボード入力の方が早いということもあり、大画面という特徴をおさえつつ入力方式をキーボードに変えて1999年に発売したのが「XD-1500/XD-1000」。当時は半導体の容量も小さくかつ高価だったため、ジーニアスの英和、和英辞典だけを収録した製品でしたが、大画面と操作性のよさから、多くの方の支持をいただきました。これが今のEX-wordの原点となっています。

徐々に進化してきたEX-wordシリーズ
(左から順に、XD-500、XD-1000、XD-S3000、2008年モデルのXD-SP6600)

大島:その後市場を開拓していくうちに、それぞれのお客様にそれぞれのニーズがあることが分かってきました。お客様の声を反映しながら商品を毎年ブラッシュアップして現在に至っています。2001年には英英辞典を加えた大学生向けを、2002年には古語辞典を収録した高校生向けを出し、2003年には中国語やドイツ語・フランス語などの外国語辞書を収録したモデルや、最近では医療関係者向けに医学専門辞典を収録したモデルなど、お客様のニーズにあわせた商品を幅広く展開しております。

--では2008年モデルの特徴についておしえてください。

成木:2008年モデルの大きな特徴としては、新製品全機種にツインタッチパネルを搭載し、ネイティブ発音を強化しました。さらに、広辞苑第六版を収録した機種もご用意しております。2007年モデルで採用し好評だった手書きパネルを大型化してさらに充実させるとともに、メインの液晶も直接タッチできるようにしました。漢和辞典では液晶側でも手書き入力できるようなり、手書きパネルより大きく書けますので認識率も高くなります。また、語義解説画面をタッチして上下にスクロールさせることもできます。あと画面上でジャンプを押したり、音声を押して再生したり、直感的な操作ができます。

2007年モデルで採用し好評だった手書きパネルを大型化してさらに充実させるとともに、メインの液晶も直接タッチできるようにしました。液晶側でも手書き入力できるようなり、手書きパネルより大きく書けますので認識率も高くなります。また画面をタッチしてスクロールさせることもできます。あと画面上でジャンプを押したり、音声を押して再生したり、直感的な操作ができます。

大島:たとえば家庭医大全科に収録されている人体図などは、タッチして上下左右にスクロールさせて見ることができます。さらにタッチパネルを活かして新たに開発したのが「地図から検索」です。たとえば世界地図をタッチしてヨーローパを選んで拡大し、ヨーロッパからドイツ、そしてフランクフルトと選択していくと、百科事典にジャンプしてフランクフルトの説明が出てきます。もちろん世界地図のほか、日本地図も入っています。

成木:学習機能としては、新たに「学習帳」が加わりました。紙の単語帳のようにタッチパネルで書いて覚える暗記カード(100件×6冊)と、検索した見出し語にコメントを登録できる見出しメモ、覚えておきたい単語や例文を登録して一覧表示する単語帳があります。

大島:学習機能なので書いて覚えるようになっています。答えはすべてタッチペンで書いて入力しますが、たとえば暗記カードのテストで間違えますと6回書かなければなりません(笑)そうすると覚えられるのではないかと。

2008年モデルのXD-SP6600(右)は、手書きパネルが昨年のXD-SW6400(左)に比べて大型化し、またメイン液晶部分もタッチパネルを採用したことで使い勝手が向上している。
機能・性能は大幅に進化しているが、大きさは殆ど変わっていない

--これらはすべて全機種搭載ですか?

大島:2008年モデルの新製品全機種に搭載しています。

--ネイティブ発音の強化、広辞苑第六版についてはいかがですか?

大島:いま業界では1万円以下のものを除いて9割近くが音声モデルになっています。2008年モデルでは全モデルに、英単語約10万語のネイティブ発音を収録しました。

成木:ネイティブ発音にはTRUE VOICEという肉声に最適化した圧縮技術を使っています。2005年モデルでは英単語1万4千語程度だったのですが、その後強化して2007年春には英単語8万5千語、2007年夏には一部機種で英単語10万語のネイティブ発音を実現しました。英会話についても毎年強化しており、2008年モデルでは9700例文まで収録数を増やしています。ちなみに英会話のネイティブ発音ですが、9700例文というのはどのモデルでも最低限それだけ入っているという意味で、さらに充実しているモデルもあります。

さらに美しい日本語を学びたいという要望にお応えして、日本語約1万語のネイティブ発音も全モデルに収録しました。日本語の発音は地方の方からも「共通語ではこういう風に言うんだ」と関心をもっていただいております。やはり紙の辞書にはできない機能ということで、音声機能は今後も拡充を図っていきたいですね。

大島:広辞苑第六版は100コンテンツを収録した総合モデルのXD-SP6600、それと中高生モデルのXD-SP4800に搭載しています。最新用語の充実と共に、図版2800点が表示可能となっているのも大きな特徴です。また広辞苑に外来語として収録されている英単語のネイティブ発音も聞くこともできます。

--辞書もすごい数で、XD-SP6600にはワインコンパニオン、イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科までありますね。

大島:それぞれのお客様向けに製品を展開してくのに比例して増やしてきました。対象が枝分かれしつつ、それぞれに機種に搭載するコンテンツも充実してきたという流れです。2005年以来、一般向けの「総合」モデルでは、若い方も中高年の方も、男性も女性も、あらゆる層の方をカバーできるよう100コンテンツ収録の製品を出しています。読み物としても面白いのではないかと思います。

XD-SP6600、そして英語強化モデルのXD-SP9500には、手書き入力に対応した7ヵ国語の小辞典もついており、旅行先などで活用できると思います。とくに中国語漢字やハングルの手書き入力は、旅先で見かけた掲示をそのまま入力すればその意味を調べることができるので便利ですよ。

--朗読も充実していますね。

成木:XD-SP6600とXD-SP4800、そして総合モデルのXD-GP6900には、高校の教科書で定番となっている作品を中心に30作品。約30時間分が収録されています。好評な古典名作冒頭選、現代文名作選に今回は舞姫(森鷗外)、なめとこ山の熊(宮沢賢治)など小説4作品、詩10作品などが新たに加わりました。さらに現代歌人朗読集には、与謝野晶子、斎藤茂吉、北原白秋三氏ご本人の声が収録されており、社会人の方にも楽しんでいただけると思います。また2008年モデルでは、日本語の朗読コンテンツで縦書き表示を実現しました。

--そのほか新しいモデル変更点などはありますか?

大島:フランス語モデルXD-GP7250では、仏和、和仏の学習辞典に加えて、仏和大辞典を新たに収録しました。大学で第二外国語を勉強されている方向けには、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語、韓国語の辞書を追加コンテンツ(別売)として用意しており、新たにロシア語辞書も追加コンテンツとして3月中旬に発売します。ロシア語とハングルは手書きだけでなく、ソフトキーボードを手書きパネルに表示して入力できるようにしました。

成木:ソフトキーボード表示は、手書きパネルを拡大したからこそ実現できました。

--今後の進化も気になるところですが?

大島:初代から2008年モデルに至るまで、紙の辞書に対抗するのではなく、紙の辞書では出来ない、電子辞書ならではの機能を追求し商品開発を行っております。また、EX-wordの理念である「知る、聞く、学ぶに、歓びを。」の通り、あらゆるユーザーの学習に役立つよう、今後も進化させていきたいと思います。

--本日はお忙しい中、ありがとうございました。